押切蓮介待望の新作『おののけ! くわいだん部』は、怪奇系マンガ家がその実力をいかんなく発揮した学園青春ホラー&コメディだった!

マンガ

更新日:2021/8/30

おののけ! くわいだん部
『おののけ! くわいだん部』(押切蓮介/KADOKAWA)

 説明しよう! “くわいだん部”とは怪談部のことである。

『おののけ! くわいだん部』(KADOKAWA)は押切蓮介氏の新作怪奇マンガだ。押切氏というと『ハイスコアガール』(スクウェア・エニックス)や『ピコピコ少年』(太田出版)などのゲームをテーマにした作品のイメージもあるが、もともとはホラーギャグ漫画でデビューしており、『でろでろ』『ゆうやみ特攻隊』『ぼくと姉とオバケたち』といった怪奇やお化けをテーマにしたマンガを数多く発表している。

 本作は、待望の“怪奇系”コミックスだ。帯には“学園青春ホラー&コメディ”と銘打たれており、怪奇ファンならずとも楽しめるエンタメ作品に仕上がっている。

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たったふたりの怪談部の活動は、語り合いまくり、行動しまくり!

おののけ! くわいだん部 p.9

 第二南高校の怪談部、その部長である諸星マコトは、美少女だが毒舌で、怪談を集めて語ることへの熱い想いは半端なものではなかった。彼女はもうひとりの部員である熊野葉介と日々、怪談を語り合い、さまざまな活動を行っていた。

 例えば、茶道部の部室で異音がするというので、霊的なものではないかと相談を受けると、ふたりはその部室で何をどう感じ、どんな怪談にできるのか競い合いをする。

 また、マコトと葉介は新たな怪談を求めて遠征取材も行う。心霊スポットはもちろん、山登りをするなど、思ったよりもアクティブな部活なのだった。

 さらに地中に埋まる「即身成仏」ツアーまで体験。やってみると時間の経過が一切分からずビビるふたり……恐怖を耐えきれるのか?

おののけ! くわいだん部 p.32

「殺人怪談」などと物騒なことを口にしたり、葉介を下僕のように扱う女王さまキャラのマコトだが、実は怖がりな一面も。

 別の一面もある。あるとき「怪談によく出てくる“白い服の女”は古臭い! 信ぴょう性が低い!」と証明するため、わざわざ白いワンピースを着ると、葉介に褒められてデレる。だいぶチョロくてかわいいのだ。

 怪奇系マンガではあるものの、基本的にゆるい日常が描かれる本作は、他校の怪談部との対抗戦を境に様相が一変……する?

怪談師としての実力を高め、目指すは「全国高校怪談選手権」優勝

 マコトが色々な努力を積み重ねるのには理由があった。それは他校との怪談対決に勝つためである。同じ怪談部――生粋の怪談馬鹿たちを生半可な話ではうならせることはできない。怪談はテクニックが必要で、競い合いに向いているのだ。

 ある日、乗り込んできた西高校怪談部と勝負をした。相手は自分たちより多い3人で不利な状況に置かれる中、マコトの秘策によって第二南高校が勝利をおさめる。

 さらに「全国高校怪談選手権」への出場が決まった。それは24校の怪談部が集結して怪談バトルを行う、例えるなら夏の怪談甲子園だ。

 待ちに待っていたマコトはやる気まんまん。葉介はというと「24組……凄いな……何が凄いってこんなマイナーな部活が……」と戸惑っていた。出場決定から2カ月後、ふたりは大会当日を迎える――。

おののけ! くわいだん部 p.105

 学園コメディの色合いが強い本作だが、マコトが文化祭で怪談師として本気を出すと、たちまち聞き手である生徒たちは追いつめられ、パニックに陥った。ただチョロい美少女ではないのだ。

 これから始まろうとする「全国高校怪談選手権」で、一体何が起こるのか? ここから先は、夏にぴったりの恐怖が待っていそうな予感、いや悪寒がする。

文=古林恭

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