頼みごとを聞いてもらえる確率が大幅アップ⁉ 共通点の有無が影響力に差をつける/超影響力⑥

ビジネス

公開日:2021/5/11

超影響力』から厳選して全6回連載でお届けします。今回は第6回です。圧倒的影響力と人の心を見透かす力を持つ、メンタリストDaiGoが放つ “影響力の決定版”! 本書では、大衆扇動や群集心理をもとに、効果が科学的に実証されている、集団や個人の動かし方、流行や熱狂の起こし方を伝授。相手を動かしたいすべての人、必見の1冊です!

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超影響力
『超影響力~歴史を変えたインフルエンサーに学ぶ人の動かし方』(メンタリストDaiGo/祥伝社)

ステップ3 類似と共通点の強調

聞き手に親しみを感じてもらう秘訣

 3つ目のステップは「類似と共通点の強調」です。

 影響力のある人は、あからさまに人の上に立とうしません。身近な存在、気軽に話しかけられる仲間という立ち位置から、周囲に影響を与えていきます。

 上から目線のリーダーは煙たがられ、親しみのあるリーダーは好意を持って支持されるのです。その秘訣が「類似と共通点の強調」にあります。

 たとえば、初対面の人と話していて、あとから冷静に振り返ってみると「だから何?」と思うような些細な共通点で話が盛り上がったことはありませんか?

・出身地が同じだった
・誕生日が近いことが判明
・血液型が同じだった
・名前の一部が一緒
・出身校が同じだった

 年齢は離れていても出身地や出身校が同じなら、地元の名店や少し残念なお店、名物教師や学校の近くのサボりスポットなど、小さな共通点が見つかります。

 また、誕生日が近いと「お祝いがクリスマスとセットになる」「祝日だったから小中学校時代はなぜか誇らしかった」、血液型が同じなら「占いで似たようなことを言われる」「だから×型は……と言われてムカつく」、名前の一部が一緒なら「あだ名はなんだった?」「よく名前を言い間違いされる」といった話ができます。

 とはいえ、どれも話題としては何往復かの会話で一段落つくささやかなものです。でも、絶妙な「シュムージング」として機能します。なぜなら、類似性によって生まれる好意は私たちが思っている以上に大きいからです。

 実際、人は小さな共通点があるだけで相手の話に耳を傾け、受け入れる確率が2倍近く向上することがわかっています。つまり、相手が「自分と同じだね」と共感し、好意を抱いてくれるだけで、与える影響力、説得力が大幅に高まるのです。

 

「好きな形容詞が同じ」だけで頼み事を聞く確率が2倍に

 カリフォリニア州にあるサンタクララ大学の実験です。

 研究チームは実験の参加者に「50種類の形容詞の中から好きなものを20個選んでください」と依頼し、全体を3つのグループに分けました。

①類似グループ:好きな形容詞として選んだ20個中、17個が一致する人を集めた集団
②ニュートラルグループ:20個選んだ形容詞のうち10個が一致する人を集めた集団
③非類似グループ:20個中、3個の形容詞しか一致しなかった人を集めた集団

 その後、各グループ内で「自分の書いたエッセイを読んで感想を聞かせてもらいたい」「グループのために○○まで行って××を運んできてもらいたい」など、簡単な頼み事をし合うという実験を行ないました。

 すると、頼み事の成功率に大きな差が生じたのです。

 ①の類似グループでは、77%の人が相手の頼み事を聞き、行動を起こしました。これが②のニュートラルグループでは60%、③の非類似グループでは43%まで下がったのです。

「好きな形容詞」が似ているというのは、ほんの些細な類似点であり、共通点にすぎません。それでも「自分たちはあんまり似てないな」と思っているグループと、「私たちは何か似ているところがあるな」と感じているグループでは、相手の頼み事を聞く確率が2倍近く上がるというのは、驚きの数字です。

 人は自分と似た部分のある人には好意的になり、影響力を受けやすく、手を差し伸べたい、助けたいと思い、行動を起こすのです。

 

 たとえば、アメリカの大統領選挙では候補者たちがわざわざ記者団を引き連れ、マクドナルドでハンバーガーを食べたり、支持者の赤ん坊を抱っこしたり、野球帽を被って地元チームの応援に行ったりするシーンを演出します。

 これも類似と共通点の強調です。

 裏読みをするタイプの有権者には通じませんが、メディアを通して映像を目にした人たちのいくらかが「オレと同じマクドナルド好きだなんて庶民派だな」「孫世代の子どもをかわいがる気持ちは私と同じ」「野球好きなのか。親近感湧くな」と、「あの候補は身近な存在だ」と感じてくれたら御の字。

 類似点、共通点を感じた有権者は、その候補者が政策の話をするときも積極的に耳を傾けるようになり、仮にスキャンダルが出ても好意的に解釈しようとしてくれます。

 あなたが選挙に出ることはないかもしれませんが、周囲の人に対して影響力を発揮したいと考えているなら、類似と共通点の強調を日々のコミュニケーションに取り入れていきましょう。

 特に「シュムージング」と「ストレングス」を行なったあとであれば、その効果は絶大。確実に相手の信用を得ることができます。

超影響力

人は、頼み事をしてきた相手のことを好きになる

 ちなみに、「類似と共通点の強調」は会話の冒頭で行なうように心がけてください。

「私たちって趣味が合いますね」「僕らは価値観のこういうところが共通しているね」「あなたとは育った環境が似ているよね」といった会話は、一般的にはある程度、仲がよくなってから交わされます。

 もちろん、気の合う人同士がさらに親近感を抱くという意味では大切なやりとりです。

 しかし、影響力のある人を目指すのであれば話は変わってきます。

 こうした類似点や共通点を確認し合う会話はできるだけ早めに交わしましょう。仲がよくなってからでは遅すぎます。時間がもったいない。

「シュムージング」で距離感を縮め、「ストレングス」で相手のよいところを指摘したら、その過程で感じ取った自分との類似点や共通点を伝えます。

 それだけ相手はあなたへの好意を膨らませ、話に耳を傾け、頼み事も受け入れてくれやすくなるのです。

 

 しかも、人間には頼み事をしてきた相手のことを好きになる心理があります。これは人が「自分が親切な行動を取るのは、相手のことが好きだからだ」と認識するから。

 つまり、「類似と共通点の強調」で準備を整え、頼み事をして力を貸してもらうと、相手は手助けしてあげたあなたのことをますます信用するようになるのです。上手に人に助けてもらえる人は成功者になります。

 

 この仕組みを日常生活の中でうまく使っていくなら、こんな組み合わせがいいでしょう。

「類似と共通点の強調」で相手との距離を縮めたら、「今、○○について困っているので、アドバイスをいただけないですか?」と助言を求めるのです。

 これは「アドバイス・シーキング」と呼ばれる心理テクニックで、セールスパーソンが商談時に顧客に対してアドバイスを求める会話を加えるだけで、ある商品の成約率が8%から42%に上昇したというデータもあります。

 背景にあるのは、ここでも「自分が親切な行動(=アドバイス)をしたのは、相手のことが好きだからだ」という心の動きです。

「類似と共通点の強調」で相手があなたの影響を受けやすい下地を作り、「アドバイス・シーキング」でアドバイスをもらい、こちらをさらに好きにさせます。そしてそのうえで、あなたが相手にしてもらいたい「頼み事」をするのが、最強コンボ。相手は知らず知らずのうちにあなたを信用し、強い影響を受けるようになります。

 影響力のある人が周囲の人たちに好かれ、頼られるのは、影響を与えるごとに好感度が上がっていく仕組みを知っているからです。

 

ポイント
自己開示を含む雑談で距離を縮め、相手のよい点を指摘し、互いの類似を意識させると、「信用」が築かれる。

<続きは本書でお楽しみください>