料理は“ゆるまじ”がいいよ! 料理研究家・枝元なほみさんの「テッパン子どもおかず」アレンジレシピ【インタビュー】
更新日:2018/4/8


「エダモン」こと料理研究家の枝元なほみさんによる、『エダモンの今日から子どもおかず名人(コドモエBOOKS)』(白泉社)が発売された。
枝元さんは、劇団で役者兼賄い、無国籍レストランのシェフも務めたという経歴を持ち、オリジナリティあふれる料理と、きさくな人柄でテレビ、ラジオ、雑誌に大活躍中。
■テッパンおかずは自信を作る
──鶏のから揚げにハンバーグ、コロッケと、それぞれにアレンジや副菜レシピもあって、子育てママ・パパに嬉しい一冊ですね。いわゆる「テッパンおかず」をメインにされたのはどうしてでしょう。
「毎日しっかり料理しなくちゃ、って思ったらとても大変。カンベンして!」って感じでしょー(笑)。だから「いっぱいいっぱいにならずにできること」を伝えたかったんです。
子育て中はみんな忙しい。仕事を持っていてもそうでなくても大変。だから、外食のこともある、お惣菜を買っちゃうのもOK、毎日しっかり作るのはムリだけど、でも、たまにやってみて「ウマ!」と思えたら自信につながるよね。
それでテッパンの「これだったら作ってくれるかな、私だったらまず作るな」と思う料理を選んだんです。副菜も難しくせず、私はこれがおいしい、これならできると思うレシピにしました。
──まさに「エダモンのテッパンレシピ」ですね。料理はイチから全部しなくちゃいけない、大変と考えがちですから。手抜きの裏技もありますか?
裏技っていうより、たぶん私は料理を多く作っちゃうタイプ。30分かけて作って、もし足りなかったら「絶対ヤダ!」と思うんですよね。ドカンと作って使い回せる、等身大でウソなしができたらいいなって思います。
市販のカレーのルーや、だし、鍋の素に助けてもらうのもアリ。でも、「よしっ!」って思って、たまに自分でちゃんと「だし」をとったら、「うまいっ」とストンと腑に落ちるところがあるの。そういうことを伝えたい。
それと、フライパンの登場回数は多いんです。肉じゃがとかカレーもフライパン、揚げ物もフライパン。間口が広いから煮崩しにくく、いっぺんにやって作りおきするとラクですよ。

■「ゆるまじ」くらいでちょうどいい。
子どもは、1回目はすごくハマって食べたのに、2回目は食べないなんてこともあると思うんですよね。だから、食べ残したときは、別の料理に入れればよいよと。じゃないと食べなかったときにキーっとなっちゃう。
──なるほど。次の日のアレンジレシピがあって安心です。ですが、どうしても野菜を食べない子は、心配ですよね。
あまり難しく考えないでいいんじゃないかな。ただ、伏線を張っておく。
──伏線といいますと?
親が「うまいっ!」って言って先に食べちゃう(笑)。食べなさいって言われるとイヤだけど、親が食べていれば、子どももある日、ふっと「食べてみようかな?」って思うようになるんじゃないかな。
ただ、3~4日の単位で青菜とか、ほかにも野菜を全然食べていなければ、唯一食べるキュウリを出してみるとか、ね。
私の親は小学校の教員でした。だから、忙しい中で料理をする姿を見てきました。父が作ったじゃがいもの味噌汁が、ポタージュみたいにとろとろで不思議にウマかった。でも、母の味噌汁は「煮干しも食べなさい!」と言われたりして、「はぁ~っ」て感じでした。母は誕生日のゼリーとか「あれもこれも作ったでしょ」と言うけれど、私は「そうだっけ?」って忘れていることも多いの。でも、日々のごはんで支えてくれていたんだなって今ではすごく感謝しています。
だからかな、「料理は愛情」みたいなプレッシャーになる考えは、もうやめようよって思うの。「目指せ! ゆるまじ!(ゆるいけどまじ)」くらいの感じでちょうどいい。それでもやっぱり、「お母さんのから揚げが好き」と言われたら、ガッツポーズになるでしょ?

■スーパーにも春は来る
――旬のものを積極的に取り入れることも大事ですよね。
「スナップえんどうがふっくらしてきたね」「筍が出てきたよ」とか、スーパーの棚にも、春はやってくるから、そういうのを喜べたらって思います。嬉しい、楽しいが「おいしい」に繋がったらいいよね。
――ところで、今日は特別に枝元さんのご自宅にお邪魔してお話を伺っているわけですが、先ほどからネコちゃんたちが、元気に追いかけっこをしています。
茶色がくうちゃんで9ヶ月、シマトラが4歳できいちゃんといいます。どっちも保護ネコなんです。きいちゃんはフードファイター、よく食べる。くーちゃんは、静かな子。2匹ともいっぱい食べて、家の中に山猫かライオンがいるくらい大きくなってほしい。
――保護ネコということは元は捨て猫だったんですね。エダモン料理の包容力のヒミツはそんなところにもありそうです。枝元さんは料理だけではなくて、農業支援活動も主宰されていますね。
「チームむかご」といって、農業を普通の消費者の立場から応援できないかと思って始めました。このままで行ったら、日本で食べ物を生産する人はどんどん減っちゃう、そう危機感をもったんです。子どもたちを飢えさせたくないと。
たとえ規格外でも、良いものをきちんを食べつなぎたい。例えば、トマトだって畑に行けば、大きいものも小さいものもあるでしょ。それを当然で自然のことって思える社会でありたいよね。
遺伝子組換えや残留農薬による健康への影響は、小さい子のほうが受けやすい。そんなことも考えていきたいな。
■「これを食べて!」と「生きて!」は同義語。
私は職業を「めし炊き!」って言いたいくらい(笑)。炊きたてごはんの塩おむすびを食べて「うまい!」と感じることや、ほっとするようなお味噌汁を作ることなんかを伝えていければいいなと。「食べて!」と「生きて!」は同義語でしょ? 励まされるみたいに。お母さんたちの毎日も、そういうことだと思う。そして最終目標は、「食べて、そして一緒に生きて行こう!」というところで考えたいんだと思うの。

取材・文=田戸純子 撮影=内海裕之