「悪役令嬢」の本性は、実は可愛いツンデレ!? ゲーム実況主が”神の声”として破滅ルートを回避させる話

マンガ

公開日:2021/6/2

ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん
『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』(逆木ルミヲ:著、恵ノ島すず:原作、えいひ:キャラクター原案/KADOKAWA)

 近年流行りの悪役令嬢もの。その多くは異世界転生や処刑エンドからのタイムリープもので、悪役令嬢だったはずのキャラクターがある日を境に改心してメインヒロイン級にモテはじめ、男女問わず虜にしながら処刑エンドや追放エンドを回避していく――というのが王道の展開だ。

 こういった作品の視点は通常メインヒロイン(悪役令嬢)なのが一般的だが、もしプレイヤー目線――いわゆる“神視点”でゲームのキャラクターと会話ができるとしたら、いったいどんなルートを辿るのが正解なのだろうか。『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』(逆木ルミヲ:著、恵ノ島すず:原作、えいひ:キャラクター原案/KADOKAWA)は、そんな少し珍しい、神視点でゲームに介入していく物語。

advertisement

 本作品では、ゲーム「マジカルに恋して」(通称:まじこい)の世界とそのゲームをプレイしている高校生たちの世界、2つの世界が描かれる。ゲーム内での主人公は、悪役の侯爵令嬢リーゼロッテ・リーフェンシュタール(通称:リゼ)と、その婚約者であるフィッツェンハーゲン王国の王太子ジークヴァルト(通称:ジーク)。高校生サイドの主人公は、「まじこい」を愛してやまない女子高校生の小林詩帆乃と、小林にゲームを強く勧められプレイしはじめた男子高校生の遠藤碧人の2人だ。

 遠藤がゲームを開始すると、まずジーク、そして「まじこい」本来の主役である庶民育ちの女の子フィーネが、学園内の中庭のベンチで2人仲良く勉強している場面が映される。そしてそこにリゼが現れ、フィーネのことを婚約者ジークに言い寄る悪い虫であるかのような発言をするのだ。そんなリゼに困惑するジークだが、そこで彼にだけ突然ある声が聞こえる。その声は、なんと遠藤の横でゲームの解説をしていた小林の声だった――。小林は「ツンが強い!ツンが強いぞリーゼロッテ!!」と、リゼが実は“ツンデレ”で、キツい物言いはジークのことが好きすぎて嫉妬しているのだと、そしてジークといることでフィーネの外聞が悪くなることを本気で心配しているのだと解説。

 小林の声を“神の声”であると認識したジークは、その後小林に言われるがままにリーゼロッテにキスまでしてしまう。このときジークはリゼにひっぱたかれるくらいの覚悟はしていたが、彼女は真っ赤になってプルプルと震えていて――そんなリゼに、ジークは思わず「なんだこれかわいいなおい。」とリゼにキュンとしてしまうのだった。

 本来の「まじこい」であれば、ジークやほかの男性キャラクターは主人公であるフィーネに惹かれる設定だ。そしてその結果、リゼは嫉妬と悲しみのあまり「古の魔女」に取り憑かれて破滅エンドを迎えてしまう。しかし小林の推しキャラはリゼ。素直になれない苦しみや名家に生まれた責任感、ジークへの恋心から破滅を迎えてしまうリゼを悲しい運命から救い出したいと考えた小林は、遠藤と2人で「神」としてジークにリゼの本心を伝え、リゼの思いが報われるルートへ導こうと決意。ツンデレなリゼの分かりにくい“デレ”をジークに伝えていくことにしたのだ。

 序盤ではリゼは自分を嫌っていると思っていたジークだが、小林の解説と遠藤の実況のおかげでリゼの気持ちに気付き、次第に彼女の見えづらい優しさや思いを感じ取れるようになっていく。ツンデレのリゼがかわいいのはもちろんだが、そんなリゼを見て「ねえあれかわいすぎない……?」「私の婚約者がかわいすぎてつらい――」とどんどん彼女にのめりこんでいくジークもまた微笑ましい。むしろ尊い。2人のピュアすぎるやり取りを見ていると、延々拝み倒したくなる。

 2巻以降では、フィーネの恋路に変化が訪れたり、なぜか命を狙われているフィーネの母親が登場したりと新たな波乱も巻き起こる。そして実況と解説のおかげでうまくいっているかのように見えたリゼとジークだったが、リゼの心に少しずつ黒い影が落ちはじめて――。

 この『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』コミカライズ版は、2021年5月1日に3巻が発売されたばかり。続きが気になる人は、原作小説を併せて読んでみるのもアリ。こちらは2019年に完結済みだ。今後ますます盛り上がり、見る者をキュンキュンさせてくる本作品。リゼは無事「古の魔女」に打ち勝つことができるのか、最後までしっかりと見届けたい。

文=月乃雫