やりたい仕事をするべきか、安定した仕事をするべきか/大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした④

文芸・カルチャー

公開日:2021/9/7

韓国国内著者累計55万部突破、「BTSおすすめの作家」としても話題のクルベウ氏による『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』(ダイヤモンド社)。
日本でも6万部を超え、「疲れているとき、つらいときに読みたい」「優しい言葉に癒される」と話題になっています。
本書から、いま、大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをしているあなたに届けたい5編を、全5回で紹介します。

大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした
『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』(クルベウ:著、藤田麗子:訳/ダイヤモンド社)

やりたい仕事をするべきか、安定した仕事をするべきか

息子が父に聞いた。

やりたい仕事と安定した仕事、どっちを選ぶべきだろうか。

すると、父は言った。

やりたい仕事をやりなさい。
人生において、やりたいことがあるのは大きな幸せだ。
時が経てばわかるようになるだろう。

年を取るにつれて、
人は自分の好きなものや、やりたいことを
どんどん忘れていってしまう。

やりたいことがあるというのは、
それだけで幸せなことだ。
自分の色で、人生を生きられるチャンスが
やってきたということだよ。

すると息子が言った。

でも、安定した仕事じゃないんだ。
うまくいかないかもしれない。
それで周囲に後れを取って貧乏になったら
やりたい仕事をやっていても
幸せだとは言えないんじゃないかな。

父はこう答えた。
たしかに、そうかもしれない。
でも、人生はおまえが恐れているように
悪いほうにばかり進んでいくわけじゃない。
そうならないように自ら行動するはずだからね。

やりたい仕事をやっていて、経済的に厳しくなったら
安定した仕事を探すために、また努力するはずだ。

おまえは自分の人生が
不幸になっていくのをみすみす放っておくことはない。
だから、不幸な人生を生きていくかもしれないと
今から心配しなくてもいい。

今、必要なことは、
今後の人生で二度とできないかもしれない仕事に
果敢に挑戦することだ。
うまくいくとしても、いかないとしても。

そうすれば、その仕事が
自分に合っているのかどうかがわかり、
うまくやれるかどうかをたしかめることもできる。

やってみたもののイマイチだと思うかもしれないし、
挑戦する前より不幸だと感じることもあるかもしれない。

そのときは辞めればいいんだ。

挑戦がいい方向に向かうこともある。
これまでやってきたどんなことよりも自分を輝かせて、
経済的な豊かさをもたらしてくれて
周囲の人々に認められる人になるように
後押ししてくれるかもしれない。

そうなれば、おまえはその仕事に
ぴったり合っているということだ。
熱心に続けて、願いを成し遂げていけばいい。

どんな結果が出るかは、やってみてはじめてわかる。
前もって心配する必要はない。

やる前から
うまくいかなかったらどうしようと思っても、
その問いには何の意味もないよ。

うまくいかなかったとしても、
どうってことない。大丈夫だ。
もっとうまくやれることを探せばいい。

自分だけのレースを颯爽と駆け抜けていけばいいんだ。

人より人生が遅れる、って?
人生に早い遅いはない。
幸せに生きる人と、そうではない人がいるだけだ。

ただ過ぎていく毎日の中で、
生きる理由が見つからず、
自分が無意味な存在に思えるなら、
早く進むことは重要じゃない。
むしろ立ち止まらなければならない。

一度立ち止まって進む方向について
考え直すべき時期なんだ。

その瞬間は他の人より遅れているように
思えるかもしれないが、
永遠に立ち止まっているわけではない。
正しい方向を見つけ出して、
また力強く歩み出せるはずだ。
そして、幸せになるだろう。

他の人々とは少し方向がちがっていても
他の人々とは速度が少しちがっていても
他の人々とは考え方がちがっても
幸せになるだろう。

・・・

人間の目標は、
人生を自分の色に染めながら歩んでいくことだ。

明日がいっそう待ち遠しくなって
今日がやりがいに満ち溢れ、
心が嬉しくなる瞬間に
たくさん出会いながら生きていくことが
人生の目標だと思う。

だったら、おまえの進む方向は決まっている。
今もこの先もやりたい仕事をやりなさい。

その道が平坦だと言いたいわけじゃない。
どんな道よりも困難が多いかもしれない。
でも、その険しい道を歩むことを哀れだとは思わない。
むしろ立派に見えるだろう。
自分だけの道を歩んでいく姿が。

森の中にはたくさんの木が生えている。
さまざまな種類があり、形もすべてちがう。

おかしなことではないんだ。

ただ、それぞれの姿で存在しているだけだから。

画一的な生き方をしなくても
おまえは落伍者ではなく、逃亡者でもない。
人生の目標に近い道を選びなさい。

それが心に情熱をもたらし
がんばり続けたいと思える人生を
生きられるようにしてくれるだろう。

私が人生でいちばん後悔しているのは
失敗を恐れて、進みたい道を歩む勇気を出せず、
胸の中に抱いていた物語を実現できなかったことだ。

おまえが、胸の中の夢をこの世界で実現して
生きていけるよう願っているよ。

<第5回に続く>

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