「働かないアリと過労死するアリ」はヒトにも当てはまる? 【知らない人が多い!? 「令和元年版」理系の新常識】④

スポーツ・科学

2019/7/11

『知っていることの9割はもう古い! 理系の新常識』(現代教育調査班:編/青春出版社)

 大人になると、学生時代に苦手だった理系科目にますます距離を感じるという人も多くなるものだ。でも、理系の知識は、私たちの生活に身近な技術や情報など、生活に欠かせない知識にも必ず関わるものだ。

 あなたが苦手だと思って遠ざけていた間に、常識だと思っていた知識はとっくに古いものになっているかもしれない。この連載では『知っていることの9割はもう古い! 理系の新常識』(現代教育調査班:編/青春出版社)から、知ると誰かに教えてあげたくなるような最新の科学知識を紹介していきたい。

■過労死するアリと働かないアリの存在が研究で明らかに! (本書34ページ)

 働き者の象徴のように語られてきた「アリ」だが、近年の研究ではどの巣にも「“働かない”働きアリ」が存在することが明らかになってきた。長期間観察した結果、どの巣でも2~3割のアリはほとんど労働していなかったのだ。仮に、観察中の片方の巣からよく働くアリを30匹、別の片方の巣から働かないアリを同数で30匹取り出して入れ替えても、働かないアリの割合は結局同じ程度に収束するそうだ。

 このように働かないアリが発生してしまうのは「反応閾値(いきち)」が個体によって異なるためだ。たとえば、仕事を始めるための「腰の軽さ」は人によっても異なる。部屋が散らかっているときに、真っ先に片付けを始めるのは一番整理整頓好きな人だ。その人(たち)が片付けを済ませてしまうので、それ以外の人は働く必要がない。

 だが、もしその一番整理整頓好きな人がグループからいなくなったら、部屋はもっと散らかってから別の人(次にきれい好きな人)が片付けを始めるはずだ。同じ現象がアリの世界でも起こっているというのだ。

 働かないアリが存在するのは、労働すると疲れるということと深く関係している。もしすべてのアリが働くと、すべてのアリが疲弊して動けなくなるときがやってくる。餌もまかなえず、卵の世話もできなくなってしまう恐れもあるのだ。従って、サボって働かないアリがいることは、今働いているアリが働けなくなってしまったときのリスクヘッジでもある。アリのコミュニティが全滅してしまわないために必要なシステムなのだ。

 だが、あるアリの種の最新研究では、「まったく働かないアリ」の存在が確認されている。しかも、この気質は遺伝によって子孫に受け継がれるというのだ。この働かないアリは、コミュニティ内の他のアリを過労死に追いやるという。人の社会にも関わりがありそうなその研究結果については、ぜひ本書でご確認いただきたい。

 本書では、このように私たちがうっかりアップデートしそびれてきた「最新の理系の常識」を教えてくれる。平成生まれの人も、昭和生まれの人も、本書を片手にあなたの知識の「新旧度」を計ってみてはどうだろうか?

文=田坂文