阿川佐和子、古稀を越えても「我が青春は、今なり」。歳を取るのは怖くない! 勇気と元気をもらえるエッセイ『老人初心者の青春』【書評】
PR 公開日:2025/2/7

テレビやラジオ、『週刊文春』での対談連載など、さまざまなメディアで活躍されお茶の間人気も高いエッセイスト・作家の阿川佐和子さん。このほど雑誌『婦人公論』で連載中のエッセイをまとめた人気シリーズ第4弾『老人初心者の青春』(中央公論新社)を上梓された。
タイトルを見て「ん? 老人? たしかに阿川さんも60代でいらっしゃるからな」と思ったが、1953年生まれの阿川さんは現在71歳。ずっと変わらぬ笑顔とテンションなので、もう古稀を越えられていると知ってちょっとびっくりしてしまう。本書に収録されているのは、2021年夏から2024年夏にかけて執筆されたエッセイなので、実際には阿川さんの67歳から70歳という、いわゆる「前期高齢者」になってからの3年間。とはいえ本書で知る阿川さんは「お若く見えますね」どころか、感性も行動力も「若い」。もちろん忍び寄る「老い」の現実も書かれているが、あっけらかんと正直、ユーモアをまじえた自虐モードで、ちっとも暗い気持ちにならないのだ。
話題はベランダにやってくるようになったスズメに「すず子」と名付けて愛でたこと、自分で髪を切ったこと、メイクに四苦八苦したこと、ふとした瞬間に思い出す親のこと、趣味のゴルフのあれこれ、富士山を愛でること…日常の発見や失敗談、さらには愚痴などさまざま。ラジオの共演者であるふかわりょうさんに「膝カックン」を仕掛けた話など笑えるエピソードもあって、阿川さんの語りかけるような名調子に「わはは」と笑いながら気楽に読み進められる。
ちなみにエッセイの一部が執筆された2021年といえば、ちょうど世の中はコロナによる自粛生活が重なる時期であり、続く「緊急事態宣言」で社会全体がどんよりした空気に満ちていたのを思い出すが、阿川さんのエッセイにはその暗さをあまり感じない。あとがきに阿川さんは「三年に及ぶコロナの社会的身体的、精神的損失はたしかに甚大であったが、いいことがなかったわけでもない。蟄居生活を余儀なくされたおかげで、日常の小さな喜びを見つける癖がついた」と書かれているが、たしかに本書はそうした視点の集大成。もちろんコロナの日常も描いてはいるのだが、ワクチン接種会場のスタッフを「地球を救うためにワクチン星から派遣されてきた黄色い妖精」にみたてて感謝したり、無観客となった東京オリンピックをテレビで熱心に応援したり…不安や怒りといったマイナスの感情に注目するのではなく、その中で常に何かを「発見する」前向きさがあるから、暗さを感じないのだろう。
「歳を取ると面白いことは何もなくなる」という人には、「そうでもないんじゃないですか? まだ面白いこと、知らないこと、初めて出会って興奮することは、いくらでもある気がする」「我が青春は、今なり」と密かに反論したくなるという阿川さん。そうそう、そうなんです。「人生100年時代」といわれるいま、そんな前向きさほど勇気をくれることはないのです、と下の世代からも大いに言わせていただきたい。阿川さんには「おばあちゃん」という呼び方は似合わないし、やっぱり「阿川さん」は「阿川さん」。これからも本書のように歳を取るのは怖くない&悪くないと思わせてくれるエッセイをお願いします!
文=荒井理恵