第2回「タイタニック二郎」/酒飲み独身女劇場 ハッピーエンドはまだ来ない②

文芸・カルチャー

公開日:2024/1/26

 まず一つ目は、韓国の留学生が教えてくれたタイタニック飲酒だ。

 大きめのジョッキにビールが程よく注がれていてさらにそのジョッキの中にひとまわり小さいサイズのグラスが浮かんでいる。そこにチャミスルのような焼酎を順番に注ぎ、最終的にビールの海へ沈没させてしまった人が負けというゲームだった。

 黒ひげ危機一発以上の緊張が走るゲームは、はじめて。セリーヌ・ディオンの『My Heart Will Go On』をBGMに注がれていく酒。サビに行く前にすでに表面張力ぎりぎりのグラス。体育祭で走る種目で「位置についてよーいドン!」の掛け声にすら耐え切れない私の手は小刻みに震えていた。

 ぽちゃん。この時はじめてタイタニックの恐ろしさを痛感した。

 涙なのか酒なのかわからないほどの一滴がグラスにきらりと注がれた瞬間、勢いよく沈んでいくグラス。ジャックーーー!! 沈みきった後に混ざり合うビールと焼酎。ジャックとローズとは真逆で、絶対に結ばれてほしくないふたりが出会ってしまったのだ。

 私は、ジャックもローズも肝臓も救うことはできなかった。壮大な海を前にして鳥肌がたった。これはあかん。黄金色のビールに甘ったるい果実が香る焼酎によって完成したちゃんぽんは、確実に激しい嵐のような二日酔いを巻き起こす。リズムゲームのように襲いかかる胃痛の津波。私を救い出してくれるディカプリオは残念ながら見つからなくて100年の恋も冷めていった。

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さかむら・ゆっけ、●酒を愛し、酒に愛される孤独な女。新卒半年で仕事を辞め、そのままネオ無職を全う中。引っ込み思案で、人見知りを極めているけれど酒がそばにいてくれるから大丈夫。たくさんの酒彼氏に囲まれて生きている。食べること、映画や本、そして美味しいお酒に溺れる毎日。そんな酒との生活を文章に綴り、YouTubeにて酒テロ動画を発信している。気付けば、画面越しのたくさんの乾杯仲間たちに囲まれていた。
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