「自分をわかってくれる人がいる」その安心感があれば、人は強くなれる/あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる
更新日:2022/7/20
わかってくれていると思える誰かの存在は、苦しみの中の一筋の光
みなさんもおそらく、今までの人生で苦しい思いをするたびに、何度となく「誰かに自分の気持ちをわかってほしい」と望んできたのではないでしょうか。
たとえば、病気やけがで痛みを抱えたり、思うように体を動かすことができず、辛く情けない思いをしたりしたとき。
痛みや不自由さは変わらなくても、家族でも友だちでも医師でも看護師でも、その気持ちをわかってくれていると思える誰かがいるだけで、辛さが和らぐのを感じませんでしたか?
あるいは、失恋したとき、痛手はすぐにおさまらなくても、その悲しみをわかってくれていると思える誰かがいるだけで、気持ちが楽になりませんでしたか?
本当は子どもに優しくしたいのに、いつもイライラしていて、あるいは子どもが言うことを聞かなくて、つい怒鳴りつけてしまう。
そんなとき、わかってくれていると思える誰かがいるだけで、イライラがおさまり、笑顔を取り戻すことができませんでしたか?
社会人になってからも、なかなか成果があがらないときやトラブルにみまわれたとき、上司が「自分の気持ちや努力をわかってくれている」と感じると、気持ちが落ち着き、仕事へのモチベーションが上がったのではないでしょうか。
このように、「自分の気持ちをわかってくれている」と思える誰かの存在は、特に苦しみの中にいる人にとって大きな支えやエネルギーとなり、ときにはその人の人生を導いていきます。
苦しみという暗闇の中で、わかってくれていると思える誰かの存在が、前を向いて生きていくための、一筋の光となるのです。
わかってくれていると思える誰かがいると、ありのままの自分でいられる
また、自分の気持ちをわかってくれていると思える誰かの存在は、ありのままの自分でいられる強さを与えてくれます。
たとえば、これまでに私たちが関わった患者さんの中には、体にたくさんの管をつけながら、本当に動けなくなるギリギリの瞬間まで仕事をしていた方もいらっしゃいました。
末期のがんになり、ご自身も大変な中で老々介護をし、夫を見送った後で亡くなられた方もいらっしゃいました。
「そんな体で仕事をするのはやめなさい」「夫の介護は施設に任せなさい」という人もいるかもしれませんが、私たちには、その患者さんたちにとって、仕事をすること、夫の介護をすることこそが、ありのままの自分でいられることであり、病気の苦しみの中で生きる支えになっていると、感じられました。
私たちは、仕事や介護にいのちを燃やすお二人を静かに見守り、ときには丁寧に話を聴きました。
やがて、その患者さんたちは、満足しきった穏やかな表情でこの世を旅立たれました。
人それぞれ、大事にしたいことも、望む「ありのまま」の形も異なります。
世間でいいとされていること、大事にするべきだとされていることが、必ずしもその人にとっていいわけではなく、大事なものであるともかぎりません。
そして、親でもパートナーでも友人でも、あるいはペットや先に亡くなった誰かでも、自分の気持ちをわかってくれていると思える存在がいるとき、私たちは安心して、ありのままでいることができます。
私たちが自分らしくいられるのは、誰かがわかってくれるからなのです。
ですから、多くの人は、大変な時間と労力、エネルギーを割いて、自分をわかってくれる人を探そうとします。
人生は、自分を理解してくれる人を探す旅であるといえるかもしれません。