まだまだ止まらない女たちのダメ恋トーク『深夜のダメ恋図鑑』人気男性キャラふたりに迫る

マンガ

公開日:2022/3/14

深夜のダメ恋図鑑
『深夜のダメ恋図鑑』9巻(尾崎衣良/小学館)

この記事にはコミック最新巻の内容が含まれます。ご了承の上お読みください。

 なぜかダメ男ばかりを引き寄せてしまうアラサー女性3人が集まり、恋バナで盛り上がる『深夜のダメ恋図鑑』(尾崎衣良/小学館)。2013年に連載が始まった本作は、日常で「これっておかしくない?」と思ってしまう恋愛にまつわる出来事を一刀両断する小気味よさから人気を博し、2018年のテレビドラマ化を経て現在既刊9巻となった。

 中心人物は美人なのに恋愛経験がない古賀円(こが・まどか)、ダメ男とばかりつきあってしまう千鳥佐和子(ちどり・さわこ)、ロマンチックな恋愛を夢見る福間千代(ふくま・ちよ)の三人で、理不尽なダメ男の言い分にズバっと言い返すのは主に円と佐和子である。

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 三人の恋愛模様も序盤と9巻では大きく変化した。決まった相手のいなかった円は市来信博(いちき・のぶひろ)に出会い、現在、円は気づいていないが片思いされている。佐和子は本作の登場人物最大のダメ男・国分諒(こくぶ・りょう)と別れ、年下の五十市丈(いそいち・たけし)に惹かれるようになり、千代はとうとう結婚した。

 途中からの登場人物ではあるが、読者から人気の男性キャラがこじらせ男子の市来と天然男子の五十市である。彼らの魅力は似た出来事を対比させることで浮かびあがってくる。

 市来は自らの状態を客観視して落ち込むという特徴を持った人物で、本作で登場するダメ男たちとは一味異なる。たとえば最新の9巻では、長い間市来に彼女がいないのはなぜかが明かされ、それは彼がフィギュアを集めるという秘密の趣味に没頭する理由にもなっている。

「女が出しゃばるな」的な昔気質の思考と 「女も自立して当たり前」的な現代の思考の都合いいとこ取りした男… それが俺だ…

 円との出会いと気の強い妹の言葉によって、彼は学生時代に元カノとの間で起こったことを深く反省する。「いくらなんでもそこまで落ち込まなくても」というくらい落ち込むのである。

 ちなみに彼の恋愛に関する考え方には、姉妹に虐げられた過去がある。

女の子に対してカッコ付けたかったんでしょ

 話を聞いた円はなにげなくこう返す。その言葉が彼にとって救いになっていることも知らずに。本作はコメディなので、その後にはオチも待っているのだが、会う回数を重ねるごとに市来は円に惹かれていく。

 一方、五十市の言う「男のプライド」は市来とは別ものといってもいい。大事な人と金のやりとりをしないという彼は、週末に百円しかなくても、絶対に佐和子からお金を借りようとせず、うまい棒を十本買って乗り切ろうとし、五十市に恋心を抱き始めている佐和子が若干ひくほど真っすぐに信念をつらぬく。

 市来と五十市に共通しているのは、かわいげがあるところだろう。円に告白してもなお恋愛感情を持っていることに気づいてもらえない市来は「かわいそう」であるがゆえに、笑える存在として読者の目に映る。

 五十市も五十市で、真っすぐすぎる自分のことを「アホ」と自覚しているが、とても素直である。

 9巻の終盤、佐和子の言葉を五十市がそのまま受け取ってしまったせいで、ふたりの関係が大きく変わりそうな出来事が起こる。

 市来と円は、円が相手の恋心にまったく気づいていないとはいえ、出会った当初より距離がずっと近くなっている。

 いつ、どんなタイミングで円が市来の気持ちに気づくのかも今後の見どころであり、市来と五十市は、今後の展開の鍵をにぎる存在だろう。

文=若林理央

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