「こんなの『ももたろう』じゃないよ~」読者は泣く!? 人気絵本作家・たなかひかるの新作は「※はじめて読む桃太郎として与えないでください※」《インタビュー》

文芸・カルチャー

更新日:2025/3/10

 お笑い芸人、ギャグ漫画家、そして絵本作家。数々の顔を持つたなかひかるの新作絵本がポプラ社より発売された。そのタイトルはなんと『ももたろう』。既存の童話『桃太郎』ありきの作品だが、帯には「はじめて読む桃太郎として与えないでください」と書かれている。

『ぱんつさん』『ねこいる!』『すしん』『そそそそ』に続く、「たなかひかるの頭が良くならない絵本」シリーズ第5弾。「一度、桃太郎を全力で壊してみたかった」と語るたなかに、その異色作について聞いてみた。

担当に言われた「これは一発目じゃないですね」

――どういった経緯で『ももたろう』を出すことになったのでしょうか?

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たなかひかるさん(以下、たなか):ピン芸人として活動していた頃に似たアイデアのネタをやっていたんです。あるあるをドンドン言っていくタイプのネタってあるじゃないですか? そのネタもフリップを使って「あるある」って始めるんですけど、実際は「ボクサーあるあるという文字にタイヤをつけると物が運べます」みたいな感じで全くあるあるを言わないっていうネタでした。

――すごいですね(笑)

たなか:“タイヤがついたボクサーあるある” に“野球部あるある”をのせて工場に運んで粉々に溶かし、それを型に流し込んで“水泳部あるある”という物体を作ります。そしてその“水泳部あるある”で今度は···という感じです。これを絵本で読んでもらえたら面白いかもしれないと思ったんです。

――かなり思い切った試みの絵本ですよね。

たなか:実は8年くらい前にポプラ社さんから初めて絵本を出すお話を頂いた時に、このアイデアの原型を提出したんですよ。そしたら「これは一発目じゃないですね」という言葉を頂き···時を経て「そろそろ行きますか」と(笑)。

――なぜ「桃太郎」を題材にしたのでしょうか?

たなか:やっぱり誰もが知っている作品でイメージしやすいからですね。僕もふくめNSC(吉本興業のお笑い養成所)出たての人たちは、桃太郎みたいにメジャーな作品を題材に使うことが多かったように思います。説明せずにお客さんがストーリーをイメージしてくれるから壊しやすい。あとは、漫☆画太郎先生の影響もありますね。桃太郎を題材にした作品があるんですけど(編集部注※『ももたろう』(ガタロー☆マン/誠文堂新光社))、もう本当に画太郎先生らしい潔い壊し方をなさっていて、初めて読んだとき膝から崩れ落ちましたもん。だから僕は僕なりに、一度全力で桃太郎を壊してみたかった。

――ここまで飛んだアイデアを絵本で実現させたことがすごいと思います。

たなか:それで言ったら僕よりも許可したポプラ社さんの度量の方がすごいと思います(笑)。

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