「芥川賞」歴代受賞作品 一覧【2025年最新版】
公開日:2025/12/24
第39回 飼育

死体処理室の水槽に浮沈する死骸群に託した屈折ある抒情「死者の奢り」、療養所の厚い壁に閉じこめられた脊椎カリエスの少年たちの哀歌「他人の足」、黒人兵と寒村の子供たちとの無残な悲劇「飼育」、傍観者への嫌悪と侮蔑をこめた「人間の羊」など6編を収める。“閉ざされた壁のなかに生きている状態”を論理的な骨格と動的なうねりをもつ文体で描いた、芥川賞受賞当時の輝ける作品集。
第38回 裸の王様

無口で神経質そうな少年・太郎が、ぼくの画塾へと連れられてきた。太郎の父は画材会社を経営しているが、彼が描くのは電車やチューリップの絵ばかり。人間が1枚も描かれていないスケッチブックに彼の孤独を見たぼくは……。閉ざされた少年の心にそっとわけいり、いきいきとした感情を引き出すまでを緻密に描いた芥川賞受賞作「裸の王様」ほか3編。世間を真摯なまなざしで切り取った、行動する作家・開高健の初期傑作集。
第37回 硫黄島

終戦から六年後のある日の夕方、ひとりの男が新聞社に勤める私のところに訪ねてきた。投降前に硫黄島の岩穴にうずめてきた日記を米軍当局の許可を得て掘り出せることになった。そのことを記事にしてほしいという。私はいくつか疑念を抱きながらも記事にした。ところが、後日、彼は硫黄島に渡り、現地で自殺してしまう。男を死に向かわせたものは何だったのか。私は男の足跡を辿りはじめる。昭和文学史に名を残す不朽の戦争文学。
第36回 受賞作なし
第35回 海人舟
第35回(昭和31年度上半期) 芥川賞受賞
第34回 太陽の季節

草食系男子、読むべし! 戦後の日本社会に衝撃を与えた若き石原慎太郎の鮮烈なデビュー作。挑戦し、挑発する全5編。
女とは肉体の歓び以外のものではない。友とは取引の相手でしかない……退屈で窮屈な既成の価値や倫理にのびやかに反逆し、若き戦後世代の肉体と性を真正面から描いた「太陽の季節」。最年少で芥川賞を受賞したデビュー作は戦後社会に新鮮な衝撃を与えた。人生の真相を虚無の底に見つめた「灰色の教室」、死に隣接する限界状況を捉えた「処刑の部屋」他、挑戦し挑発する全5編。
第33回 白い人

『海と毒薬』『沈黙』へと繋がっていく、遠藤周作の主題。
人間の心に巣食う「悪」と「赦し」を描いた芥川賞受賞作。
フランス人でありながらナチのゲシュタポの手先となった主人公は、ある日、旧友が同僚から拷問を受けているのを目にする。神のため、苦痛に耐える友。その姿を見て主人公は悪魔的、嗜虐的な行動を取り、己の醜態に酔いしれる(「白い人」)。神父を官憲に売り「キリスト」を試す若きクリスチャン(「黄色い人」)。
人間の悪魔性とは何か。神は誰を、何を救いたもうのか。芥川賞受賞。
第32回 アメリカン・スクール

文壇を惑乱し、陶酔させた異才。その出発点。
芥川賞受賞の表題作を含む初期短編集。
アメリカン・スクールの見学に訪れた日本人英語教師たちの不条理で滑稽な体験を通して、終戦後の日米関係を鋭利に諷刺する、芥川賞受賞の表題作のほか、若き兵士の揺れ動く心情を鮮烈に抉り取った文壇デビュー作「小銃」や、ユーモアと不安が共存する執拗なドタバタ劇「汽車の中」など全八編を収録。
一見無造作な文体から底知れぬ闇を感じさせる、特異な魅力を放つ鬼才の初期作品集。
第32回 プールサイド小景

突然解雇されて子供とプールで遊ぶ夫とそれを見つめる妻――。
ささやかな幸福の脆さを描く芥川賞受賞作「プールサイド小景」等7編。
大金を使い込み、突然会社をクビになった夫。妻が問いただすと、つらい勤めの苦痛や不安を癒すため毎晩のようにバーに通いつめていたという。平凡な中年サラリーマンの家庭に生じた愛の亀裂――日常生活のスケッチを通し、ささやかな幸福がいかに脆く崩れやすいものかを描いた芥川賞受賞作『プールサイド小景』、家庭の風景を陰影ある描写で綴った日本文学史上屈指の名作『静物』等、全7編を収録。
第31回 驟雨・その他

女は自らの欲望に気づき、溺れていく……。憎悪、快感、嫉妬。
芥川賞受賞の名篇「驟雨」を含む初期傑作五編。
見知らぬ女がやすやすと体を開く奇怪な街。空襲で両親を失いこの街に流れついた女学校出の娼婦あけみと汽船会社の社員元木との交わりをとおし、肉体という確かなものと精神という不確かなものとの相関をさぐった「原色の街」。
散文としての処女作「薔薇販売人」、芥川賞受賞の「驟雨」など全5編。性を通じて、人間の生を追究した吉行文学の出発点をつぶさにつたえる初期傑作集。
