セックスの頻度と幸福度は週1回まで比例! 2回以上は…?『中高年のための性生活の知恵』②

恋愛・結婚

更新日:2019/7/8

■家庭内の力関係の変化 ── 「ノー」と言える妻たち

 前項の共働き世帯の増加を示すグラフ(22ページ参照)では、不況の長期化とともに働く妻たちが増加していることが分かりました。実際に、総務省の統計「女性(45~65歳)の就業率の変化」では、2003年から2013年の10年間で全ての年齢において就業率は高まっており、最大で10・7%の上昇となっています。

 女性たちは、これまで通り家事も背負っていれば、子どもとの向き合いも背負っています。夫たちの家事、育児にかける時間が妻と同等にならない限り、どうしても「わたしの方が大変なんだから!」「忙しくてそんな気持ちになれないわよ」と、精神的にも体力的にも余裕を失ってしまうことが推察されます。

「第8回 男女の生活と意識に関する調査・2016年(日本家族計画協会)」でも、女性たちのセックスレスの理由として1位が「面倒くさい」、3位が「仕事で疲れている」となっており、心身共に疲れきっている妻が増えているともいえるでしょう。

 また、先にもお伝えした通り、妻の社会進出により、夫婦でのパワーバランスも変わっています。経済力を持った妻は相対的に強くなり、夫がセックスを求めても自分が望んでいない場合は「ノー」と言えるようになったわけです。

 調査では、配偶者とどのような性的関係(性交渉・愛撫・精神的愛情のみ)を持ちたいかについても聞いていますが、「性交渉を伴う愛情関係」を望んでいる人の実際についてみていきましょう。

 月1回以上を「セックスあり」とすると、2000年の調査では、男女共に「したい」と思っている人たちの78%が、月1回以上のセックスを行っていました。それが、2012年になると、男性はたった44%と、半数以下になってしまいました。それと比例して女性も68%という数字に落ち込んでいます。

 このデータから夫側の状態を推察してみると「妻と本当はセックスしたいけど言い出せない」または、「ノー」と言われて引っ込んでしまったきりになっている、といったところでしょうか。いずれにしても、強く出られなくなっている男たちが増えると同時に、「ノー」と言える妻が増え、夫婦の関係性そのものが変わってきているのだと考えられます。

 それとは別に、懸案すべきこともあります。セックスの調査を行う際には、「愛しているか」「離婚したいか」といったことも同時に質問しています。その回答を「愛している」「どちらかといえば愛している」という肯定派と、「愛していない」「どちらかといえば愛していない」という否定派に分けてみたところ、否定派が増えていることが分かりました。身体的なことだけでなく、心のつながりも揺らいできているようなのです。

 加えて、「配偶者と別れたいと思うことがある」人、「寝室が別」と答える人も増加しています。夫婦関係がやや揺らいで希薄化しているために、セックスレス化しているケースもありそうです。

 先にもお伝えしたように、わたしは性的なコミュニケーションにおいて、男女が対等になれたこと自体は良いことだと感じています。女性が自分の意思を尊重してほしい、つまり、「合意しないとセックスしません」と男性へ伝えられるようになったことは喜ばしいことです。

 しかし、関係性が良好でありながらも性交渉がない夫婦も多数見られます。性交渉がないことが常態化し、そこから精神的つながりが希薄になっていくことにつながっているとしたら──人生の幸福度にわざわざ暗い影を自ら引き寄せることになりはしないでしょうか。

 そのことを示唆する、一つのデータがあります。

 アメリカのシカゴ大学が約2万5000人に対して行ったセックスの頻度と幸福に関する調査では、セックスの頻度と幸福度は週1回の頻度までは比例するという結果が出ています。

 つまり、一定の頻度でセックスを続けることは、パートナーとの関係性を良好にし、幸福度を上げる働きをしているということです(ただし、週2回しているからといって、週1回している人よりも幸せ度が高いわけではないのも面白いところです)。セックスは性欲を満足させるだけでなく、互いに精神的な充足感を得ることに大きく寄与しているということです。

「セックスを維持することは、心身共に良い関係性を維持することとイコールである」という意識をお互いに持つことが重要なのではないでしょうか。

愛情を日常生活で表すことの大切さ