ニコニコ静画で閲覧数1500万回の人気漫画が書籍化! 勇者(16)にプロポーズされた魔法使いリィン(32)の結婚をめぐる旅の行方は?

マンガ

公開日:2022/5/10

魔法使いリィンの幸せな結婚
魔法使いリィンの幸せな結婚』(たに たけし/KADOKAWA)

 かつて魔王を討伐した魔女・リィンは、その功績により隠居を認められ、辺境の地で悠々自適な生活を送っている。そんな彼女の前に、魔王討伐パーティの仲間だった勇者・クレスが5年ぶりに現れ、「リーンを迎えに来た」とプロポーズ。クレスは16歳、そしてリィンは32歳。16歳年下の彼からの求婚に戸惑うリィンだが……。

 ニコニコ静画で熱狂的な人気を集め、「次にくるマンガ大賞2021」でUGC特別賞を受賞。ニコニコ静画で1500万回もの閲覧数を持つ、たに たけしさんの大人気四コママンガ『魔法使いリィンの幸せな結婚』(KADOKAWA)が満を持して書籍化された。

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 魔王を倒して世界を救うという偉業を成し遂げながら、今は故郷で引きこもりに近い生活をしているリィン。カップラーメンさえすすっていれば幸せという彼女の平穏な余生は、クレスとの再会であえなく打ち砕かれる。

 わずか11歳で魔王と対峙し救世の勇者となったクレスは、見目麗しい少年に成長していた。そして5年前、魔王との戦いに挑む際に交わした結婚の約束を守ってほしい、とぐいぐい攻めてくる。

 戸惑うリィンと、引かないクレス。ふたりの結婚をめぐる攻防がなんとも楽しい。

 リィンとしては、てっきり口約束のつもりだったのにクレスは真剣に受けとめていてくれた。乙女心がくすぐられるのと同時に、その年齢差と、周囲からどう思われるだろうかという不安が。いっぱいいっぱいになるあまり、くるくる変わるリィンの表情がかわいらしく、かつおかしい。

 そんな情緒不安定気味なリィンに動じず、クレスは惜しみなく愛を伝える。

「今度はボクがリィンの手を引く番だよ」

「ボクは 何があってもリィンの傍にいる」

 幼くして勇者に選ばれ、魔王を倒すという過酷な使命を担わされたクレス。そんな自分を母のように守り、立派な勇者になれるよう導いてくれたリィンのことを、彼はずっと想い続けていた。だからこれからは自分がリィンを守ろうと心に決めている。

 コミカルなやりとりの中にも、そうしたクレスの心情がつぶさに描かれているので、四コマでありながら一本の長編作品を読んでいるかのような充実感がある。

 結婚の報告をするため、ふたりはかつて共に戦った仲間たちのもとを訪れる。「雄牛の淑女」の二つ名を持つ騎士姫・アンジェリカ。教会の大司教を務める、パーティのお父さん的存在だったアスクレピオ。どちらも彼らの結婚を(リィンの予想に反して)祝福してくれた。

 しかし最難関が残っている。昔、幼いクレスを勇者としてパーティに迎えることに強固に反対した聖女・ウェザリアだ。リィンとの間になにやら因縁がありそうな彼女もまた、ふたりがやってくるのを待ちかまえているのだった。

 中盤以降は、過去の魔王討伐の旅の様子が徐々に明かされていく。リィンとウェザリアの互いの信念を懸けた関係、魔王との最終決戦でのリィンとクレス、それぞれの覚悟と想い。コメディタッチな物語の底にしのばされたシリアスな設定が見えてくる……という趣向が施されていて、作品世界をより深いものにしている。

 ニコニコ静画での連載バージョンに加えて、書き下ろしと加筆修正も多数収録。リィンとクレスは無事結婚に至るのか? 年の差16歳のカップルの旅の行方を、にこにこ、にまにま、そしてちょっぴりにやにやと見守っていきたい。

文=皆川ちか

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