いよいよBOOK OF THE YEAR 2025 スタート! 昨年のエッセイ・ノンフィクション・その他部門を振り返る——人気エッセイシリーズの第二弾が1位に!
公開日:2025/9/9

『ダ・ヴィンチ』の年末恒例大特集「BOOK OF THE YEAR」。2025年の投票は現在受付中! 各ジャンルの「今年、いちばん良かった本」をぜひ投票してみてほしい。ここで改めて、2024年の「エッセイ・ノンフィクション・その他」部門にどんな本がランクインしたのか振り返ってみることにしよう。
<去年のランキング>
1位『いのちの車窓から 2』星野 源
2位『THEやんごとなき雑炊』中村倫也:著 タカハシユキ:監修協力
3位『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』三宅香帆
4位『赤と青のガウン オックスフォード留学記』彬子女王
5位『あらゆることは今起こる』柴崎友香
6位『夜明けを待つ』佐々涼子
7位『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』ブレイディみかこ
8位『「コーダ」のぼくが見る世界――聴こえない親のもとに生まれて』五十嵐大
9位『雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら』東畑開人
10位『本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む ~走れメロス・一房の葡萄・杜子春・本棚』かまど・みくのしん
11位『書いてはいけない 日本経済墜落の真相』森永卓郎
12位『生きのびるための事務』 坂口恭平:著 道草晴子:マンガ
13位『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』幡野広志:著 ヨシタケシンスケ:イラスト
14位『カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」』室橋裕和
15位『力道山未亡人』細田昌志
15位『ことばが変われば社会が変わる』中村桃子
本誌人気連載が1、2フィニッシュ!
想像の及ばぬ世界を伝えるエッセイも人気
〈生きるのは辛い。本当に。だけど、辛くないは、生きるの中にしかない。〉
自分の内側を覗き込み、今の心のありようをごまかしのない言葉で綴った星野源さんのエッセイが、多くの読者を魅了した。
1位に輝いたのは、本誌連載に書き下ろしを加えた『いのちの車窓から 2』。「誰もがもがきながら生きている、自分だけでない、と孤独感を緩和して明日も生きようと思わせてくれる」、「『これからも一緒に地獄のような世界を生き抜いていきたい』と思わせてくれる一冊」など、ひときわ熱いコメントが寄せられた。

2位も、本誌連載から生まれた一冊。雑炊レシピ×雑談×ショートエッセイという斬新な構成、ゆるく力の抜けた中村倫也さんの語り口が評価され、多くの読者の支持を集めた。

3位は、働く人々が抱える切実な悩みに挑んだ話題作。近代的な読書習慣が始まった明治時代から現代に至るまでの読書と労働の歴史をひもとき、新たな働き方を提案する力作に、「どう生きていきたいかを問う本だった」との声も。切り口は違うが、12位も好きなことをして生きるための実践ガイドと言えるだろう。
4位以降には、想像が及びにくい世界を垣間見せてくれるエッセイが続々ランクイン。4位はSNSで話題を呼び、文庫化された女性皇族の英国留学記。
5位は、ADHDと診断を受けた著者がみずからの感覚を言語化した一冊だ。7位は、英国在住の親子が見た貧困、政治、差別問題。8位の著者は、ろう者の両親を持ち、自身は耳が聴こえる「コーダ」。その複雑な胸中を語るとともに社会の不均衡を指摘し、〝知ってもらう〟のその先へ社会を動かそうと試みている。その道のプロが、専門知識を惜しみなく伝える指南書も票を集めた。
臨床心理士による9位の本は、身近な人が心の調子を悪くした時、どのようにケアすればよいかを教えてくれる。13位は、写真家である著者が写真の撮り方について初めて語った入門書。技術的な解説もあるが、〝写真を撮る〟とはどのような営みなのか、今一度考える機会を与えてくれる。本や言葉に関するエッセイも、安定した人気。10位には読書の原初的な楽しみを教えてくれるベストセラーが、15位には言葉と社会の関係性を明かす新書がランキング入りした。
最後に触れておきたいのは、6位に選ばれた佐々涼子さんのこと。『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』などの著書を通して生と死を見つめ、『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』では2014年の本誌同企画の1位に輝いた佐々さんが、昨年9月に亡くなった。これが最後の作品集とは信じがたいが、大切に読み継いでいきたい。
文=野本由起
※この記事は『ダ・ヴィンチ』2025年1月号の転載です。
