バナナマンは遊びを見つける天才。内輪ウケにならない内輪感。バナナマン(設楽統・日村勇紀)×宮嵜守史【対談】/ラジオじゃないと届かない③

エンタメ

公開日:2023/3/27

TBSラジオ「JUNK」統括プロデューサーによる、書き下ろしエッセイ『ラジオじゃないと届かない』(宮嵜守史/ポプラ社)。ラジオに捧げた25年について、ラジオ愛あふれる文章が綴られた1冊。本連載では、本書から、著者とともに番組を作ってきた人気パーソナリティの極楽とんぼ、おぎやはぎ、バナナマン、ハライチ、パンサー向井さんとの豪華対談の一部を、特別に公開します!

【30日間無料】Amazonの読み放題をチェック >

【初購入金額がポイント70倍】楽天Kobo電子書籍ストア


ラジオじゃないと届かない
ラジオじゃないと届かない』(宮嵜守史/ポプラ社)

バナナマン

やっぱりカッコいい! バナナマン

 売れている人のことを「テレビで見ない日はない」なんて言う。そういう状態になったとしても一過性で終わる人が多くいる中、テレビに出続けているバナナマン。

 そんな二人がコスパがいいとは言えないラジオを毎週全力で続けている。とんだ精神力だ。バナナマンのラジオは二人の人間性によるものなんだけど、底抜けにピュア。平和で楽しくて行き当たりばったり。番組に届くメールを見て、リアルタイムのツイートを見て、リスナーも一緒になって楽しんでいる様子が毎週僕をニンマリさせてくれる。

 

 先日、J​U​N​K二十周年を記念したイベント「おぎやはぎのありがとうびいき(仮)」に、バナナマンの二人がゲストで来てくれた。

 矢作さんが「続いてのゲストはこの人たちです!」と言う。ステージが暗くなり「バナナムーンG​O​L​D」のテーマ曲、Y​M​Oの「MULTIPLIES」が流れる。音楽に合わせ暗くなったステージに黄色の照明が当たり、クルクル、チカチカと二人の登場を煽る。明転してステージに飛び出すバナナマン。僕はその後ろ姿を見てゾクッとした。オーラ? 華? 覇気? 言語化できない何かにゾクッとした。

 旧知の仲であるおぎやはぎが迎え入れる。登場してものの数秒であのころの四人の空気が生まれる。なぜなのか。それは、売れてなかったころも、売れている今も、設楽さんは設楽さんで、日村さんは日村さんだから。おぎやはぎの二人も同じくなんだけど。環境や役職が変わっても自分を見失わず、自分でい続けられるのは素敵でカッコいい。

 

「バナナムーンG​O​L​D」では毎年、設楽さんの誕生日には森山直太朗さんが、日村さんの誕生日には星野源さんがそれぞれ登場してくれる。星野源さんに至っては、毎年日村さんへのオリジナルバースデーソングを作って披露してくれる。しかもそれをかれこれ十年以上続けている。なんて贅沢なことだ。昔も今も変わらず星野さんや直太朗さんが登場してくれるのは、バナナマンがずっとバナナマンのままだからなんだろう。

バナナマン

最初の関わりは「人が地面に落ちる音」の発注

設楽 宮嵜さんとなんで知り合いになったか、あんまりよくわかってないんですよ。自然に知り合いになってたから。

日村 いや、マジでそうですよ。そもそも最初に会ったときはプロデューサーじゃなかったですもんね。

設楽 最初に会ったのは、俺らの『東京』とか『イエロー』を作ったときなんでしたっけ?

宮嵜 はい。ただ、お二人と直接お会いしたことはほとんどないんです。

設楽 小塙さんが浦口さんの『ねたばん』を担当してて、俺らはその中でちょっとした十分ぐらいの箱番組をやってたんだよね。それで、自主制作で声だけのネタ集を作りたいからってお願いして、小塙さんに一緒にやってもらったのかな。

宮嵜 小塙さんと牧さんが関わられていましたね。僕はお手伝い係でした。お二人と直接関わるというより、お二人とやりとりした小塙さんの指示を聞いてました。

日村 小塙さんは最初からとにかくバナナマンのことをおもしろいと言ってくれてたよね。

宮嵜 僕が強烈に覚えているのは、小塙さんから「人が地面に落ちる音」の発注を受けたんですよ。どうしていいかわからなくて、結局僕には手に負えずに小塙さんがご自分で作ったんだと思います。それで、ラジオってこういう仕事もするんだと初めて学びました。

設楽 それこそ当時赤坂サカスのところにあったTBSラジオのスタジオで稽古してたんですよ。あのころは稽古場がなかったから、テレ朝とか、いろんなところを借りてたな。そういう部分でもお世話になってました。

宮嵜 あのビルにあったTBSホールで、『赤坂お笑いDOJO』を収録してたんですよね。僕もあの番組のスタッフでした。

日村 『赤坂お笑いDOJO』のときって僕らと喋ったことはあるんですか?

宮嵜 ほとんど喋ってないです。僕はサブにいて効果音を出す係で、演者さんと直接話すのはネタ見せに来る若手の人たちぐらいでした。そのころはお二人と関わりが薄い間接的な仕事ばっかりでしたね。

設楽 常に近くにはいた感じですけど。俺らは二人とも出会ったときの記憶はないから、最初はおぎやはぎの『JUNK』で卓に座っている人という認識だったよね。

宮嵜 色濃くお付き合いさせてもらったのは、『メガネびいき』のディレクターをやっているころに、〝ラジオヤリマン〟という形でスペシャルウィークのたびに来てくださってからだと思います。そのあとに『バナナムーン』が二〇〇七年から始まったわけですけど、僕はディレクターとしては一緒にレギュラーのお仕事をしてないんです。『バナナムーン』に関わらせてもらったのはプロデューサーになってからなんで。

設楽 プロデューサーになったのはいつですか?

宮嵜 二〇一二年です。

設楽 もう十年前なんだ。その前から顔は知ってたけど、それからですよね。話したり、頻繁に会ったりするようになったのは。

宮嵜 そのころの『バナナムーン』って海外からの放送が多かったじゃないですか。僕も一緒に行って仕事をさせていただいたので、そういうところでお二人と距離が近づいていったように思います。

設楽 宮嵜さんって、他のスタッフさんと違って、パーソナルな距離の詰め方が上手いというか。一緒にご飯を食べに行ったりしましたし、それこそ家に来ましたよね?

宮嵜 はい。泊まりでゴルフも行きました。

設楽 俺らより後輩の人とも飯に行ったりするし、そういう距離感の詰め方が上手いんだろうなって。

日村 テレビのスタッフさんと全然空気感が違うんですよ。友達とスタッフの中間のいい距離でやってくれる。意識してやっているのか、宮嵜さんの人間力なのかはわからないけど、それはもう絶妙ですね。

宮嵜 ある程度ディレクターを経験してから『バナナムーン』に関わるようになりましたが、お二人は〝素っ裸なラジオ〟をしているところが魅力だなと僕は思います。文字通り、日村さんが素っ裸になるときもありますけど(笑)。

設楽 なんてったって、TBSラジオのスローガンが『聞けば、見えてくる。』だから、それを僕らが体現しているというか。だから、ラジオでは見えないけど、裸になったり、主に日村さんのポコチンの話をしたり。

日村 見えないのを逆手に取って、おちんちんを出したりとか、最低なことをやっているもん。それがおもしろいから。

設楽 一時期、日村さんは裸になりたくてしょうがなくて、毎回すぐ脱いでたから。「素っ裸DJ」って言ってね。

宮嵜 素っ裸DJは大好きでした。

設楽 常に中学校の休み時間みたいなノリというか。シモネタに関してもそうだけど。

日村 そんなにどぎついシモネタをやってないし。

内輪ウケにならない内輪感

宮嵜 年齢の低いシモネタですよね(笑)。ゴシップも話さないですし。「深夜番組ってこうあるべきだ」みたいに思っている人もいるかもしれませんが、『JUNK』に関してはせっかく五組が喋っているんだから、そこは一様じゃなくていいと思うんですよ。型が変わらないと五組にやってもらっている意味はまったくないですから。『バナナムーン』は季節の食べ物の話とか、身体の話とかしてますもんね。最近は加齢の話題がありますけど。

設楽 オジサンラジオになっちゃってね。

宮嵜 だけど、聴いているほうとしては、バナナマンさんを友人や知人に感じていると思うんです。そこにドロボーとか、ジャニオタとか、スタッフも普通に入ってくるじゃないですか。そこも含めての関係になるから、その外側のリスナーまで友人や知人という感覚になっているんじゃないかと。

設楽 基本、ブースに入っているのはオークラを含めて三人だから、他のスタッフさん交えつつ、俺らはここで楽しければいいと思ってやっていて。そこにリスナーもメールを送ってくれるから、それで広がりが出ているんじゃないですかね。

宮嵜 学校が終わったあと、友達の家に集まるような感覚なんです。友達の部屋で、マンガを読むヤツもいれば、ゲームをするヤツもいて、でもとりあえずみんな同じ部屋で過ごしているという感じ。オークラさんは普通に出ているし、ドロボーだ、ジャニオタだ、さらにはたまに辻さんや僕も出させてもらうじゃないですか。外側から見ると内輪に見えるかもしれないけど、リスナーの範囲まではまったく内輪にならないというか。

設楽 スタッフをあえて出そうという感覚はないんだけどね。とんねるずさんの番組を見てきた世代だから、自然発生的にスタッフさんも交えて広がりができるのが好きなのかもしれない。ラジオは発信基地的なところがあるし、それを共有する仲間って感じかもしれないね。聴いている人にも身内感が出るし、それは他の番組にも絶対あると思うんですけど。

宮嵜 番組でお二人の話が進んでいく中で、遊びを見つけるのが上手いなと思うんですよ。その場で生まれた出来事に、ざっくりとしたルールを作って、「じゃあ、こうしようぜ」みたいな形で。そこも学生時代の友達同士のような感覚があるんです。

設楽 それはたぶんバナナマン全体も全部そうで。雑談しながらネタを作ったりとか、稽古場で遊んでいたのがネタになったりとか、そういうスタイルなのかもしれない。もともと車の中で暇つぶしにやるようなゲームとか、好きだからね。

日村 ああいうちょこちょこやっているゲームをずっとやっていたいんですよ。イントロクイズも大好きだから。

設楽 『JUNK』の枠ってラジオのゴールデンタイムだから、昔は憧れで、すごくやりたかったんです。当時は他にそこまで仕事をしてなかったから、「こんなことがあった」「あんなことがあった」という出来事全てがラジオ発信で。でも、ここ十年ぐらいで変わってきて、いろいろと仕事をさせてもらえるようになった。ただ仕事しかしてない一週間で、新しく喋ることもそんなにない中で、ゲームやポコチンの話って普遍的じゃないですか。だから、多くなっているのかもしれないですね。ネタもそうです。昔はそこに全部注いでたんですけど、今は逆にラジオで話したことがネタになったりとか。

日村 特に僕なんかはそうだけど、これだけ番組を長くやっていると、七夕が来たとか、節分が来たとか、秋になったとか、そういう季節の行事みたいなものは全部ラジオですよね。生放送はこれしかやってないというのもあるかもしれないですけど、ここで一年の全部を感じてるから。これは長くやっているからだと思うんですよね。

設楽 長くやる番組は、時事か、恒例のもの中心に絶対なっていくというか。絶えず新しい情報があるわけじゃないし。

宮嵜 番組を十五年間続けていくうちに、テコ入れをしたり、根本の企画を変えたりすることってあるじゃないですか。でも、『バナナムーン』はバナナマンさんが喋る二時間だけにしている。十五年間の移り変わりはあっても番組自体はまったく変わってなくて、リスナーは金曜日の深夜一時に定点観測している感覚なんでしょうね。

設楽 その人の思いや考えがもっと表れるラジオは多いんだろうけど、俺らはそうじゃないと思うんですよね。「バナナマンのラジオをずっと聴いていたからこういう考えになった」なんてことはないと思うんですよ(笑)。話したいことはこうだって考えていても、日村さんと喋ってると全然違う方向に行くし、それはそれでおもしろいから。このラジオをプラットホーム的に使っていて、それをリスナーも楽しんでくれる。別に俺らが先導して引っ張るというより、みんなで楽しくやりましょうって感じなんです。フワッとしているというか、そんなに闘ってないというか(笑)。

宮嵜 リスナーは金曜日の二時間だけ開く小窓から部屋に入って、お二人の生存や生態を確認しているような感じがします。

日村 ラジオを聴いているとそうなりますよね。ずっと聴いてると、「あの人、今週何をやってたんだろう?」って考えるようになるし。

設楽 俺らは先輩たちの世代の『オールナイトニッポン』とかをそこまで聴いてないんですよ。

日村 申し訳ないけど、僕も若いころはラジオってまったく聴いてなかったです。

設楽 俺も三宅裕司さんのラジオぐらい。その三宅さんの番組だって、おニャン子クラブがコーナーを持っているから気になっただけで、それこそ伝説的な(ビート)たけしさんやとんねるずさんの『オールナイトニッポン』も聴いてないから。だから、「ラジオはこういうものだ」というのがなかったところから入っているんですよ。

宮嵜 それは大きいかもしれないですね。

設楽 だからこそ、裸になってる。ボソボソと喋るような回もあるけど、基本はそうじゃなくて、企画をやったり、ゲームをやったり。バカ騒ぎまではいかないまでも、そういう〝バナナマンのラジオ〟みたいなものを長い年月で作ってきたのかもしれないです。

宮嵜 最初から「ラジオってこうなんだ」という固定観念があったっていいかもしれないですけど、逆にそれがないからこそ、お二人は自分たちがおもしろいと思ったことをずっとやっているんですね。

設楽 ありがたいことに、俺らは昔からラジオの仕事は途絶えてないんだよね。結構若いころから。それで、他のところでもずっと同じことをやってきた気がする。今はそれの延長線上というか。こういう場所があるのはありがたいですけどね。

<この対談の続きは書籍をご覧ください>

本作品をAmazonで読む >

あわせて読みたい

宮嵜守史● 1976年7月19日生まれ、群馬県草津町出身 ラジオディレクタ̶/プロデューサー TBSグロウディア イベントラジオ事業本部 ラジオ制作部 所属 TBSラジオ「JUNK」統括プロデューサー 担当番組「伊集院光 深夜の馬鹿力」「爆笑問題カーボーイ」「山里亮太の不毛な議論」「おぎやはぎのメガネびいき」「バナナマンのバナナムーンGOLD」「アルコ&ピース D.C.GARAGE」「ハライチのターン」「マイナビラフターナイト」「ハライチ岩井ダイナミックなターン!」「綾小路セロニアス翔 俺達には土曜日しかない」 YouTubeチャンネル「矢作とアイクの英会話」「岩場の女」ディレクター