「Not finish(済みません)」がなぜ「ごめんなさい」の意味になる?/日本人の9割が知らずに使っている日本語⑦

文芸・カルチャー

公開日:2020/2/13

ウソをつくなというとき、なぜ「ウソいえ!」と反対にいうの?
…外国人にそう聞かれたら、日本人としてきちんと答えられますか。いわれてみると確かに疑問だらけの「いつもの日本語」を再発見してみましょう!
雑学・豆知識としても役立つトピックを『日本人の9割が知らずに使っている日本語』(岩田亮子/青春出版社)から紹介します。

Not finish を意味する「済みません」がなぜ「ごめんなさい」の意味になるの?

「済む」は「用事が済む」など「終了する」、「終わる」という意味の動詞です。それを否定する「済みません」は、普通に考えると「まだ終わっていない」という意味。ところが、日々の会話では「済みません」を「ごめんなさい」という謝罪の言葉として使うことが多いですね。外国人の生徒さんにとっては「Excuse me」や「I am sorry」とほぼ同じ。なぜ「Not finish」が、謝罪の言葉として使われるようになったのでしょうか。


「済む」は「澄む」と同じ語源とされ、「濁りや曇りがなくなる」こと。「気が済む」と言えば、「気持ちがおさまる」や「気持ちが晴れる」という意味で、その否定形である「気が済まない」は、「気持ちがおさまらない」、「気持ちが晴れない」という意味になります。

 つまり、「済みません」には、相手の気分を害したり相手に迷惑をかけたりしたことで、「(このままでは)私の気持ちがおさまりません」、もしくは「(申し訳なくて)気持ちが晴れません」という意味があるのです。そこから、謝罪の言葉として使われるようになったのです。

 さて、「済みません」は、日常生活のさまざまなシーンで使われます。例えば、「素敵なおみやげをいただき、本当に済みません」と言えば、「ありがとう」と感謝の意味になります。これは、「(おみやげをいただいたのに)何のお礼もできずに、私の気持ちがおさまりません」と考えることができます。

 もう一つ。「あのう、済みません」と言えば、これは「軽い呼びかけ」です。呼びかけることで、相手の行為や作業をいったんストップさせてしまうことに対して、謝罪、もしくは感謝の気持ちが込められた呼びかけで、何かを依頼するときにも使います。「済みません」には「謝罪」、「感謝」、「呼びかけ」、「依頼」というおもに四つの意味があるのです。




【次回に続く】