本当に赤ずきんのおばあちゃんを丸のみできると思う? 悪役・おおかみが異議申し立て! 6つのおとぎ話にツッコミを入れまくる検証絵本

文芸・カルチャー

PR 公開日:2025/2/17

おおわる おおかみ おとぎ話をかがくする きみのだいすきなおとぎ話は、真実か否かキャサリン・カウソーン:文、サラ・オギルヴィー:絵、万木森玲:訳、原口るみ(ガリレオ工房):監修/岩崎書店

 おとぎ話において、おおかみというのは、とかく悪者にされやすい。たとえば『3びきの子ぶた』では、子ぶた三兄弟の家を次々と壊して侵入しようとするし、『赤ずきん』ではおばあちゃんを丸のみにする。でも、ちょっと待って。どんなに思いきり息を吸い込んだところで、藁で作った家を吹き飛ばすことなんてできないし、人間を丸のみにするなんてこともできるはずがない。おとぎ話は、悪者を退治するラストを演出するために、いったいどんな「つくりごと」を描いているのか? 科学的に、論理的に検証しようとするのが絵本『おおわる おおかみ おとぎ話をかがくする きみのだいすきなおとぎ話は、真実か否か』(キャサリン・カウソーン:文、サラ・オギルヴィー:絵、万木森玲:訳、原口るみ(ガリレオ工房):監修/岩崎書店)だ。

 検証を進めるのは、あちこちのおとぎ話世界で悪行の限りを尽くす役まわりが多い、「おおわる(大悪)」のおおかみ。「だれもがかわいい子ぶたを信じて、おおかみの話をきかない」「ばかばかしい非科学的な話」だと、冒頭から『3びきの子ぶた』にご立腹である。

 面白いのが、そもそもおおかみの唇は人間と違って、丸めることができないということだ。つまり、空気の流れを自分で生み出すことなどできない。吹き飛ばすどころか、そもそも「吹く」ということが困難らしい。第一、藁で作った家は、冬は暖かく夏は涼しい優れもので、束にして積み上げたものを吐息だけでどうにかできるはずがない。例外的にできる動物がいることはいるのだが……という、その豆知識は本書を読んでのお楽しみ。

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『シンデレラ』からは、「本当にガラスの靴で踊ることができるのか? っていうか水を吸収しない素材だから汗でべとべとになってすっころぶぞ! くさいぞ!」なんて検証や「そもそも王国でただひとりサイズの合う靴って、シンデレラはどんな足の形してたの?」という疑問から、人間と足のかたちが異なる動物の紹介まで、読んでいるとけっこう勉強になって面白い。

 笑ったのは「わらの家が吹き飛ばせるのに、『ヘンゼルとグレーテル』のおかしの家が、ふきっさらしの野外で大丈夫なわけないだろう。雨が降ったら一発でだめになるぞ!」というツッコミ。それから『赤ずきん』の、「おおかみはふつう人間には近づかないし、食べるのはひづめを持つ大きな動物だけだよ。ヘラジカのきぐるみを着て、おばあさんと赤ずきんがパーティーしてたらわからないけどね!」というおちゃめな物言い。

 どんなに理屈に合わない情景が描かれていても、おとぎ話というだけで「まあ、そういうものでしょ」とスルーしていたし、いちいち現実的に訂正するのは無粋なんじゃないかと思っていたけれど、こんなふうにさらなる知識を得られて、好奇心を刺激されるとは思わなかった。もっとほかの作品の検証もしてほしい!

 文字が多めの絵本なので幼児が一人で読むのは難しいが、ちょっと斜にかまえたくなる年頃の子や、おとぎ話を信じる心を忘れた大人たちにもうってつけ。そして夢中になっているうちに、むしろおとぎ話の新たな魅力に取りつかれて「そういえばあの物語はどんな内容だっただろう?」と読みたくもなってしまうはずだ。

文=立花もも

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