キングオブコント2025ファイナリストのトム・ブラウン布川。札幌出身だから目指したい、芸人としての最終目標とは?【布川ひろきインタビュー】
更新日:2025/10/11
これまでの連載を振り返って思う、お笑い的な表現と読みやすさとの葛藤

――今までの連載では、「日向坂46」について書かれた回が特に反響が大きかったです。実際にファンからの声は布川さんにも届いていたのでしょうか?
布川:そうですね、それこそエゴサーチしているところで感想を見る機会がありました。僕の文章を読んで、「自分はこういう理由で日向坂が好きだったんだと理解できた」と言ってもらえて。こうしてダ・ヴィンチWebでのエッセイを通して自分の「好き」を言語化できた人がいるなら、人のためになったのかなと思いましたね。
――布川さんの日向坂46のお話は圧倒的に反響が多かったので、ぜひまた書いていただきたいなと思っています。
布川:最近日向坂46の1期生が全員卒業したので、タイミング的にももう1回書いてもいいかもしれないです。M-1が終わった後、佐々木久美ちゃんにたまたま会ったんですよ。だからそのとき、「卒業おめでとうございます」って伝えました。そうしたら、向こうも「M-1お疲れ様でした」って言ってくれましたね。
――「言語化」という行為は簡単ではないと思います。エッセイでは、言語化はもちろん、過去のできごとを振り返ったり自分と向き合ったりといういつもとは違う行動が必要になると思うのですが、実際にエッセイを書いてみて難しかった点はありますか?
布川:僕は言語化が得意な方ではないので、難しいと感じることは多かったです。普段のネタでも言葉より擬音や動きで表現することが多くて。
例えば、句読点ひとつを取ってもどこに入れるべきなのか分からなくて、結構困ったりしました。文章の改行も、「ここで改行するべきではないかもしれない」と悩みながら書いています。
――そうなんですね。でも、連載初期から比べると、布川さんの文章はどんどん読みやすくなっているなと感じています。
布川:連載初期は、エッセイを自分で何度も読み直してたんです。何度も読んでいると「文章がつながりすぎていて読みづらいな」「ここに改行はいらないかもしれない」というポイントに気づけるようになって。それで、できるだけ読みやすくなるように調整しました。
――連載初期はお笑い的な表現が多かったと思うのですが、回を重ねるごとにストレートな表現に変わってきましたよね。文体を変えていくにあたって、どのような心境の変化があったのでしょうか?
布川:僕は漫画家の「つの丸先生」と仲良くさせてもらってるのですが、先生から「あれ駄目だぞ」って言われたのがきっかけです。「お笑い的な表現をしたいのは分かるけれど、あれは見てられないぞ」って言われたんです。だから、ちゃんと書いた方が良いんだなと思いました。
実際、日向坂46の話は僕なりにちゃんと書いたんです。そうしたら反響が良かったので、やっぱりエッセイは真面目に書いた方がいいんだろうなって。最初のころはお笑い芸人らしい文章を書こうと思いすぎていました。
――12回のお話は、トム・ブラウンのラジオ「ニッポン放送圧縮計画」で話されていた、行きつけのイートインのお話でしたね。こうしたエッセイのテーマは、ラジオで話されたことがきっかけで思いつくことが多いのでしょうか?
布川:そうですね。ラジオで話したことがきっかけになることが多くなってきました。前はどんなテーマにするかかなり悩んでいたのですが、最近は30秒くらいで考えるようにしています。そっちの方が無理なく書けるだろうなと思っているし、実際に書きやすくなった気がします。
テレビとラジオでは話すことが全然違うのですが、ラジオやトークライブにはエッセイと近いものを感じています。今後はラジオやトークライブで反響が良かったテーマを、エッセイでより深掘りしていけたら良いなと思っています。
――実際、エッセイの中でも「今思いついたのですが」というようなフレーズが登場するので、ラジオやトークライブのように即興性を感じました。
布川:確かに、即興性みたいなところもありました。最初はエッセイを一気に書き上げていたのですが、「(表現的に)これは読者に伝わらないだろうな」と。でも、最近は「伝わらないところは伝わらなくてもいいか!」と思いながら書いています。ただ、今になって読み返してみると、初期の話は書き直したいと思うほど恥ずかしいです。
――文章を書く技術が向上しているからこそ、実感するのではないでしょうか。
布川:そうかもしれません。でも、当時の文章は『こち亀』の1巻みたいなものだと思っているんです。最初期の両さんは強面で怖い雰囲気だったけれど、200巻のころには子どもでも見れるファミリー向けの作品になってたじゃないですか。初期の話はそういうイメージで読んでもらえたらいいなと思います。
