はじめまして。高岡早紀です/魔性ですか?①

小説・エッセイ

更新日:2021/5/24

私に毒なんてあるかしら。いや、毒しか出なかったらどうしよう!?「なんで私、いつも魔性の女って呼ばれるんだろう。そんなことないのに……」恋愛観、娘や犬との穏やかな暮らし、仕事のスタンス。ユーモアと毒をちょっぴり含んだ、人気女優、初めての本音エッセイ。

 魔性の女、魔性の女優──。

 いつの頃からか、名前の上に「魔性」の二文字がつけられるようになりました。

 友人・知人男性と食事に行くと写真が週刊誌に載って「魔性」……。

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 うーん、なんて枕詞(まくらことば)だ!?

 若かりし頃は、雑誌などのインタビュー記事で、事前に内容を確認させていただくことができる場合、「魔性」という言葉が使われていたなら、すべて削除をお願いしていました。

「魔性の女=ものすごーく悪い女」というイメージがあったんですね。

 でも、改めて「魔性」を辞書で引いてみると、「人を惑わす性質」といったようなことが書かれているではありませんか。それを知ったとき、「おっと、そうなの?」と。

 悪く解釈すれば、「魔性の女」は、とんでもない(?)女です。でも、別の見方をすれば、「人を惑わすくらい魅力的な女」ということらしい!

 というわけで、40歳を過ぎた頃からでしょうか。「魔性」と呼ばれることを気にしなくなりました。それどころか、むしろ、そう言っていただけることが、「うれしいな」「ありがたいな」「それが私のフック?」と思えるまでになったのです。

「魔性」か「美魔女」か。どちらかひとつを選べと言われたら、今なら、迷わず「魔性」を取る(笑)。

 月日が経つのはあっという間とは言いますが……。

 神奈川県藤沢市で生まれ育ったバレエ好きの少女が、「女優」という新たな顔を与えていただいてから、来年で35年。

 そして、その高岡早紀と二人三脚で歩いてきた「一人の人間・高岡佐紀子」は、いつの間にか、アラウンド・フィフティと呼ばれる年齢になりました。

 高岡早紀。

 高岡佐紀子。

 どちらも私です。

 その私──あるときは女優の、あるときは一人の人間の、そして、あるときは、両者を俯瞰(ふかん)で見ているもう一人の私──が、経験した出来事、見たこと、聞いたこと、感じたこと、そして、幸せを感じる日々のささやかなことに思いをめぐらせてみました。

 ちょっとした毒を入れることで笑って読めるように、という課題が最初に与えられたのですが、私に毒なんてあるかしら。いや、毒しか出なかったらどうしよう!?

 楽しく読んでいただけたら、幸いです。

<第2回に続く>