リアクションで損をしないために――Web会議にも使える「反応術」

ビジネス

公開日:2021/7/6

成功する人のすごいリアクション
『成功する人のすごいリアクション』(中谷彰宏/河出書房新社)

 1000以上の著作を持つマルチタレント・中谷彰宏氏の新著『成功する人のすごいリアクション』(河出書房新社)は、コミュニケーションにおける「余白」と「余韻」をテーマに、下記のような3タイプの人のために本書を執筆したと、巻頭で説明しています。

1. リアクションが薄いと言われた人
2. 後から来た人に、チャンスをとられた人
3. 「一緒にいても、楽しくない」と言われた人

 上記に加えて、Web会議でうまくリアクションができない、話に切り込んでいけない、といった人にもオススメです。

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 リアクションの引き出しは相手に踏み込みすぎて失敗することで増えるという話題から、本書はスタートします。たとえばWeb会議においては、相手の発言に自分の発言がかぶさることを気にするよりも、むしろ積極的に早いうちにかぶさっておいて、リズムを把握し合ったほうが得策だという考え方です。

 相手の発言の「余白」が少なくなってきたら、すかさず自分が発言する。お互いの発言の「余韻」の集積が、会議のリズムを形成する。そんなWeb会議が展開できれば、商談やアイデア出しもうまくいき、上記の3つのような事態は防ぐことができます。

 それでもリアクションを表現することをためらってしまう人に向けて、著者は「行動から感情はうまれる」のだと力説しています。「感情があるから行動する」のではありません。著者は「アパ社長カレー」10周年パーティーの場で、食レポで有名な彦摩呂さんのリアクションに大感激したエピソードを引き合いに出しています。

同じカレーを食べても、「メリーゴーランド」というのは彦摩呂さんにしか浮かばない言葉です。
聞いた人は、「メリーゴーランドがまわってるくらいおいしいんだ」ということがわかります。
「フワフワ」「とろとろ」という言い方がつまらないのは、誰でも同じだからです。
「メリーゴーランド」や「宝石箱」と言われると、どんなに凄いんだと思います。

 紹介している本人がまず行動して興味を見出すことで、それを見ている皆が楽しむことができる。これが、著者が彦摩呂さんに共感しているポイントです。彦摩呂さんは食レポを見ている人に対して、言外の「余白」を含めたコメントを提供し、後々まで忘れない「余韻」を残します。そうすると、話し手の感情の押し付けにはならず、受け手の想像力を活かした物語が脳内に宿るからです。

 これに関連しているアドバイスとして、誰かと会話する際には「質問をしない」ことが重要だと説いています。これは、「何も聞かない」ではなく、「楽しかったですか?」「大変でしたか?」というような単純な質問でリアクションを返さないということです。そうではなく、相手の話から自分がインスピレーションを受けたことを伝えて「妄想の交換」を行って間接的に質問を行うと、「余白」が埋められていき、会話は自ずと盛り上がると著者は断言しています。「今日はこんな話するつもりなかったんだけど……」というような言い出しが来たら、うまくいっているサインです。

 また、相手の言うことを聞くと同時に自分の発言に集中することも大切で、たとえサイレンを鳴らした救急車が近くを通りかかっても全く意に介さないで会話を継続するような集中力が、著者は理想としています。

たとえば、授業中にビルの窓掃除の人が降りてくることがあります。
それに目がいく人と、いかない人に分かれます。
話し手としてうれしいのは、目がいかない人です。
「話を聞いてくれている感」があるからです。
外で大きな物音が鳴ったり、救急車が通ったり、ブラスバンドが通ったりしても、まったく気にせず話を聞いてくれるのです。

 結果を求めて意見をぶつけ合うのではなく、余韻を求めて余白を埋め合う。そんなコミュニケーションをする上で道標となってくれる、豊富なカラーバリエーションが取り揃えられた絵の具セットのような一冊です。

文=神保慶政

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