「マンガのネタにするからセックスしてきて」女子高生マンガ家に振り回されるアラサー編集者が、イケメン薬剤師と疑似恋愛!? 『少女マンガはお嫌いですか?』

マンガ・アニメ

2017/11/25

『少女マンガはお嫌いですか?』(森田羊/講談社)

 少女マンガには女性の夢がつまっている。いくつになっても、こんな恋がしたい、こんな甘い台詞を囁かれたいとうっとりする。モテたいと願う男性諸君は、巷に溢れるハウツー本を読み込むのもいいけれど、流行の少女マンガを読み込んでヒーローたちのふるまいを見習ってみると案外うまくいくかもしれない。『少女マンガはお嫌いですか?』(森田羊/講談社)は、これを実践して検証する男女を描いた疑似恋愛ラブコメだ。

 28歳のハレはマンガ編集者。大好きな少女マンガのどっぷりつかれる仕事はまさに天職……のはずなのだが、現役女子高生ながらも雑誌の看板をつとめるマンガ家・山田えみゅに無茶な難題をつきつけられて四方八方とびまわる日々。創作意欲をかきたてるイケメンを探したり、彼女が「大人の恋愛」を描くために実地で見せろと迫られたり。そんなこと言われても彼氏もいないハレにできることなどたかが知れているのだが、えみゅにマンガを描いてもらえなければ担当を降ろされ、へたすれば異動の危機。これっていわゆるやりがい搾取というやつなのでは……というかまごうことなきパワハラなのでは……と読んでいる身としてはハラハラするが、仕事への情熱を燃やすハレはえみゅの言うとおりに指令をこなしていく。その最たるミッションが、少女マンガ嫌いの薬剤師・沢木との疑似恋愛だ。



 まさにえみゅの理想のイケメン・沢木だが、少女マンガなんてヒステリックな幻想だと斬り捨てるし、クールな上から目線でハレを小馬鹿にしてかかる。それでも仕事のためと食い下がったハレは、取材を引き受けてもらうかわりに、少女マンガ的作法で女を落とす方法を伝授することに。ところが「そんなに言うなら少女マンガの力とやらを見せてごらん」的な沢木の本意は、高校卒業以来会うこともなく片想いを続けている女性に振り向いてほしいという少女マンガ顔負けのピュアな恋心にあったから大変。その一途さにまんまとキュンとさせられたハレは、沢木の恋を成就させようと決めるのだ。おいおい、面倒な仕事をまた背負い込んでやしないかい……と心配になるものの、えみゅと沢木に翻弄されつつ、みずから少女マンガ的展開に突っこんでいく一直線な彼女の姿に、こちらもどんどん巻き込まれてしまうのだ。

 ハレは言う。「私ら女子は現実で転んだら手を差し伸べてくれるイケメンもやさしく諭してくれるロマンスグレーのオヤジもいないことくらい知ってます」「だからみんな自力で立ち上がっているんですよ」。日々の潤いであるはずの少女マンガのせいで社畜街道まっしぐらのハレは本末転倒のようにもみえるが、その情熱は少しずつニヒルな沢木の心も動かしていく。


 しかしあくまで沢木との関係は、取材の一環。えみゅの無理難題はエスカレートしていき「セックスして、その証拠にディープキスを目の前で見せろ」とまでのたまう始末。さすがのハレも「編集者はマンガ家の奴隷じゃない!」と拳をふるい、彼女を出し抜こうと決めるのだが、そこは人気マンガ家。えみゅのほうが一枚上手。沢木の想い人・百田さんまで巻き込んで、迷走の三角関係に突入していく事態の行方やいかに。文字どおりオトナの少女マンガたる本作、2巻の発売を待ちたい。

文=立花もも

(C)森田羊/講談社