怖い……でも見たい! 大好評の「怖い絵」展。 見てから読む? 読んでから見る?
更新日:2017/10/27


現在、上野の森美術館で12月17日まで開催中の「怖い絵」展が大きな話題を集めている。作家でドイツ文学者の中野京子氏によるベストセラー「怖い絵」シリーズの刊行10周年を記念した特別展で、東京に先んじて今年7月~9月に開催された兵庫県立美術館では、なんと入場者数27万人以上を動員。これは開館以来、歴代3位(1日平均入場者数、歴代2位)を記録だという。
しかも来場者のうち「30代以下」が約6割、また「初めて来館した」という人も半数弱を占めた。その多くは「怖いけど面白い」「絵を観る楽しさがわかった」などSNSの好意的なコメントを読み、つまり口コミによって足を運んだという。
上野の森美術館でも連日、待ち時間が発生するほどの盛況ぶり。その人気を受け、通常10時~17時の開館時間を土曜日9時~20時、日曜日9時~18時に延長することを決めたほどだ。
さまざまな種類の「恐怖」が描かれた絵画
本展の元となった「怖い絵」シリーズは、『怖い絵』『怖い絵 泣く女篇』『怖い絵 死と乙女篇』(すべて角川文庫)『新 怖い絵』(角川書店)と全4冊、さらに「怖い絵」と「怖い絵」展の見どころが凝縮されたスペシャルブック『怖い絵のひみつ。』(角川書店)が刊行されている。このシリーズの魅力はなんといってもその斬新な切り口。これまで日本の美術史界では「絵そのものを感性で観る」という常識があったが、中野さんは「絵に描かれていることの真実を伝えたほうが面白いはず」と、その絵の時代背景や隠されたストーリーに触れ、細やかにわかりやすく解説した。
たとえば、人物の後ろに小さく描かれている「何か」にも作者の意図があるとか、身につけている洋服からこういう人物であるはずなど、美術史の深い造詣としなやかな想像力でこれまでの美術評論家とは違う視点で絵画をひも解いたのだ。しかも視覚的な「恐怖」だけでなく、神話、史実、固有の文化など、さまざまな種類の「怖さ」をチョイスしたことでバリエーションが広がり、読者を飽きさせない仕掛けを作った。そういったさまざまな工夫によって、これまで絵画鑑賞に興味がなかった若い世代も文字通り、「怖いもの見たさ」から手に取り、一躍ベストセラーとなったのだ。
夏目漱石も魅了された日本初上陸の絵画など約80点を展示
本展は、中野さんによる特別監修のもと、「怖い絵」シリーズで紹介された作品をはじめ、ヨーロッパ近代絵画の巨匠が手がけた作品をはじめ、「恐怖」に焦点を当てて集められた西洋絵画・版画、約80点とともに、怖さを読み解くヒントが書かれた解説パネルが展示されている。
最大の注目作は、日本初公開となるロンドン・ナショナル・ギャラリーを代表する名画、ポール・ドラローシュの「レディ・ジェーン・グレイの処刑」(縦2.5m×横3m)。

Paul Delaroche, The Execution of Lady Jane Grey, © The National Gallery, London. Bequeathed by the Second Lord Cheylesmore, 1902
こちらは、イングランド最初の女王となりながら、たった9日間でその座を追われ「9日間の女王」と呼ばれた16歳の美少女、ジェーン・グレイ。若々しく清楚な少女が、一瞬先には血まみれの死体になっていることを想像させる処刑間際の様子が描かれている。この絵にロンドン留学中の夏目漱石も魅了され、自身の小説『倫敦塔』に登場させたのは有名な話だ。
中野さん曰く、「ほかにも、ムンクやフューズリ、ゴヤもあり、有名な画家の作品も多く来ています。とくに、セザンヌは衝撃的な作品。これは解説を読まないと通り過ぎてしまうと思いますので、じっくりと味わってみてください」とのこと。
それでも「理解できるか心配」という方はご安心を。中野さんがこのために全て書き下ろし、人気女優・吉田 羊さんがナレーターを務める音声ガイドが好評だ。音声ガイドの貸し出しが普段の展覧会の約2.5倍にのぼっているという。
「いままで美術館に行ったことがない方でも楽しめる展覧会だと思います。敷居の高いものではないので、ぜひ、お気軽に楽しんでいただきたいです」と中野さんが言うように、絵画鑑賞デビューという方にもおすすめの展覧会だ。
文=高倉優子
「怖い絵」展 開催概要
会期:2017年10月7日(土)~12月17日(日) ※会期中無休
会場:上野の森美術館
住所:東京都台東区上野公園1-2
時間:10:00~17:00(土曜9:00~20:00、日曜9:00~18:00)
※入場は閉館の30分前まで。
料金:一般 1,600円、大学生・高校生 1,200円、中学生・小学生 600円
※20名以上の団体料金あり。
※小学生未満は無料。
※障がい者手帳の提示、およびその介護者1名は無料。
問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
「怖い絵」展 :特別サイト
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