「芥川賞」歴代受賞作品 一覧【2025年最新版】

文芸・カルチャー

公開日:2025/12/24

第169回 ハンチバック

ハンチバック

「私の身体は生きるために壊れてきた。」

井沢釈華の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。
両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、有名私大の通信課程に通い、しがないコタツ記事を書いては収入の全額を寄付し、18禁TL小説をサイトに投稿し、零細アカウントで「生まれ変わったら高級娼婦になりたい」と呟く。
ある日、グループホームのヘルパー・田中に、そのアカウントを知られていることが発覚し――。

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第168回 この世の喜びよ

この世の喜びよ

娘たちが幼い頃、よく一緒に過ごした近所のショッピングセンター。
その喪服売り場で働く「あなた」は、フードコートの常連の少女と知り合う。
言葉にならない感情を呼びさましていく芥川賞受賞作「この世の喜びよ」をはじめとした作品集。

ほかに、ハウスメーカーの建売住宅にひとり体験宿泊する主婦を描く「マイホーム」、
父子連れのキャンプに叔父と参加した少年が主人公の「キャンプ」を収録。

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第168回 荒地の家族

荒地の家族

誰もが何かを失った災厄から十数年。男は答えのない問いを求め彷徨い続ける。

40歳の植木職人・坂井祐治は、十数年前の災厄によって仕事道具を全てさらわれ、その2年後、妻を病気で喪う。自分を追い込み肉体を痛めつけながら仕事に没頭する日々。息子との関係はぎこちない。あの日海が膨張し、防潮堤ができた。元の生活は決して戻らない。なぜあの人は死に、自分は生き残ったのか。答えのない問いを抱え、男は彷徨い続ける。止むことのない渇きと痛みを描き絶賛を浴びた芥川賞受賞作。

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第167回 おいしいごはんが食べられますように

おいしいごはんが食べられますように

「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」

真面目で損する押尾は、か弱くて守られる存在の同僚・芦川が苦手。食に全く興味を持てない二谷は、芦川が職場で振る舞う手作りお菓子を無理やり頬張る。押尾は二谷に、芦川へ「いじわる」しようと持ちかけるが……。どこにでもある職場の微妙な人間関係を、「食べること」を通してえぐり出す芥川賞受賞作!

共感が止まらない!
「わかりすぎてえぐい」職場ホラーNo. 1

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第166回 ブラックボックス

ブラックボックス

ずっと遠くに行きたかった。
今も行きたいと思っている。

自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。
自衛隊を辞め、いまは自転車メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。

昼間走る街並みやそこかしこにあるであろう倉庫やオフィス、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようで見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。(本書より)

気鋭の実力派作家、新境地の傑作。

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第165回 貝に続く場所にて

貝に続く場所にて

あの日行方不明となった彼が、ドイツの私の元を現れる。
忘却に抗う言語芸術の傑作にして、鮮烈なるデビュー小説。

第165回芥川賞受賞作
第64回群像新人文学賞受賞作

ドイツの学術都市ゲッティンゲンに暮らす私の元に、東日本大震災で行方不明になった彼が現れる。
陽に透けないほどの存在感を持つその訪問者に私は安堵するが、死者との邂逅はその街と人の様相を重層的な記憶を掘り起こすように変容させてゆく。
群像新人文学賞と芥川賞をダブル受賞した著者のデビュー作。

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第165回 彼岸花が咲く島

彼岸花が咲く島

彼岸花を採りに砂浜にやってきた島の少女・游娜(ヨナ)は、
白いワンピース姿で倒れていた少女を見つける。
記憶を失っていた少女は、海の向こうから来たので「宇実(ウミ)」と名付けられた。
この島では、〈ニホン語〉と〈女語(じょご)〉、二つの言語が話され、
白い服装のノロたちが指導者、歴史の担い手、司祭だった。
宇実は游娜 、その幼馴染の拓慈(タツ)という少年に〈ひのもとことば〉を教え、
〈女語〉を教わって仲良くなるが、やがて進路を選ぶ時期がくる。
「成人の儀」にのぞむ3人それぞれの決意とは――。

国籍・言葉・性別などの既存の境界線を問い直す世界を描いた問題作。

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第164回 推し、燃ゆ

推し、燃ゆ

「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい」
逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を“解釈“することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し——。デビュー作『かか』は第56回文藝賞及び第33回三島賞を受賞(三島賞は史上最年少受賞)。21歳、圧巻の第二作。

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第163回 首里の馬

首里の馬

「問題。小さな男の子、太った男――そしてイワンは何に?」
『孤独な業務従事者への定期的な通信による精神的ケアと知性の共有』――通称、問読者(トイヨミ)――それが未名子の仕事だ。沖縄・港川外人住宅街の一角に佇む、古びた小さな私設郷土資料館で、数多の記録の整理を手伝う傍ら、世界の果ての遠く隔った場所にいる人たちに、オンラインで問題を読み上げる。未名子は、この仕事が好きだった。台風の夜、庭に迷い込んだ大きな動物――それは、一頭の宮古馬だった。クイズの声が、ひとりきりの宇宙ステーションに、極地の深海に、紛争地の地下シェルターに届く。マイクロSDカードと骨の欠片に収まったこの島の記録が、静かな祈りとなって堆積する。

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第163回 破局

破局

私を阻むものは、私自身にほかならない――ラグビー、筋トレ、恋とセックス。ふたりの女を行き来する、いびつなキャンパスライフ。28歳の鬼才が放つ、新時代の虚無。

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第162回 背高泡立草

背高泡立草

「別に良いやん、草が生えてたって。誰も使わんっちゃけん」大村奈美は、不機嫌だった。何故空き家である母の実家の納屋の草刈りをするために、これから長崎の島に行かなければならないのか。吉川家には〈古か家〉と〈新しい方の家〉があるものの、祖母が亡くなり、いずれも今は空き家に。奈美はふと気になって、伯父や祖母の姉にその経緯を聞くと、そこには〈家〉と〈島〉にまつわる時代を超えた壮大な物語があった――。第162回芥川龍之介賞受賞作。書き下ろし短編「即日帰郷」も収録。

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第161回 むらさきのスカートの女

むらさきのスカートの女

近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で働きだすように誘導し……。

『こちらあみ子』『あひる』『星の子』『父と私の桜尾通り商店街』と、唯一無二の視点で描かれる世界観によって、作品を発表するごとに熱狂的な読者が増え続けている著者の最新作。

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第160回 ニムロッド

ニムロッド

仮想通貨をネット空間で「採掘」する僕・中本哲史。
中絶と離婚のトラウマを抱えた外資系証券会社勤務の恋人・田久保紀子。
小説家への夢に挫折した同僚・ニムロッドこと荷室仁。……
やがて僕たちは、個であることをやめ、全能になって世界に溶ける。「すべては取り換え可能であった」という答えを残して。 ……

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第160回 1R1分34秒

1R1分34秒

デビュー戦を初回KOで華々しく飾ってから、3敗1分けと敗けが込んでいるプロボクサーのぼく。そもそも、なぜぼくはボクシングなんてやっているのだろう? 才能も覚悟もないのに。ついに長年のトレーナーに見捨てられるも、現役ボクサーで新トレーナーのウメキチとの練習の日々がぼくを変えていく。これ以上自分を見失いたくないから、次の試合には絶対に勝つ。青春小説の雄が放つ会心の一撃。

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