大木亜希子、“元アイドル“の肩書きは「なんとも思っていない」。小説家として生きていく覚悟を決めるまで【インタビュー】
公開日:2025/3/8

「元アイドル」の肩書きが「嫌でした」と明かすのは、アイドルグループ「SDN48」の元メンバーで、現在は小説家として活動する大木亜希子さんだ。10代で女優デビューし、20代でアイドル活動。グループ解散後は、会社員となってWebメディアの運営に携わり、その後フリーランスのライターとして独立した。現在は書き上げた私小説が実写映画化するなど、小説家として創作に打ち込む日々を送っている。 多様なキャリアを歩んできた彼女だが、「元アイドル」という肩書きへの思いが変化し、「小説家として生きていく覚悟」を持つまでには、さまざまな葛藤があった。そんな彼女が、これまでの経験や思いを重ねながら書き上げたのが、新作『マイ・ディア・キッチン』(文藝春秋)だ。

女性が抱える「生きづらさ」を伝えたい
――まずは本作の執筆の動機を伺わせてください。ご自身のインスタグラムで「当時、私は『シナプス』という小説に力を注いだ後で、これから作家として生きていくのか、違う道を生きていくのか、何も分からない状況でした」と書かれていました。
大木:まず1作目と2作目について説明させていただくと、1作目の『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)では、アイドルのセカンドキャリアについて、「元アイドル」の当事者として書かせていただきました。2作目の『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(祥伝社)も、その流れで、自身の経験をもとに執筆しました。
ここまでは自分のことを「作家」とは認識していなかったんですけど、そんななかで、講談社さんからお話をいただいて、前作の小説『シナプス』を書いたんです。週刊誌の女性記者がスキャンダルの世界に身を投じていくセンシティブな物語で、物凄く集中力を要する作品でしたが、書き終えたとき、大きな達成感がありました。一方で、「でも私、このまま小説家と名乗っていいのかな?」という迷いがありました。私は有名な新人文学賞を受賞して小説を書くようになったわけでもないですし、あったとしても、それだけで作家として生きていけるわけではありません。
だから、当初は全く違う職業に就くことも本気で考えていました。一方で、『シナプス』で伝えきれなかった女性特有の生きづらさを、まだ十分に表現しきれていないというもどかしさも感じていたんです。そんなとき、文藝春秋さんからお声掛けいただいて、その伝えきれなかった思いを届けたいと考えて、本作を執筆することになりました。
――本作の主人公・白石葉は、元料理人の主婦。夫・英治から金銭、交友関係、食事、体型に至るまで徹底的に管理されるモラハラを受けていて、彼女が彼から逃げ出すことから物語は始まります。街の小さなレストランを舞台にし、「食」がテーマの1つになっていますね。
大木:「食」は私にとって大きなテーマなんです。アイドル時代は身体のラインが出やすい衣装を着ることも多かったので必然的に体重管理が必須でしたし、10代で女優として活動をしていた頃にも、テレビドラマや映画などのオーディションを受ける前は学校が終わってから区民プールで泳ぎ、ブロッコリー1つしか食べないと自ら律し、過度な食事制限をしていたこともあります。
アイドルを辞めた後、会社員として働いていた時期も慣れない記者業に対するストレスでめちゃくちゃな食生活を送って、20kgほど体重が増えてしまったことがありました。そんなとき、家族がすごく心配してくれて、食生活を見直すうちに、精神的にも安定していった経験があったんです。その経験から、「食べることさえ間違えなければ、人生を踏み外さないんだ」と気付きました。だから作品を通して、食事の大切さを伝えたいと思ったんです。
