作家・原田マハ「SNSでの炎上は現代的な悲劇」。それでも言葉は「とてもありがたいギフト」と信じられる理由《インタビュー》

文芸・カルチャー

公開日:2025/1/30

FORTUNE BOOK 明日につながる120の言葉原田マハ/徳間書店

本日は、お日柄もよく』や『楽園のカンヴァス』などの人気作家・原田マハさんの新刊『FORTUNE BOOK 明日につながる120の言葉』(徳間書店)は、ランダムに開いたページに書かれたメッセージが前を向く力を与えてくれるうれしい一冊だ。書き下ろされた言葉は全部で120。もともとは原田さんが発起人をつとめる食のセレクトショップ「YOLOs(ヨロズ)」で販売している「こと葉」(※フォーチュンクッキー)のための言葉をまとめたものだという。「言葉」というものの取り扱いが難しくなっているいま、原田さんに「言葉について」お話をお聞きした。

※運勢が書かれた紙片(おみくじ的なもの)が入ったお菓子のこと。アメリカやカナダの中華料理店で食後に出されることが多い。

「シンプルだけど力強い言葉」を集めた『FORTUNE BOOK』

原田マハさん(C)ZIGEN

――『FORTUNE BOOK』には、読んでいて心にしみる言葉がたくさんありました。これらの言葉はどんなところから生まれたんでしょう?

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原田マハさん(以下、原田):机にかじりついて悩んで書くのではなく、日々、つれづれなるままに思いついたものをノートに書いてみたり、忘れないように自分宛にメールしたりしながらためていった言葉たちですが、なんとなく「励ましの言葉」であることを意識しました。手にとってくださる方の多くはいつも私の本を読んでくださっている方でしょうし、そんなみなさんが大事な人に声をかけてあげたいときに、この本の言葉を贈っていただくこともできると思ったので、多くの人に応える「簡単だけど力強い言葉」を目指しました。書きながらすごく感じたのは、こうした言葉は自分に対する励ましでもあったこと。やっぱりしんどいとかサボりたいとか、いろいろネガティブな面も含めて人間ですから、基本的には全肯定しています。

――日頃から何かピンときた言葉みたいなものを集めていらっしゃったりしますか?

原田:ネットのニュースや新聞をすごく読むんですが、昔から新聞のスクラップをやっていますね。ネットで何かを見つけたときはスマホで撮ったり、ちょっとした言葉が響いたときはメモをとったり。言葉に関わる仕事をしているからっていうのもあるかもしれませんけど、心に残る言葉には敏感で大事にもしていますね。

――スクラップブックを作っていらっしゃるんですね!

原田:そうですね。たとえばここにも一冊ありますけど、この中で一番古いのは1998年の記事かな。脚本家の大石静さんのコラムですね。2012年にムンクの「叫び」が96億円で落札された記事もあるし、同じ年の記事ですが、スペインで素人のおばあちゃんが教会の絵画修復を失敗した記事もありますね。このニュースは大好きでいつか小説のネタになるんじゃないかと思ったりしています。

――「これはとっておこう」とピンとくるポイントはあるのでしょうか?

原田:言葉の場合は特に「真理」をついた感じのものですね。シンプルなんだけど、とても力強くて「言えてるよね」って感じというか。実際、『FORTUNE BOOK』の中にある言葉も単純な言葉が多いんです。たとえば「やまない雨はない」とか、当たり前なんですけど、でも意外とそういう普遍的な真理っていうのが響くんですよね。「雨降って地かたまる」とか、日本のことわざには自然に寄せた言葉が昔からありますが、自然の事象はたぶん何百年も前から変わっていなくて、そういう当たり前の真理に自分の人生を寄り添わせるように言葉を見つけるのは、人間の知恵だとも思うんです。人生には不条理もあるけれど、たとえば「冬の次には春が来る」ことに勇気を得てきたわけで、それって単純ではあるけれど、力を得ることができるのが人間なんだと思うと、「人間ってかわいい存在だな」って思います。

――かつてNYで未来に不安を抱いていた原田さんの背中を押してくれたのがフォーチュンクッキーの「It's alright」という言葉だったそうですね。すごくシンプルですけど、確かに自分を肯定してくれて、背中を押してくれる言葉ですね。

原田:その人の心の状況は千差万別なわけですが、この言葉のように、今振り返ってみると「あの時の一言が背中を押した」ことってやっぱりあるんだと思います。そういうのは誰にでもあるんだろうし、だから「おみくじ」みたいなものも成立するんでしょう。ダメ押しの一言というか、その人のその時のそのシチュエーションに当てはまる普遍的な言葉が必要なんじゃないかなって思いがあって、この『FORTUNE BOOK』になりました。ただ「おみくじ」と違ってこの本には「凶」はないですけどね。

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