四国=死国、あの世にいちばん近い場所の恐怖!
公開日:2012/8/13
死国
ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader | 発売元 : KADOKAWA |
ジャンル:小説・エッセイ | 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy |
著者名:坂東眞砂子 | 価格:626円 |
※最新の価格はストアでご確認ください。 |
個人的に「四国」という土地には良いイメージ・楽しいイメージしか無い。これまで四国を訪問した経験は人生で2度だけなのだけど、とにかく温暖で風光明媚、本州との海道である瀬戸内海はいつも穏やかで、美しい景色に事欠かない。そこらじゅうにやたらうどん屋があり(香川県だけ?)、なおかつそれが美味い。そして、お遍路と呼ばれる八十八霊場の巡礼は徳島出身のプロレスラー・新崎人生のギミックであり、大人気ローカルバラエティ「水曜どうでしょう」の罰ゲームの場。そんな愛すべき土地・四国を舞台にした作品なのに、これほど背筋の凍る思いをするとは露程も思わなかった。
この『死国』は、「四国」を「あの世にいちばん近い場所 死の国=死国」と設定し、そこから綿密に組み上げらた正統派のホラー。ここに史実や郷土風俗、言い伝えの類が突飛とも思えるすばらしい解釈でブレンドされているため、フィクションだとは解っていても薄ら寒い程強烈なリアリティが迫って来る。改めて考えてみれば、「霊場」と呼ばれる場所が八十八も存在する島。実際に四国に住んでいる方には本当に申し訳無いのだけど、「そんな場所が普通である筈が無い!」などと真面目に考えてしまうほど。
そしてこの作品はただ怖いだけで無く、もうひとつ魅力が。
男女間の揺れる恋心の描写がちょっとした恋愛小説なみに秀逸であるにもかかわらず、性に対する欲求が女性目線でストレートに表現されている部分あり。いわゆる「濡れ場」の書き方が妙にエロチックでゾクゾクするような雰囲気に溢れる。“エロ”ではなく、“エロチック”、ギリギリで持ちこたえているのがポイント。これが絶妙なスパイスとなり、読む手は全く止まらず、更に恐怖は加速する、という相乗効果。この説得力、本当に凄い。
…しかし、これまで四国に行った事の無い人が読むのはちょっと危険かも。この作品を読んでいると、文字通り四国が『死国』に思えてくるのはちょっと困る。実際の四国が本当にすばらしいところ。フィクションだ、ということを必ず念頭に置いて読んで欲しい。
紀伊國屋BookWebの電子書籍は殆ど表紙付きなのがGood、この段階でかなりの怖さ
章の始まりごとに記載される童謡「かごめかごめ」の歌詞が意味深い
余白・綴じ・文字サイズからフォントに至るまで、全ての調整が簡易に行える
検索機能はヒストリー保持機能あり、いくつかのワードを登録しておくと便利
ホラー系小説にオススメのセッティング、背景:黒、フォント:ヒラギノ角ゴProN W3、ゴシック系フォントは割と怖い