人の心を操る話術は“サギ師”から学べ! 詐欺・悪徳商法評論家が発見した「逆らえない一言」とは
公開日:2018/1/13

年々厳しくなる摘発をかいくぐるように新たな騙しの手口を編み出すサギ師たち。言うまでもなく詐欺行為は犯罪なのでこのような言葉は本来不適切なのかもしれないが、サギ師の中には“プロ”の話術を持っている者もいる。他人の弱みや心の隙につけこみ、相手の口から「OK」の一言を引き出す技術。その才能を利用してまっとうな職業で活躍すれば良いものの…と呆れてしまうほどであるが、そう簡単に片付く問題ではなさそうなのもまた事実だ。
ルポライターの多田文明氏をご存じだろうか。詐欺・悪徳商法評論家として、街頭の勧誘からキャッチセールスの現場へ、アポイントメントセールスへ100箇所以上潜入している。また、詐欺の実態やネットのサイドビジネスなどにも精通し、多くの著書を持つ。そんな彼だからこそ語れる心理ノウハウの本、『サギ師が使う人の心を操る「ものの言い方」(イースト新書)』(多田文明/イースト・プレス)をご紹介したい。“巧みな「言い換え」を見抜き、心理戦に生かす禁断テクニック”と謳う本書の、気になる内容を少し覗いてみたい。
■相手が発した言葉を繰り返しキーワードに使う
消費者の購買意欲をあおりながら商品を売りつける催眠商法には、気持ちを高揚させる言葉のテクニックが使われているという。相手の口から出てきた言葉を巧みに繰り返し、ターゲットを“その気”にさせるのだ。実際の“NG例”と“OK例”を見てみよう。
NG例
「趣味はなんですか?」
「テニスなどのスポーツです」
「週にどれくらいなさるのですか?」
「週に一回くらいですね」
「なるほど。時事問題に興味はありますか?」
「ええ」
「映画は好きですか?」
「そうですね」
これでは相手の心は全く掴めておらず、このようなサギ師は“サギの成績”が悪いという。
OK例
「趣味はなんですか?」
「テニスなどのスポーツです」
「ほう、テニスですか。いい趣味を持っていますね。最近もどこかでテニスをしましたか?」
「ええ。昨日は有明でテニスをしてきました」
「そうですか。有明はいいところですよね。日ごろから健康的な生活をしていらっしゃるようなので、私も見習わなくては、ですね」
「テニス」や「有明」という言葉を繰り返しながら、そこに自分の気持ちを乗せた答えを返して、じわじわと相手の口を軽くしていく。一見地味なようだが、これは“デキるサギ師”が使う高等テクニックなのだという。
言うまでもなく、本書は読者に“デキるサギ師”になることを推奨しているわけではない。上の2つの「ものの言い方」を、営業やデートの場に当てはめて想像してみてほしい。どちらの話し方が短時間で相手の興味を惹きつけ信用を勝ち取っていくのかは一目瞭然だろう。ほかにも、SNS上でのやり取りなんかにもこの話術は幅広く応用できそうだ。この話術は心理学でいうところの「ミラーリング効果」に近い気もする。親しい間柄だと相手と同じ動作を行うことが多く、ミラーリング効果は好意や親近感を抱かせるために相手の発言や動きをマネること。ディズニーランドのキャストの中には、このミラーリング効果を用いて来場者に親近感を抱かせるという話を私は以前テレビの特集で見たことがあるが、これも同じ原理だったのかと納得した。
「巧みな話術」は、何も人を騙してお金をむしり取るためだけに身につけるものではないだろう。繰り返しになるが、本書は高等な詐欺行為を褒めたり助長したりするものではない。著者が詐欺や悪徳商法の現場に潜入することで学び得た「話術」を、自己の成長や他人との心地良い信頼関係の構築に応用していきたいとするものだ。
文=K(稲)
レビューカテゴリーの最新記事
今月のダ・ヴィンチ
ダ・ヴィンチ 2025年6月号 伊坂幸太郎/東村アキコ
特集1作家生活25周年 伊坂幸太郎 次世代に受け継がれる物語/特集2 東村アキコのはじまりを マンガと映像でうつし出す 『かくかくしかじか』 他...
2025年5月7日発売 価格 880円
人気記事
-
1
-
2
-
3
-
4
-
5
人気記事をもっとみる
新着記事
今日のオススメ
-
レビュー
糖尿病専門医が教える、無理なくやせる食べ方とは?“血糖値スパイク”を防ぎながらダイエットする方法とレシピを紹介【書評】
PR -
レビュー
鈍感女子に振り回されるチャラ男子が尊い! 元男子校に入った超真面目女子と元弓道部男子の王道ラブストーリー【書評】
-
レビュー
鬼上司の「不意打ちな優しさ」が心臓に悪すぎる! クール男子と不器用女子の両片思いなオフィスラブ漫画『営業部の高杉さんは心臓に悪い』【書評】
-
レビュー
余命5日、でも強気。龍へ捧げられる生贄少女とギャップがかわいい皇子のラブファンタジー『雨の皇子と花の贄』【書評】
-
レビュー
8歳下の女の子に惹かれ、別れた元恋人が失踪。そして関係者たちは“ある土地”へと導かれる——。直木賞作家・白石一文の長編小説『つくみの記憶』【書評】
PR
電子書店コミック売上ランキング
-
Amazonコミック売上トップ3
更新:2025/5/21 14:30-
1
ブルーピリオド(17) (アフタヌーンコミックス)
-
2
薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~(20) (サンデーGXコミックス)
-
3
魔導具師ダリヤはうつむかない ~Dahliya Wilts No More~ 8巻 魔導具師ダリヤはうつむかない~Dahliya Wilts No More~ (ブレイドコミックス)
-
-
楽天Koboコミック売上トップ3
更新:2025/5/21 14:00 楽天ランキングの続きはこちら