祭りの後に寂しくなるのってなぜだろう? ―ブンガク!【第17回】―
公開日:2013/12/27
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~ブンガク部~
「そういえば先輩たち遅いですね。どこまで買出しに言ったんですかね?」
「近くの商店街だから、そんなに時間はかからないとは思うんだけど……うん、確かに遅いね」
「もう、せっかく、この前の打ち上げをしようということになったのに……」
「まあ、ゆっくりと待とうよ。どうせ、もう冬休みなんだしさ」
「まあ、そうですね」
「お待たせ~! お菓子、買出ししてきたよ!」
「おい、僕ばかり持たせるなよ! ジュース類はペットボトルだから重いんだよ」
「ああ、そうか……だから、やけに帰り顔が険しそうだったのか、大丈夫か?」
「気づいていたならヘルプくらいしてくれよ、もう~」
「なに、大丈夫さ……たとえ離れていても俺とお前はいつでも心はコネクトしているぜ」
「いやいや、変なこというな、てか何の話だよ!? たとえ『<ふうせんかずら>の人格入れ替わり(※1)』が起きても君と僕じゃあ、それはありえないから」
<ふうせんかずら>の人格入れ替わり(※1)
『ココロコネクト』(庵田定夏/KADOKAWA/エンターブレイン)
文研部に所属の八重樫太一・永瀬伊織・稲葉姫子・桐山唯・青木義文の五人は、青木と唯の二人をはじめ、奇妙な現象に出くわした。それは “人格入れ替わり”の現象だった。それは更に部員全員に広まり、彼らの日常を変えていく。そんな平穏が崩れたその時、五人の関係は形を変え始め、心の連鎖は彼らの秘めた心の傷をも浮かび上がらせていく。<ふうせんかずら>の人格入れ替わりとは作中で登場人物たちに降りかかる奇妙な現象のこと。
「ははは、冗談だって冗談!」
「はあ……さらに疲れた……」
「お帰りなさい、先輩たち。遅かったですけど大丈夫ですか?」
「ああ、唯ちゃん、ちょっと隣町まで行って来ただけだし、大丈夫、大丈夫!」
「なぜに隣町まで!?」
「ああ、ストレートに道に迷いに迷ってさ!」
「そこ自信満々に言うところ!?」
「まあ、いいじゃない……そうだ、飲み物でも並べるか」
「あ、なら僕も手伝いますよ」
「お、サンキュー、直斗君!」
「では、そちらはよろしくお願いしますね」
「……やあ、そっちの準備はどうだい、順調?」
「あ、先生。はい、順調です。あとは三年生の先輩方が来れば準備完了です!」
「そう、それはよかった。まあ、今回は学園祭も上手くいったしね、今日はパーッと羽目を外して、何て言うか、学生らしくこう楽しくさ!」
「そうですね。私もそう思います」
「ああ、これはついでに聞きたいんだけど、この頃、僕が使う『パソコンなどの電子器具が良く壊れるんだけどこれって特異体質(※2)』かな?」
パソコンなどの電子器具が良く壊れるんだけどこれって特異体質(※2)
『RDG レッドデータガール』(荻原規子/KADOKAWA/角川書店)
世界遺産に認定された熊野古道、玉倉山にある玉倉神社の少女・鈴原泉水子はある理由で中学三年まで麓の中学と家の往復だけの生活を送っていたが、突然、進学の時期になると幼なじみの相楽深行とともに東京の鳳城学園へ入学する事となってしまう。互いに反発する二人だが、修学旅行先で姫神と呼ばれる謎の存在と出くし、二人は恐ろしい事件に巻き込まれてく。冒頭セリフは主人公・鈴原泉水子の電子機器を壊してしまう特異体質のことを指す。
「先生はどこの鈴原泉水子ですか!?」
「さすがは唯ちゃん話が通じるね! じゃあ、僕は職員室にいるからね。今日は楽しんで……あ、でも羽目だけは外し過ぎないようにね」
「大丈夫です、分かっています!」
「うん、じゃあね~」
「はーい! さてと、あとは……あ、直斗君!」
「え、なに?」
「そういえば先輩はいつぐらいに来るの? 今川先輩はもうすぐ来るみたいだけど、中島先輩から何か聞いてない?」
「そうだな、兄さんからは特に何も、あ、でも……」
「でも?」
「用事を済ませたら打ち上げには参加するって言っていたからさ。まあ、兄さんが忙しそうにしているのはいつもの事だし、大丈夫だとは思うよ」
「そっか、なら大丈夫ですね」
「うん、じゃあ、準備に戻るね」
「さてと、じゃあ私も何か手伝おうかな……」
「おはよう、唯ちゃん。どう、打ち上げは進んでる?」
「あ、おはようございます、先輩。たった今、いらしたんですか?」
「うん、そうだよ。それと優斗君から、さっき連絡があってもうすぐ来るってさ」
「そうですか……それなら、みんな揃って打ち上げができますね。よかった」
「だね、文化祭を終えてこんな風に打ち上げをできるのもみんなでがんばったからだものね」
「はい、先輩もご苦労様です!」
「フフッ、それほどでもないよ」
「あ、唯ちゃん準備できたよ。それと兄さんも来たよ」
「……あ、はーい!」
「それじゃあ、唯ちゃん、行こう」
「そうですね。では、こちらへ、どうぞ先輩」
「うん、ありがとね、唯ちゃん」
「……あ、二人とも来たね」
「やあ、優斗君……これでみんな揃ったみたいだね」
「……二人とも来て、兄さんがいい物を買ってきてくれたよ」
「え、なに、いい物? あ、これって……ケーキ!?」
「うん、そうケーキだよ。兄さんが打ち上げのお祝いにって、買ってきてくれたんだよ」
「わぁ、すごい何だかとても豪華ですね」
「うん。優斗君こういうときは気が利くね」
「いいや、それほどでもないよ。まあ、冬の時期だからね。こういうのもたまには良いのかなって思ってさ」
「美味そう~、早く食べましょうよ!!」
「ああ、君はそういうところがはしたないんだから……」
「じゃあ、そろそろ打ち上げを始めない、兄さん?」
「そうだね。じゃあ、えーと、まずは……僕から一言! この度、いろいろありながらも文化祭を終えて、ようやくブンガク部が部として出来上がった事を感謝します。それとこのブンガク部とその皆に今日という日を祝して乾杯したいと思います。それではみんな、お疲れ様でした……では、乾杯~!!」
「乾杯~!!!」
「今日はみんなで楽しもう~!」
「オーッ!!!」
「ふふ、これからも楽しい日々が続きそうですね」
……つづく
次回予告
「こんにちは佐藤唯です!」
「同じくこんにちは中島直斗です!」
「打ち上げ、楽しかったですね、直斗君」
「そうだね、また来年もやりたいね」
「はい、そのときはまた楽しみましょうね。では……」
「次回の『ブンガク!』もお楽しみに!」