NHK夜ドラ「あおぞらビール」の原作!小説家・森沢明夫の野遊び体験を綴った、抱腹絶倒のエッセイ集が新装版になって登場【書評】
PR 公開日:2025/6/16
NHKの連続ドラマといえば「朝ドラ」が有名だが、実は1日の終わりのほっと一息タイムに「夜ドラ」(月~木 22:45~)がある。朝ドラのように半年ではなく5週や8週で番組が切り替わるのだが、2025年6月16日から始まるのは新ドラマ「あおぞらビール」。主演・窪塚愛流をはじめ、藤岡真威人、豊嶋花、南出凌嘉、佐藤江梨子ら人気俳優が出演する。「川や山でとれた自然の恵みやご当地グルメを、青空の下で冷えたビールと一緒に楽しむアウトドア・ドラマ」とのことで、なんだかドラマを見ながら自分もプシュッとやってしてしまいそう……。
実はこのドラマには原作がある。小説家の森沢明夫さんによる青春野遊びエッセイ集『あおぞらビール』とその続編『ゆうぞらビール』(いずれも双葉文庫)だ。主に学生時代の森沢さんの野遊び体験(川遊び、海遊び、野良キャンプ、釣り、ツーリング…とにかく放浪型アウトドア体験いろいろ)を赤裸々に綴った人気シリーズで、ドラマでは原作のキャラクターやエピソードに加え、ドラマオリジナルのユニークな人たちとの出会いがもたらす面白エピソードが展開されていくという。このほどドラマ化を受けて、原作の2作品共に新装版が登場したので未体験の方は要チェック。なにせ本書は「笑い転げて、電車の中では絶対に読めない!」と長くファンに絶賛されてきた抱腹絶倒のシリーズなのだ(おそらくNHKではドラマ化しにくい笑える話も多数アリ)。


エッセイの主人公はもちろん若き日の森沢さん。思い立ったらテントをかついで日本中をバイクで旅し、夏になれば(夏でなくとも)海へ川へと出かけていって気持ちよさそうなら水に飛び込み、時には地元の子どもと戯れおっちゃんと酒盛りし…いろいろあっても絶対忘れないのは冷えたビール! 時には釣った魚などツマミもその場で調達し、さらにビール!そして酒!(ちなみに寝るのはその場に張ったテントだから酔っ払っても安心なのだ)。
そんな自由すぎるアウトドアライフも楽しいのだが、さらに面白いのは珍エピソードの数々。アブの大群から必死で逃げたり、通りすがりの女性にあられもない姿を見られて焦ったり、いい広場だと思ってキャンプしたら地元の老人たちと二日酔いでラジオ体操をやるはめになったり(目覚めると人の家の庭だったこともあった)、ユースホステルやバイカーの宿でおかしな体験をしたり、防波堤に寝転んでほろ酔いでUFOを見物したり、釣り師のじいさんから鮎を30匹も振舞われてギブアップしかけたり…個性的な仲間たちとの掛け合いも楽しく、ゲラゲラ笑っているうちにあっという間に読み終えてしまう(といっても2冊もあり、たっぷり笑えるのでご安心を)。
ちなみに小説家としての森沢さんは、やさしさがじんわり胸にしみるドラマを描く名手のイメージだが、本書で知る若かりし頃の森沢さんは自由人にもほどがあってかなり新鮮。だが日本中を放浪していろいろな体験をし、さまざまな人と出会ってきた経験こそが、いま「人のやさしさ」を信じることができる物語を描く力のベースにあるのかも…なんてことを思いつつ、とりあえずビールでもプシュッとやっておきますかね!?
文=荒井理恵