『ピンポン』『サクリファイス』ダ・ヴィンチニュース編集部がおすすめしたい“心をアツくするスポーツ本”5選

文芸・カルチャー

更新日:2021/9/5

ダ・ヴィンチニュース編集部推し本バナー

ダ・ヴィンチニュース編集部メンバーが、月ごとのテーマでオススメの書籍をセレクトする、推し本“+”。9月のテーマは、「心をアツくするスポーツ本」です。

セリフなしでも伝わる熱量。踊る理由は「好きだから」『ワンダンス』(珈琲/講談社)

『ワンダンス』(珈琲/講談社)
『ワンダンス』(珈琲/講談社)

 体は嘘をつかない。柔軟性、表現力、リズム感、オーラ、天性的にダンスの上手い人を見ると、一瞬で心も目も奪われる。『ワンダンス』は、ダンスに没頭する女子高生とコンプレックスを抱えた主人公(未経験者)が、高校のダンス部に入部し、切磋琢磨する青春もの。既刊5巻、躍動感がとてつもないのだが、どんなにテクニックに長けていても、ダンスが好きという深度が物を言い、同じ音を耳で受けても「起きる感情」は人それぞれで、どう踊るかはその人にしか表せない。「やりたいと思っている時が一番成長する」という言葉は、何かに熱中している人の心を熱くする。(中川寛子/ダ・ヴィンチニュース副編集長)


そんなに違うの!? きっと試したくなる常識を変えた一足『ナイキシューズ革命“厚底”が世界にかけた魔法』(酒井政人/ポプラ社)

『ナイキシューズ革命“厚底”が世界にかけた魔法』(酒井政人/ポプラ社)
『ナイキシューズ革命“厚底”が世界にかけた魔法』(酒井政人/ポプラ社)

 2017年にナイキが発売した厚底ランニングシューズ。世界記録樹立をも支えた一足が、マラソン界に起こした衝撃を綴ったのが本書だ。2021年現在はこのシューズからより進化したものが販売されているので、どれだけすごいのかを自身で履いて走ってみたくなるはずだ。とにかく、ナイキの革新的なギアにほれ込み、中学・高校の部活で着用してきた私にとって、「ファッションだけじゃない、これこそがナイキ!」という気持ちになれたのは至極痛快だった。(坂西宣輝)


こんなん泣くっきゃないよ。静かなる“燃え”に焼かれる『ピンポン』(松本大洋/小学館)

『ピンポン』(松本大洋/小学館)
『ピンポン』(松本大洋/小学館)

 言わずと知れた超名作卓球スポーツマンガ。紙面からこんなに躍動感にあふれ、息詰まる試合を味わえるなんて、いつ読んでも震えてしまうし、それこそ“没頭”してしまう。静と動の中にある、卓球に打ち込む登場人物たちの努力の爪痕や激情ともいえる感情のうねりを感じて、やったこともないのにフルセットで自分が戦ったみたいだ。突き抜けてて変わり者の星野裕ことペコ、クールで努力型、淡々としている月本誠ことスマイル。軸となる2人の幼なじみとしての関係と成長の結末はもう感無量。周辺も魅力的なキャラでギュウギュウづめで、これがまた何度も泣かせてきて、「少し泣く。」で少しどころではなく泣けてしまうんだなぁ……。(遠藤摩利江)



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タイトルの意味を知る時の驚愕と感動がすごい! 『サクリファイス』(近藤史恵/新潮社)

『サクリファイス』(近藤史恵/新潮社)
『サクリファイス』(近藤史恵/新潮社)

 本書を読んだのは10年近く前のことなのだが、いまだに読んだ時の衝撃が大きく残っている。個人種目でありながら、実はチームで戦う自転車競技のロードレース。チームのエースとそれを支えるアシストたち。アシストはエースの勝利を最優先にレースに参加する。エースはアシストたちのサクリファイス=犠牲を無駄にしないよう、貪欲に勝利を目指す。こんなに残酷で美しいスポーツがあるのか、と震えた。作中で描かれるレースシーンは迫力満点。選手たちの人間ドラマ、サスペンスとしての面白さも満載で、多くの人に勧めてきたシリーズだ。(宗田昌子)


弱気だった「日本の右サイド」が教えてくれること。『リセットする力 「自然と心が強くなる」考え方46』(酒井宏樹/KADOKAWA)

『リセットする力』(酒井宏樹/KADOKAWA)
『リセットする力 「自然と心が強くなる」考え方46』(酒井宏樹/KADOKAWA)

 2018年ロシアW杯に日本代表として出場、先日の東京五輪でもオーバーエイジ枠として招集され、長く日本の右サイドを担ってきた酒井宏樹。2012年夏から活躍の場を海外に移した彼は、恵まれたフィジカルに裏打ちされた力強いプレーとは裏腹に、「弱気で人見知り」だった――。謙虚で優しげな酒井が、自らの弱さといかに向き合ってきたのかを著した1冊は、読み手にとっても発見と学びに満ちている。彼が愛情を公言してきた「千葉県北西部の黄色いクラブ」に、いつか帰還することを願う。やってやれ!(清水大輔 / ダ・ヴィンチニュース編集長)

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