堺正章、芸歴70年にして初著書! 激動の芸能界を生き抜く国民的エンターテイナーが本音で語る人生の教科書【書評】

文芸・カルチャー

更新日:2025/2/14

最高の二番手 僕がずっと大切にしてきたこと堺正章/飛鳥新社

 歌手、俳優、司会者、パーソナリティーなどマルチな才能を発揮し、国民的エンターテイナーとして芸能界の第一線に立ち続けている「マチャアキ」こと堺正章さん。このほど自身のこれまでをふりかえり、さまざまな思いを語り下ろしたエッセイ『最高の二番手 僕がずっと大切にしてきたこと』(飛鳥新社)を出版。「自分の過去や胸中の思いなどを世間様にあえて明かすことが好きではなかった」という堺さんにとって、実は本書が初めての著書となる。「老害」ではなく「老益」を目指すべく、時代や社会が大きく変革する中で「これまでの自身の経験が誰かのヒントになるならば」と書かれた一冊だ。

 堺さんの芸歴は長い。デビューは5歳、名脇役だった父・堺駿二さんに連れられて撮影所に行った際、子役として映画に出演したのがきっかけだった。その後、16歳のときにGS(グループ・サウンズ)ブームの礎を築いたバンド「ザ・スパイダース」に加入したことで本格的に芸能界デビュー。父とは違う「歌手」の道を選んだ堺さんは、バンド解散後はソロ歌手となり、「さらば恋人」で日本レコード大賞大衆賞を受賞した。一方、俳優や司会者としても高い人気を獲得、さらには昭和の正月を彩った「新春かくし芸大会」で毎年玄人はだしの個人芸を披露……マルチなエンターテイナーとして70年近く、老若男女を問わず人気を集めてきた。

 父のこと、下積み時代のこと、ザ・スパイダース全盛期のこと、『時間ですよ』や『西遊記』といったドラマの話、かくし芸大会の苦労、家族への思い……。本書にはこれまでメディアで語られることのなかった本音が赤裸々に綴られているが、とはいえありきたりの「芸能人の回想録」なわけではない。もちろん時代の勢いを感じる現場のエピソードも面白いのだが、なにより全編から伝わってくる堺さん流の「人生訓」が心に残るのだ。

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「同じ場所で太く長く生きていこうと思ったら、『最高の二番手』になるべきだ」

「(ピンチに際して)必要なのは、『自分らしさってなんだ?』と普段から自問自答しておくことだ。そうすれば、自分にとっての切り札を見つけることができる」

「時代の雰囲気をうまく抽出し、自分の好きなテイストとミックスしていかなければ、センスというものはあっという間に古臭くなってしまうのだ」

 コンプライアンス無視の昭和、そして平成、令和へ――時代や社会だけでなく、人々の欲求や嗜好も大きく変化する中で、「大衆」の受け皿であるテレビを主戦場に活躍し続けることは簡単なことではない。だからこそ、よりシビアに、客観的に、時代や自分を見つめてきた堺さん。その結果、しなやかに時代にフィットし、こうした「人生訓」ともいうべき信念も持ち得たのだろう。

 過去の自分が「いまをどう生きるか?」と考え抜いた答えは、そのまま「これからをどう生きるか?」にもつながっていく。現代社会に生きる私たちにも、大いなるヒントになってくれそうな一冊だ。

文=荒井理恵

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