シングルで生きる? 結婚する? それともバリキャリ? 人生の岐路に立つ、アラサー女子の生き様

マンガ

公開日:2021/10/5

ひとりで生きるはままならぬ
『ひとりで生きるはままならぬ』1(津野みぞ子/オーバーラップ)

 30歳が近づくと、同年代の人たちと人生が枝分かれしていると感じる機会が増える。既婚・未婚の二つのパターンだけではない。例えば未婚女性に限定しても、結婚を考え始める人、仕事でキャリアアップを目指す人、仕事より恋愛を楽しんでいる人、フリーランスになって働き方を変える人など、人生が多様化するのだ。

『ひとりで生きるはままならぬ』(津野みぞ子/オーバーラップ)は、そんなアラサー女子4人にスポットをあてた漫画だ。4人はそれぞれ「今」を楽しみながら生きている。だが周囲の環境が変わり彼女たちも人生の岐路を迎える。

 最初に登場する前田しゅう子は会社員だ。彼氏はおらず、仕事は可もなく不可もなく。個性あふれる友人たちとルームシェアをしている。そんな自分の日常に満足していたのだが、周囲に結婚する人が増え、ふと考えるようになる。

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“…私 ずっとこんな感じでいいのかな”

 彼女と一緒に住んでいる友人たちも、それぞれ人生を楽しんでいるのだが、このままでいられるのかどうかというと話は別だ。

 松木瑛香(まつき・えいか)はいわゆるバリキャリで、仕事が生きがいである。周囲もそう思っていて、上司から仕事を押し付けられたり後輩に「わたしには到底無理」と言われたりする。帰宅後、お酒や友人との会話で疲れを癒しパワーに変えるが、無理をしすぎているようにも見える。

 弾き語りシンガーの川瀬田(かわせだ)みさきは恋愛体質。2年前に出会ったドラマー「きーくん」が彼氏で今もラブラブ……と思っていたが、ある日、みさきの目の前で、きーくんは「みさきが自分の彼女ではない」とはっきり言う。みさきは意気消沈するが、たしかに「付き合う」という言葉がないまま始まった関係であることに気づく。

“きーくんに「結婚したい人」って思われるように アピールしていく!”

 彼女の決意は前向きだが、それが根本的な解決になるのかは疑問が残る。

 フリーランスのデザイナーである桃山志緒(ももやま・しお)はマイペースな性格だ。

 会社員時代、激務だった彼女は、フリーランスの在宅勤務が自分向きだと感じている。悩みはひとつ、貯金がまったくないこと。インターネットで買い物をしすぎてしまう癖があるからだ。しかし彼女は「まあ人生なんとかなるわよね!」の一言で、自らの問題を心の奥に押しやる。

 4人の抱える問題は多種多様だ。だが、多くの女性にとって共感できるもの、もしくは経験したことがあるものなのではないだろうか。

 永遠に続くことなんて何もない。心の中ではわかっていても、若いうちはなかなか実感が伴わない。だがしゅう子は、4人の中で、いち早くそれに気づいた。

 本作の大きな特徴は、シリアスな問題もポップなタッチで描いていることだ。決してご都合主義のような展開にはならず、アラサーのリアルが描写されているのに、読者は明るい気持ちで読み進めることができる。そこに今までの漫画にはない斬新さがある。

「共感できる漫画を読みたいけど、気持ちが沈むようなものはちょっと……」と感じている人にこそ、本作を薦めたい。

文=若林理央

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