矢作の「エピソードトークをしない」に焦った!? おぎやはぎ(小木博明・矢作兼)×宮嵜守史【対談】/ラジオじゃないと届かない②

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公開日:2023/3/26

TBSラジオ「JUNK」統括プロデューサーによる、書き下ろしエッセイ『ラジオじゃないと届かない』(宮嵜守史/ポプラ社)。ラジオに捧げた25年について、ラジオ愛あふれる文章が綴られた1冊。本連載では、本書から、著者とともに番組を作ってきた人気パーソナリティの極楽とんぼ、おぎやはぎ、バナナマン、ハライチ、パンサー向井さんとの豪華対談の一部を、特別に公開します!

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ラジオじゃないと届かない
ラジオじゃないと届かない』(宮嵜守史/ポプラ社)

おぎやはぎ

ぼそっと真理をつくおぎやはぎ

 語り口や見た目、ネタやキャラクターがどこかほのぼのしているおぎやはぎ。僕は二人の全てが大好きだった。いつかこの二人と仕事をしてみたい……。結果、この仕事を始めて最も付き合いの長いパーソナリティになった。

 初めて出会ったのは「お笑いD​O​J​O」のネタ見せ。その後、矢作さんとは「極楽とんぼの吠え魂」で時々仕事をしていた。

 飄々としたキャラクターだから無責任で信念も信条もないように見える。ところがそれは単純に人柄が穏やかというだけ。二人の言葉は不意に真理をつく。そういうコンビだから辛辣な発言が炎上しないのかもしれない。

 おぎやはぎには得も言われぬ不思議な魅力がある。

おぎやはぎ

番組開始前に矢作が言った衝撃的な言葉

宮嵜 『メガネびいき』がスタートしたときのことを覚えてますか?

小木 事前に顔合わせってあったっけ?

宮嵜 いたのは、矢作さんだけだったかもしれないですね。

小木 それ、聞いたことある。オークラとヒゲちゃんと矢作でやったんじゃない?

宮嵜 池田さんもいました。レギュラーが始まる前にジンギスカン屋で食事会があって。

矢作 へえ~、そんなのあったんだ。

小木 あったんだ、じゃないよ(笑)。

宮嵜 もっと前で言うと、僕は矢作さんと一度か二度仕事したことがあったんですよ。『極楽とんぼの吠え魂』の「化けレポート」で。僕は途中から『吠え魂』に入っているんですけど、矢作さんがマネージャーさんをつれないで、リュックを背負ってTBSに来てたのは覚えてます。

矢作 よくわからないんだけど、あのときってさ、ヒゲちゃんって何年目ぐらいなの?

宮嵜 四年目とか、五年目じゃないですかね。二十六歳ぐらいから『吠え魂』のディレクターをやっているんで。

矢作 小木とは『メガネびいき』が始まることになってから初めて会ったの?

宮嵜 たぶん「お笑いDOJO」のネタ見せで見かけたくらいです。

小木 俺は極楽(とんぼ)のラジオに出てないからね。たぶんそう。

宮嵜 当時、『JUNK』の時間帯のあとに、深夜三時~四時で『JUNK2』という帯番組を作ると池田さんから聞いて、「じゃあ、僕も企画書を出していいですか? おぎやはぎで出したいです」って言ったんです。当時、マネージャーだった玉川大さんに連絡して、「『JUNK2』って枠ができるんで、おぎやはぎの二人で企画書を書いていいですか?」と確認しました。そうしたら、「どうぞどうぞ」という感じでした。

小木 へえ~、そんなことだったの。ありがとう。

矢作 書いてくれてありがとうね。

宮嵜 でも、『JUNK2』は結局ダメだったんです。

矢作 えっ、ダメだったの?

小木 俺、全然覚えてないからさ、そこから始まったのかと思った。

宮嵜 やってないです。なんで企画書を書いただけでこんなにお礼言われるんだと思いました(笑)。ただ、そのすぐあとに、『吠え魂』が終わることになったんですよ。加藤(浩次)さんから「一回店じまいさせてほしい。ケジメをつけるために終わらせたい」と言われて。そのときに池田さんから「次は誰がいいと思う?」と聞かれたから、そこでもう一回「おぎやはぎがいいと思います」と言ったんですよ。

小木 もう一回言ってくれたのね。ありがとう(笑)。

宮嵜 それで今度は決まったんです。池田さんと相談して、「極楽とんぼがああいう終わり方をした直後だから、いきなり翌週からだと、おぎやはぎが大変だよね」という話になって。ちょうど終わったのが春と秋の改編の真ん中の七月だったんですよ。とりあえず秋の改編までは『JUNK交流戦スペシャル』を放送してインターバルを置こうと。それで秋から金曜日のJUNKとして始まりました。ここで最初の話に戻るんですけど、始まる前に食事会があったんです。その席で僕が二つ覚えていることがあって。一つは矢作さんが「俺、ラジオのためにトークを作りに出かけたくない」と言っていたんですよ。

矢作 へえ~。

小木 その話聞いたのを覚えてるよ。「エピソードを作りにいきたくない。自由にやらせてくれ」って矢作が言ったんだよね。

宮嵜 それに良い悪いはないんですけど、なんとなく「ラジオのために何かする」みたいな慣習ってあるじゃないですか。あともう一つは「肉をひっくり返すタイミングが早い」って(笑)。その二つを強烈に覚えてます。

矢作 何なんだよ、それ(笑)。

小木 すごいな。外国の企業の会長がさ、「いい話と悪い話がある」なんて話し出すちょっとしたジョークみたいじゃん。

矢作 カッコいいエピソードだな。

宮嵜 当時の僕は深夜ラジオの経験がそんなあったわけじゃなくて。周りを見ると、みんなエピソードトークをするためにいろいろな準備をしているから、それが普通だという気がしてました。それを矢作さんは最初から「やらない」と言ってきて(笑)。

小木 ディレクター的には最初そういう考えでいたわけじゃない? それでオファーして、番組が決まってさ。「そんな話はしない」とか言われたらどう思うの?

矢作 「肉をひっくり返すタイミングが早い」と「エピソードトークなんてしない」って言われてさ。「自分からおぎやはぎの名前を出して失敗した」って思うんじゃないの?

宮嵜 心の中で「あちゃー」って思いました(笑)。

ラジオで全てを発表してきたおぎやはぎ

宮嵜 『金曜JUNK』としてスタートして、初回のときに、さっそく小木さんの交際報道が出たんですよ。それで、日刊スポーツが記事に使っていた奈歩さんの写真が人違いで(笑)。

矢作 そうそう。覚えてるよ。

小木 で、リスナー投票したんだ。

宮嵜 結婚したほうがいいかどうか、リスナーに聞いたんですよね。

矢作 ちゃんと結婚している人間のほうが安心感があって、むしろモテるんじゃないかってことで、最終的に決めたんだよね。

宮嵜 それで翌週には「結婚します」って発表したんですよ。

小木 そう。それで決めた。

宮嵜 そういう話で言うと、最初に小木さんの交際だ、結婚だって話があったり、矢作さんも結婚をラジオで発表したり。

小木 矢作の結婚はドッキリ的な感じでね。

矢作 今となると、婚姻届を生放送中に出しに行ったのは、いい思い出になってるよね。そういうのって普通は忘れるじゃん。今でもまだ鮮明に覚えてるもん。

小木 一つのイベントになってるから、忘れないよね。提出しに行った役所の警備員さんの名前が「矢作」だったんじゃなかったっけ?

矢作 そう。矢作だったの。

宮嵜 あのとき、小木さんは矢作さんの結婚をホントに知らなかったんですか?

小木 まったく知らなかった。全然そんな話をしてなかったもん。放送中の矢作の一言で「あっ!」ってなったから。

宮嵜 それぞれの節目にラジオをやらせてもらえるのは、スタッフとしてすごく嬉しいんですよ。発表する場所に選んでくれて光栄というか。

小木 番組の始まりはすごく悪かったけどさ。

矢作 俺が「肉をひっくり返すのが早い」って言ってね(笑)。

小木 そこから始まったわりには、「なんかあればラジオで話そう」みたいな気持ちでいるのよ。なぜかね。

矢作 たしかになあ。それはもうラジオ一択だね。

小木 まずラジオのリスナーに伝えたいという気持ちはすごいある。

矢作 他にこっちにしようかとか、迷う感じじゃないね。

宮嵜 スタッフとしてはもちろん打算はあります。話題になって「おいしい」という気持ちもないわけじゃないけど、そういう場所に選んでいただけるのは嬉しいですね。

矢作 ラジオってそういうところだよね。俺らに限らずみんな。

小木 うん。この業界の人はみんなラジオを大事にしてるよね。

矢作 ちょっとテレビとは違うよね。テレビでネタにするのは、なんか恥ずかしいんだよなあ。

宮嵜 それは、なんでですか?

矢作 計算に見えるからじゃない? ラジオだって多少あるんだけど、テレビはその割合が違うよね。

小木 全然違うと思うよ。テレビはほぼ打算でしょう。

宮嵜 結婚もそうだし、お子さんの誕生もそうだし、矢作さんのバイク事故も、小木さんの大病もそうだったし、全てラジオで発表してきました。

小木 たしかに全部そうだね。

宮嵜 お二人は特に覚えていることってあります?

小木 強烈だったのは矢作のバイク事故じゃない? もう十年前なんだね。俺、「死んだ」って思ったから、普通に。

矢作 ホントに?(笑)。

宮嵜 僕にはマネージャーの根本さんから半泣きで電話がかかってきましたよ。「矢作がバイク事故起こしちゃって」って。

小木 俺には最後の最後に連絡があったのかな。大さんから電話かかってきて。「矢作が……高速道路で……バイクで……事故った……」ってすごいテンションで聞かされて。「高速で……中央分離帯のほうでさ……」って。

宮嵜 すぐに結論を言わない(笑)。

矢作 それ、大さんがやってたんだよ。わざとらしいんだよな(笑)。

小木 血の気も引いて、何の言葉も出なかったね。最後に「命に別状はない」みたいな言い方をしてたんで、それで大丈夫なんだってわかったけど。

矢作 「命に別状はない」ってほどの話でもないんだよ。全身打撲で。

宮嵜 翌日にラジオがあって、矢作さんが笑うと痛いからってちょっと来て帰ったんですよね。擦り傷は痛々しくて。でも、大怪我じゃなくてよかったですよ。矢作さんが特に覚えていることはなんですか?

矢作 こうやって話をしていると、昔の記憶が戻ってくるじゃん。パッと思い浮かんだのは、荒俣(宏)先生がゲストに来たなって。

小木 ああ、なるほどね。

矢作 荒俣さんが深夜ラジオのゲストに来てるってすげぇなと思うよ。あとはゲストで言うと、長瀬(智也)君とかさ。

宮嵜 最初の最初ですね。

矢作 長瀬君はジャニーズなのにAVの話をしだして。

宮嵜 ドキドキしちゃいました。マネージャーさんが見てるから。

矢作 絶対怒られるじゃん? 人気絶頂のときだよ。長瀬君と荒俣先生のゲストが印象深いよね。

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宮嵜守史● 1976年7月19日生まれ、群馬県草津町出身 ラジオディレクタ̶/プロデューサー TBSグロウディア イベントラジオ事業本部 ラジオ制作部 所属 TBSラジオ「JUNK」統括プロデューサー 担当番組「伊集院光 深夜の馬鹿力」「爆笑問題カーボーイ」「山里亮太の不毛な議論」「おぎやはぎのメガネびいき」「バナナマンのバナナムーンGOLD」「アルコ&ピース D.C.GARAGE」「ハライチのターン」「マイナビラフターナイト」「ハライチ岩井ダイナミックなターン!」「綾小路セロニアス翔 俺達には土曜日しかない」 YouTubeチャンネル「矢作とアイクの英会話」「岩場の女」ディレクター