河野太郎氏愛読の児童文学! 子どもたちのひと夏の冒険を描いた海洋小説の内容とは?

文芸・カルチャー

公開日:2021/9/28

ツバメ号とアマゾン号
『ツバメ号とアマゾン号』(アーサー・ランサム:作、神宮輝夫:訳/岩波書店)

 9月29日(水)に投開票が行われる自民党総裁選。一体どの候補者が総裁となり、記念すべき第100代目の内閣総理大臣となるのだろうか。候補の一角が、ワクチン担当大臣・河野太郎氏。「政界の異端児」の異名をもつ河野氏は、Twitter好きとしても知られ、ネット民からの支持も厚いようだ。

 河野氏は一体どんな人物なのだろうか。その人となりは愛読書から窺い知ることができそうだ。『あの人が好きって言うから…有名人の愛読書50冊読んでみた』(ブルボン小林/中央公論新社)では、「毎日新聞」18年4月24日付の記事を引いて、河野太郎氏の愛読書として、海洋冒険を描いた児童文学『ツバメ号とアマゾン号』(アーサー・ランサム:作、神宮輝夫:訳/岩波書店)を紹介。河野氏は幼い頃から「ツバメ号」シリーズの大ファンで、全巻揃えているのだという。

 物語はウォーカー家の4人兄妹が遠国にいる海軍軍人の父親からの電報を受け取る場面からはじまる。その電報は、子どもたちだけで近くの島へ冒険に出かけて良いというもの。兄妹たちは大喜びで準備を進め、小さな帆船ツバメ号をあやつり、一路、無人島へ。大海原の探検やアマゾン海賊との対決、船長フリントとの湖上の決戦、宝さがし、夜中のあらし…。子どもたちの楽しい夏休みはあっという間に過ぎていく。

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 子どもたちの訪れる島は、実はちょっとヨットをあやつれば、半日かからずに自宅に戻れる場所。彼らの冒険は、「ごっこ遊び」に過ぎないのだが、冒険に全身全霊で挑む子どもたちの姿に心躍らされる。大人たちを原住民に、湖を大海原に、小島を無人島に見立てる子どもたち。そんな彼らを優しく見守る大人たちの姿にもジーンとさせられてしまう。

 河野氏は、物語の子どもたちと父親の関係に、自身と父親の姿を重ね合わせたのだそうだ。父親が子どもたちの冒険を許可したように「うちも米国留学の時は『行け』という感じだった」と語り、「おやじ(河野洋平元衆議院議長)から『ちゃんとやるだろう』と思われているから、こっちも『ちゃんとやらなきゃ』と思っていた」と留学時代を振り返る。物語のお気に入りの登場人物は、ウォーカー家の長男・ジョン。「自分も3人兄弟の長男。主人公の弟妹への責任感に共感する部分もあった」のだという(「毎日新聞」18年4月24日付より)。

 確かに4人兄妹は父親に認められたという喜びを胸に冒険をスタートさせている。だが、子どもたちの冒険といっても、いきなり湖へ漕ぎ出すわけではない。その冒険はかなり計画的。必要なものをリスト化し、船員雇用契約書を作り、お母さんが作ってくれたテントの使い方を学ぶ。そして、ヨットの準備も入念。ヨットを漕ぎ出す手順から、出航後の野営、料理の様子までもが臨場感たっぷりに細かく描き出されていく。

 河野氏というと、大胆に物事を進めていく印象があるが、この本を愛読しているということは、決して無鉄砲ではないのだろう。どんなことにも全力。思い切った冒険に出つつも、裏では入念に準備をしている。河野氏もウォーカー家の子どもたちのように冒険心と計画性を兼ね備えた人物であってほしいものだ。

 これからの日本の舵取りは誰が担うのだろうか。選出された方には、時勢を見極めた臨機応変な舵取りをお願いしたい。風を読みながらジグザグに進んでいくウォーカー家の子どもたちのヨットのように、少しずつでも確実に日本も明るい未来へと突き進んでほしい。

文=アサトーミナミ

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