子どもの能力が最も発達する「敏感期」のサインとは?/子どもの才能を伸ばす 5歳までの魔法の「おしごと」
公開日:2023/2/16
おもちゃでは満たせない”子どもの欲求”とは
親にとっては困ったイタズラのように見えても、ゆうとくんのようにその行動の背景には「発達(敏感期)」が関係していることがあります。
子どもにおしごとをしてもらうと、困った行動が減っていくのは、ゆうとくんのように発達からくる欲求が満たされるからです。
「おしごとで困った行動が減るといっても、身の回りのことを子どもにやってもらったら、汚れたり、時間がかかったりして逆に大変そう」
そう思われた方もいるかもしれませんね。
2歳のゆりちゃんのお母さんも汚されたり、危ないものに触られては困るという理由から、台所の入り口にはゲートを置いていました。
料理のときにはリビングにおもちゃを広げてゆりちゃんの気を引いてから、その隙に急いで食事の準備をしていたそうです。けれど毎回、お母さんが台所に立つとすぐに気がついて、ゲート越しにぐずったり泣きわめいたりするゆりちゃん。その声を聞きながら焦って料理をすることがストレスで「一体どうしたら1人で遊んで待てるようになるの?」「どうしてひとり遊びできないの?」と、いろいろな幼児教室に相談に行く中で、私の幼児教室にも来てくださいました。
お母さんの話を聞いたうえで、私が提案したのは、台所の下のほうの戸棚を1つ空けてもらい、そこにザルやお玉など使わない調理器具を入れること。そしてお母さんが料理をしている間、ゆりちゃんにも台所に入ってもらい、ゆりちゃん用の戸棚やその中の調理器具を自由に触ってもらうことです。
戸棚を開け閉めしたり、中の物を触ったり出したりするのが、「ゆりちゃんのおしごと」です。
はじめは半信半疑だったお母さんですが、いざこのおしごとを取り入れてもらったところ、大成功。いつもはお母さんの料理中にぐずったり泣いたりするゆりちゃんが、戸棚の開け閉めや道具の出し入れに集中し、全く泣かなかったそうです。
ゆりちゃんがおしごとに集中してくれたおかげで料理もはかどり、とても気がラクになったとお母さんは話してくれました。戸棚のおしごとをやりきり、他のものに興味を持ち始めたゆりちゃんには、レタスをちぎってもらったり、きのこをほぐしてもらったり、どんどんおしごとを任せてもらうようにしました。
おしごとを続けるうちに、お母さんにとって「ストレスだった料理の時間」が、いつの間にかゆりちゃんとの「楽しいおしごとの時間」に変わっていったそうです。
おしごとで満たされたゆりちゃんは、その後どんどん変わっていきました。
それまでは台所に入るお母さんを見張るようにピタッとついて回っていたのが、いつの間にかひとり遊びに没頭し、待っていることもできるようになったのです。
ゆりちゃんのお母さんは、子どものために頑張るお母さんでした。頑張り屋のお母さんほど「家事をしっかりやらなきゃいけない」「子どもを危ない目にあわせてはいけない」という責任感から、子どもの行動に制限をかけてしまうことが多いようです。その気持ちもよくわかるのですが……。
でも子どもを蚊帳の外に置くより、大人の世界に歓迎したほうがラクになること、うまくいくことがたくさんあります。子どもの体と心が、それを求めているからです。
お母さんもゆりちゃんのことを肩の力をぬいて見守れるようになり、だいぶ気持ちがラクになったといいます。何よりおしごとに熱中するゆりちゃんに出会えたことがとてもうれしいと話してくれました。
<第3回に続く>