「やりたいこと」が見つからない! そんなときは第三者に自己開示してみよう/Tシャツ起業家②

ビジネス

公開日:2021/5/17

Tシャツ起業家』から厳選して全6回連載でお届けします。今回は第2回です。多くの人から支持されている産直ECサイト「食べチョク」。ユーザーと生産者が直接つながることで見えてくる「豊かな食の未来」を示しながら、一次産業の変革に挑み、自身をアップデートし続ける起業家の思考法に迫る初の著書です。

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Tシャツ起業家
『365日 #Tシャツ起業家 「食べチョク」で食を豊かにする農家の娘』(秋元里奈/KADOKAWA)

Q

「やりたいことを見つけなさい」とよく言われますが、どうしても見つかりません。
将来どんな仕事に就いたらいいのかもわからず、途方に暮れています。
どうすれば秋元さんのように「やりたいこと」を見つけられるのでしょうか?

A

「やりたいこと」が見つかるタイミングは人それぞれです。そもそも、わたしがそれを見つけたのも社会人になってから。だから、まず言えるのは、「決して焦る必要はない」ということです。

 それでもなるべく早く「やりたいこと」を見つけたいと思うのであれば、第三者に自己開示をしてみるのがポイントかもしれません。わたしが農業に目を向けるきっかけになったのも、異業種交流会で出会った人のひとことでした。「実家が農業って、面白いね」と言われたことで、「他人から見ると、面白いんだ」と気づけたのです。それを機にあらためて農業に興味を持ち始め、実家の荒れ果てた畑を目にしたときに「農業を支えたい、それがわたしのやるべきことだ」と思ったのです。だから、もしかしたらすでに「やりたいこと」の種は、あなたのなかにあるかもしれません。

 でも、自分の力だけでそれに気づくのは難しいもの。だからこそ、第三者に自己開示し、自分でも気づかなかった「自分の面白さ」を知ることが大事だと思います。

 人は誰しも、固定概念を持っています。時にはそれにしばられ、「自分にはなにもない、面白くない人間なんだ」と思い込んでしまうこともあるでしょう。けれど、そんな固定概念や柵を解き放ってくれるのは、自分とはまったく異なる価値観を持つ第三者です。

 自分を深堀りするために自己開示する場合、ある程度相手を選ぶ必要があります。ふだんから仲良くしている友人よりも、それまでの人生でほとんど関わることがなかった領域に生きている人と話すほうが、新鮮な気づきを得られるからです。わたし自身も、仕事では絶対に関わらないような人と、月に3度は会食をする、と決めています。そこでの何気ない会話で、新しい発見が得られています。

 ただし、情報は取捨選択することが大事です。わたしが起業するとき、「あまり多くの人にアドバイスは受けない方がよい」というアドバイスをもらいました。色んな意見を聞きすぎてしまうと迷ってしまうから、ということです。しかしわたしは、そのアドバイスは取り入れませんでした。多くの観点からインプットをもらい選択肢を揃えた上で、自分なりの理由で取捨選択すればよいと考えたからです。アドバイスは多数決ではなく、決めるのはあくまで自分自身。例えば「AかB、どっちが良いか?」と色んな人に聞いてまわった時に、Aと答えた人が圧倒的に多くても、自分がBだと思えばBを選ぶべきです。選んだあとに責任を負うのは自分自身ですし、自分が納得して選んだ答えならば、あとはそれを正解にするしかありません。

 私は創業期から、何か迷うと大勢の人に連絡をして、さまざまなお話を聞いてきました。直接的に参考にしたのは3割ほど。あとの7割は「この理由はわたしの事業には当てはまらなそうだな」「わたしとは違うけど、そういう考え方もあるんだな」と背景を踏まえた上で取り入れないようにしたのです。一方で取り入れなかった理由自体はすべて事業に活かしたので、結果的に無駄だったと思うアドバイスはありません。時間を割いていただいた方々には感謝してもしきれません。

 人はどうしても他者の意見に惑わされてしまう生き物です。そこで意識してほしいのが、相手の肩書や立場と、発言とを切り離して考えること。社会的に成功している人の発言は、どうしても絶対的に正しいと思ってしまいがちです。でも、それは危険なことです。わたしは仮に新卒で入社したDeNAの社長(※当時。現会長)・南場智子さんが言っていたことだとしても、彼女の立場と発言とを切り離し、咀嚼するようにしています。相手の答えそのものよりも、その答えに至った背景に価値があります。「なんでそう思うのか」「こういうパターンだったらどうするか」など背景を探る質問をしてみてください。どうしてもそれが難しい人は、誰かの発言に感銘を受けたとき、最低でも1週間は寝かせるようにしましょう。時間が経ってもまだ心に残っているのであれば、その意見を参考にしてみてもいいと思います。

<第3回に続く>

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