岡村靖幸 ステージに立ち続けるために健康でいたい。毎年ツアーを行ううえで大切な「自分が自分に興奮できる状態」の作り方【『幸福への道』インタビュー】

文芸・カルチャー

公開日:2024/12/22

岡村靖幸さん

岡村靖幸が、ミュージシャンや芸人、講談師から、政治家や僧侶に至るまでさまざまなジャンルで活躍するスペシャリストに「あなたにとって幸せとは何ですか?」と問う「週刊文春WOMAN」の連載が書籍化。22人の多彩なゲストと語り合う時間を振り返ってもらった前編に続き、後編では、私生活がアーティストに与える影響や歌い続ける理由など、「幸福」を軸に、岡村のよりパーソナルな思いに迫った。

幸福への道
幸福への道』(岡村靖幸/文藝春秋)

普通の幸せをあえて手にしていないわけではない

――神田さんとの対談で、神田さんが岡村さんの魅力について、結婚や子どもを持つような幸せを渇望している姿にファンは惹かれるのではないかとおっしゃっていましたが、岡村さんご自身の自覚としてはいかがですか?

 別に渇望してるわけではないんですけどね。幸せになっていなさそうな感じがグッとくる、という人もいるでしょうね。なんでしょうね……こじらせてるように感じてるのかもしれない(笑)。

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――たとえば“Lion Heart”のような孤独を歌う楽曲と、岡村さん自身が一致しているからこその説得力があるのかなとも思います。

 どうなのでしょう?

――そのためにあえて幸せになる道を選んでいない、ということではなく?

 違いますね、作為的にそうしてるわけじゃないですよ。でも、だからこそ歌詞や歌が嘘事じゃなくて、リアルに歌っているんだろうなと、ファンの方たちは思ってくれてるのかもしれないですね。

――前に取材させていただいた時に、最近あえて、「勉強」のような、いわゆる岡村ちゃんらしいワードを使っているとおっしゃっていましたが、そうした見せ方にもより自覚的になってきているのでしょうか?

 パッケージはわかりやすくしたいんですよね。たとえば自分が商品であるとすると、パッケージも芸術性を高くして難解にしちゃうと入りにくいので、わかりやすいキーワードを使うことで、パッケージングはポップにするというのは心がけてます。

――音楽では複雑なことをやるぶん、わかりやすい入口を作るということですね。

 そうですね。そこのバランスはとろうと思ってます。

型破りなプライベートが芸を育てるのか

――千原ジュニアさんが対談の中で、芸人は不幸せなほうが幸せだとおっしゃっていますよね。幸せな芸人は人をドキドキさせられないと。結婚などの一般的な幸せと対極にある、「飲む・打つ・買う」のようなプライベートが、芸人やアーティストの魅力につながることはあると思いますか?

 勝新太郎さんのような役者の方とか、芸人の方も、型破りなプライベートを送っていることが、血となり肉となり、芸に反映されるということはあったでしょうね。ただ、今って他罰的な世の中だし、文春が叩くから(笑)、やりづらいのかなと思いますよ。でもそれって、波瀾万丈な人生を送って、不幸せでありながらも、うまくいったり、いかなかったりする、寅さんのような生き様ですよね。それが寅さんのなんとも言えない魅力や愛おしさを作っていることもありますよね。

――岡村さんは本の中で、何度か断食道場の話をされていますよね。未知であることは不安だから、断食道場のような何かに妄信する環境は気持ちがいいという話をされていたんですが、そう考えると、結婚や子どもを持つことは先が見えない未知なものであって、妄信の快楽とは真逆のように思います。

 断食道場は、デトックスの効果もあるけれども、妄信の快楽というのも確かにあるんですよね。それに、強化合宿のような環境で、知らない人と雑魚寝をしたりするから、一般の方々とそういう交流を持つことも楽しいですよ(笑)。

――自分自身を見つめられる感覚もありますか?

 ありますね。無理やり、食べることとか世の中から遮断されると、すごく時間って長く感じるんですよ。小学校時代を思い出してもらうとわかると思うんですけど、あの頃って、朝、無理やり早く起こされてご飯を食べさせられて、学校で授業を受けて、部活やって……というように、自分で自分の時間をコントロールできなかったですよね。夏休みも、まだ寝たいのに早起きしてラジオ体操に行かされたりして、永遠に続くのかなっていうぐらい時間が長く感じて(笑)。断食道場も同じで、ネットも使えないし、好きな時に好きなものを食べさせてもらえない。好きに時間を使えないと、まあ時間は長いし、雑念から解放されて、考える時間が増えるんです。本も集中して読めますし。ゆっくり考える時間がほしいとか集中して何かをやりたい時は、すごくいいですよ。

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