あのモフモフ神の秘められた過去は…? 累計200万部突破の大人気「神様の御用人」シリーズ《黄金編》完結!

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更新日:2021/4/6

神様の御用人"
『神様の御用人』10(浅葉なつ/メディアワークス文庫/KADOKAWA)

 八百万の神様たちの願いを叶える「御用人」になったごく普通の人間・良彦と、その相棒・狐の姿の方位神・黄金(こがね)の物語、「神様の御用人」シリーズ。2013年から刊行され、累計200万部を突破した大人気シリーズがついに一区切り。最新10巻『神様の御用人』10(浅葉なつ/メディアワークス文庫/KADOKAWA)にて、《黄金編》が完結する。

 このシリーズの人気の秘密はなんといっても、良彦&黄金の凸凹コンビだ。狐の姿をした方位神・黄金は、モフモフした毛並みが特徴。神様らしい威厳のある口ぶりのクセに、甘い物に目がない食いしん坊というあまりにも愛らしいキャラクターなのだ。そんなモフモフ神とともに、人間以上に人間味あふれる神様のー御用を叶えようとする良彦の姿に、何度もほのぼのとさせられた。だからこそ、前巻・9巻のシリアスな展開には多くの読者が心を痛め、続きが気になってしかたがなかったことだろう。

 未読の方のために、前巻からのあらすじをご紹介しよう。

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 日本各地で頻発する地震。黄金は何やら考え込むと、「気になることがある」と言い残して行方不明になってしまった。地震の頻発も、黄金がいなくなったのも、その原因は、荒脛巾神(あらはばきのかみ)。とある過去の出来事が原因で心を病み、世界を一から作り直す「大建て替え」を試みているらしい。黄金を救おうと良彦は行動するも、返り討ちに遭って、意識不明の重体に…。というところまでが前9巻までだったのだが、最新10巻では、荒脛巾神の悲しい過去や、黄金の深い後悔を知った良彦が、傷だらけの体で再び立ち上がることになる。

 物語に一区切りがつくということで、これまでの登場キャラが総出演。良彦の力になってくれる神々がこんなにもたくさんいるということに、良彦が今までにしてきたことの意味が感じられる。神様の力はもちろんのこと、良彦は、生まれつき神様や精霊などが見える「天眼」の能力を持つ、大主神社の宮司の娘・穂乃香の力も借りながら、荒脛巾神を、そして、大切な相棒・黄金を救う方法を探していくのだ。

 荒脛巾神の過去は、あまりにも悲しい。坂上田村麻呂や阿弖流為という歴史上の人物と神々との物語に、胸が苦しくなる。そして、悲しい過去を背負っていたのは、ずっと良彦のそばにいた黄金も例外ではなかった。のんきそうに見えていたモフモフ神にもこんなにも悲しい過去があったとは…。神様にだって、忘れられない過去や後悔があり、神様にだってどうしようもないことがある。だが、人間だからこそできることもきっとあるはずだ。「御用人」としてたくさんの神様の願いを叶えてきた良彦だからこそ、できることがあるに違いない。

 シリアスな展開が続く第10巻。壮大な物語の終焉。「はやくいつものモフモフ神に戻ってきてほしい」「良彦とのほのぼのとした掛け合いが見たい」と多くの人が手に汗を握りながら、良彦たちの戦いを見守ることだろう。一度でもこのシリーズに触れたことのある人は必読。神様と人間の絆の物語に、感動させられること間違いなし。《黄金編》完結巻は、涙なしには読むことができない。今までの物語も読み返したくなってしまう、シリーズ集大成だ。

文=アサトーミナミ

『神様の御用人』詳細ページ