「大きいのに泣いてる」周囲よりも大きい子どもへの心無い言葉。自信を失いかけた少女が「ありのままの自分を愛する」ことを知る絵本【書評】
PR 公開日:2025/4/4

自分の容姿にコンプレックスを感じ始めたのは、いつ頃からだろう。幼い頃は、自分が好きなファッションを好きなように着て、それで満足だった。しかし、気がつけば、「自分の体型にこの服って変なのかな」とか「他の子と比べて浮いてるかな」みたいな不安がよぎるようになって、どんどん自信がなくなっていった。ときに大人の「何その格好」という、悪気がない失笑にひどく傷ついたりした。そんな当時の自分に、読ませたい絵本がある。
ワシュティ・ハリソン著の『わたしはBIG! ありのままで、かんぺき』(ポプラ社)は、2024年にアメリカで権威ある絵本の賞であるコルデコット賞を受賞した話題作だ。黒人女性がこの賞を取ったのは初めてである。日本語版はジェーン・スーさんが翻訳している。
物語の主人公は、おおらかで想像力豊かな1人の少女だ。よく食べて、よく学び、気遣いだってできる。そんな彼女をみて、周りの大人たちは「なんておおきなおんなのこなの!」と嬉しそうに言っていた。彼女はその言葉をそのまま受け取り、すくすくと成長していった。

しかし、あるとき様子が変わる。公園の遊具に体がはまって動けなくなってしまった少女は、周りから心無い言葉を投げかけられるのだ。

彼女は、「大きい自分」を嘲笑されたり叱責されたりしたことで、急に自信がなくなってしまった。
のびのびと楽しそうに暮らしていた少女はいなくなり、どこにいても肩身を狭そうに、迷惑をかけないように、窮屈そうにしている少女になってしまったのだ。
多感な時期に、周りからひどい言葉をかけられるのはつらいものだ。口にした本人に悪意がなく、むしろ善意のつもりで発せられた言葉によって傷つけられることもある。そんな他人からかけられた言葉が刺さって自信がなくなってしまった、という経験をした人は多くいるだろう。

両面いっぱいに横たわる少女の姿は、とても苦しそうで胸が痛くなる。しかし、彼女はそこから、今まで周囲にかけられてきた言葉をたくさん吐き出し、見つめ直す。そして自分がかけられてつらかった言葉を「これが私を傷つけたの」と口にした相手に返すのだ。

最後には、言われて嬉しかった言葉に囲まれながら、自分の居場所を作り上げた彼女は、自分は「ありのままで完璧」だということに気づくのだった。
著者のワシュティ・ハリソンも、同じく幼少期は「自分の年齢にしては大きすぎる」女の子で、物語の主人公のように遊具から抜け出せなくなってしまったという。そして翻訳者のジェーン・スーもまた「体が大きな幼児」で、小学2年生の通信簿に書かれた言葉が忘れられないのだそう。あとがきには、少女の気持ちがわかる2人の女性からのあたたかな言葉が記されている。今「自分が他の子とは違う」苦しみに苛まれている子どもたちはもちろん、まだ幼少期の傷が癒えていない大人たちも救われるようなメッセージなので、ぜひあとがきまで読んでほしい。
私にも息子がいて、私にとって息子はまさに「ありのままで完璧」だ。毎日、私や夫、祖父母や親しい友人が息子に対して、たくさんの愛ある言葉を投げかけている。しかし、きっと息子も少しずつ社会へと接していくうちに、心無い言葉を投げつけられてしまう日が来るだろう。そんなときに、その言葉のせいで彼が自分を否定してしまわないように、そんなときこそ私たちの言葉を思い出してくれるように、この絵本を何度でも読んであげたいと思う。
文=園田もなか