第8回『ダイヤモンドの功罪』

マンガ

公開日:2024/1/24

ということで、ここまでかなり綾瀬川のことを語らせて頂いたのですが、この作品で今のところ一番凄いなと個人的に思っているのは、実は綾瀬川ではありません。

綾瀬川と同じ投手である巴円(ともえまどか)です。

巴はU-12の選考に綾瀬川と一緒に受かった、ムードメーカーでいつも明るい少年です。

では一体、巴のどこが凄いと感じたのか。
それは、第2巻に出てくる練習試合のシーン。

巴は元々のチームでは、ずっとエースを任されていたのですが、綾瀬川と同じチームになりエースではなくなってしまいました。

そんな状況で迎えたU12日本代表としての初試合、実はこの日、綾瀬川は初めての登板でした。しかも相手は体格差もあるかなり格上のチーム。

にも関わらず、完璧なピッチングを見せる綾瀬川に、巴は人知れず挫折を味わいます。

チームのコーチですら、綾瀬川が圧倒的すぎて挫折を味わって欲しい。とにかく1回打たれてくれ!と祈っていたその時。

「綾瀬川!ゆっくりゆっくり!めいっぱい時間つこてええで!」
「椿!バッター引っ張りやで!またスーパーキャッチ見してや!」
巴がベンチから必死で声掛けをするんです。

心では「同じ学年に コイツ ずっとおんのんか」と思いつつ、それでも勝ちを掴みとろうとチームを鼓舞するその姿に、巴の強さを感じました。

この作品は、人の心の内の描写や人間関係の複雑さをかなりリアルに描いており、もしかしたら胸がキューっとなることが多いかもしれません。

ですが、圧倒的に面白いです。
そして、綾瀬川という圧倒的才能に立ち向かっていく姿を見ていると、もっと自分自身も成長していきたいという勇気が湧いてきます。

読んで後悔はさせません。
是非手に取ってみてください。

鈴原希実

<第9回に続く>

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