遊郭モノなのに甘くない。異色の新鋭作家が描く、吉原愛憎鬼譚

ライトノベル

2012/10/19

ルルル文庫 吉原夜伽帳−鬼の見た夢−

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 小学館
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:ミズサワヒロ 価格:324円

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外道菩薩。菩薩のように美しい外見に外道のような性格という、相反する二つの言葉を併せた異名を持つ、老舗妓楼の妓有・弥太郎。彼の血色の瞳には、死者が映るらしい。そんな弥太郎の元を訪ねたのは、顔のない木彫り仏を持つ一人の仏師だった。仏師に頼まれた弥太郎は、元遊女の「顔が剥がされて死ぬ」という奇怪な事件について調べることになるのだが…。

今まで読んできた遊郭モノは、主人公の妓が駆け落ちを成功してハッピーエンドばかりだったのですが、今回は違いました。まず、主人公が妓ではなく妓有なのです。妓有とは、女郎の世話兼用心棒をする男のことです。

白い髪と肌、血色の瞳という浮世離れの外見を持つ、情を持たない外道菩薩。しょっぱなから、戦意喪失した武士をぼっこぼこに殴りつけたうえに利き腕の骨を折るという外道っぷりを発揮してくれた彼は、誰に対しても何の感情も持っていません。けれども一人の禿・末葉にだけは心を許しています。素直ではないので減らず口を叩いてばっかりですけど、末葉は弥太郎を慕っていて、ことあるごとに世話をかけてきます。「わしは、別にお前なぞ心配しておらんからなっ」と素で言ってくださる正統派ツンデレで良いです。可愛いです。

弥太郎が元遊女の死について調べているうちに、吉原内で、元遊女と同じように顔を剥がされた花魁と男の死体が見つかります。同時に、末葉の中で異変が起こります。その全てには、顔のない木彫りの仏と、奇怪な死を遂げた元遊女が関わっているらしいのです。鬼の瞳が導き出す真実は、吉原らしい愛憎に塗れたもので。

とてもルルル文庫だとは思えない愛憎劇を、どうぞお楽しみください。


俊逸な章タイトルに期待が高まります。クリックすればその章に飛べます

終始キレイな文体。あまりにも綺麗な文章にため息がもれてしまいます

この文章が、弥太郎という人間をそのままあらわして入る気がします

文体だけでなく、語彙もキャラクターも、吉原に対する著者の勤勉さがうかがえます