『たそがれたかこ』『傘寿まり子』…“高年齢ヒロイン”作品が好調のワケ【BE・LOVE編集長コラム第3回】

マンガ

更新日:2018/4/11

 ダ・ヴィンチニュースは、雑誌読者のことを一番よく知っている各雑誌の「編集長コラム」企画をスタートしました! 今回ご登場いただくのは『BE・LOVE』の岩間編集長です。

 皆さん、約1か月のご無沙汰です。年の瀬、慌ただしくお過ごしのことと思いますが、コミック業界の年末名物といえば、この一年の総まくりとも言えるランキング。今年も「このマンガがすごい!」(宝島社)の発表がありました。
 読者の皆さんのご支持により、BE・LOVEの漫画がオンナ編ベスト10に2作品、ベスト50まで見ると、計4作品がランクインしました! 本当に励みになります。ご愛読ありがとうございます!

これがベスト50に入った作品。ITANを含めると5作品ランクイン!

 ベスト10に入ったのは入江喜和さんの『たそがれたかこ』(4位)、おざわゆきさんの『傘寿まり子』(6位)。「たかこ」は45歳で、「まり子」は80歳。二人合わせて125歳! BE・LOVE作品のヒロインとしても年齢は高めの設定なのに、なぜ好評をいただけたのでしょうか。

『たそがれたかこ』は全10巻。aikoさんや尾崎世界観(クリープハイプ)さんなど、ミュージシャンから愛される漫画でした。

『傘寿まり子』は、最新5巻が出たばかり。朝のニュース番組からクチコミが広がりました。

 キャラクターの人間味がきっちりと描かれていることで、通りいっぺんな感じを受けない、オンリーワンな個性が魅力だと思います。年齢を重ねたヒロインとなると、今に至るまでの人生において、様々な経験をしてきています。その「経験」を、どう描写するのか。その人の歴史を、省かずに描いているところ、つまりキャラのいいところも悪いところも余すところなく描いていることが素晴らしいと思います。

「たかこ」は、旦那と離婚していて、拒食症に苦しむひとり娘がいて、という背景。「まり子」は、高名な小説家として生きてきたという過去とは対照的に、現在は家族には煙たがられている。葛藤がとてもリアルだからこそ共感するし、応援したくなる。ウィークポイントを強烈な魅力として描き切るその覚悟と筆力を、この2作品からは感じます。

 味わい深い人間味が、大人漫画の読者の皆さんにしっかりと届いた証が、このランキング結果ではないでしょうか。いずれも、年末年始、冬休みにじっくり読むにはぴったりの“人間賛歌”です。老若男女問わず、ぜひご一読のほどを。

『傘寿まり子』が西武線などに“進出”!! 「80歳」という文字が、車内で目立っていました。

「人間を描き切る」という点でいうと、この冬から始まる(始まった)BE・LOVEの新連載3作品にも、期待をしています。少しご紹介します。

 まず、池井戸潤さんの大人気小説を漫画化した「空飛ぶタイヤ」。大企業の圧力に屈せず自分のポリシーを貫く中小企業社長の奮闘を、『すくってごらん』『おとむらいさん』の大谷紀子さんが描きます。既に連載は始まっていて、早速“闘う漢”の魅力で読者の皆さんを魅了、第1話は読者アンケートが好調でした!

原作は企業小説ですが、漫画では“イケメン力”をグイグイと前面へ。
(C)池井戸潤 大谷紀子/講談社 BE・LOVE

 続いて、新年1号から始まったエッセイコミック「うつ妊 ~私、妊娠しちゃダメですか?~」。作者の月ヶ瀬ゆりのさんが、うつに苦しみながらも妊娠・出産を叶えていく体験を、それはもうコミカルに(!)描きます。

編集会議では、特に女性部員の強い推薦があった作品。とにかく赤裸々なのです。ヒロインが手にしているものは一体…答えは誌面で!
(C)月ヶ瀬ゆりの/講談社 BE・LOVE

 そして、12月28日発売の新年2号からは、新鋭・欧坂ハルさんの「世にも不実なピアノソナタ」がスタート。スランプに陥った天才ピアニストを陰日向で支える新人マネージャーの奮闘を描きます。

ラブシーンはもちろん、ピアノ演奏シーンの迫力も見どころです!
(C)欧坂ハル/講談社 BE・LOVE

 3つの新連載、タッチというか作風が、まったくバラバラというのが、ある意味BE・LOVEらしいところではありますが、どの作品も“人間”を描く作品になるはずです。
それぞれ主人公たちは、連載開始早々に人生の苦境に立ちます。そこからどう這い上がって幸せをつかむか、ぜひご注目いただきたいと思います。私も期待大!で、毎号の校了に臨んでいます。2018年もBE・LOVEが放つ“人間賛歌”にご期待ください。

 最新BE・LOVE新年1号は、絶賛発売中です。この号より、前述の「うつ妊」がスタート。「空飛ぶタイヤ」は第2話掲載。そして「ちはやふる」原画展の告知をお見逃しなく!

表紙は実は久々の、千早・太一・新の3ショットです。

 さらに、新年2号は12月28日発売。「ちはやふる」連載10周年記念号で、映画・アニメのキャスト陣&Perfumeさんからのお祝いメッセージ、さらに総勢33名の豪華執筆陣によるちはやトリビュートイラストを掲載という、お年玉特大号です。このトリビュート、講談社コミック誌初登場の方など、思わず「マジ!?」と叫んでしまいそうな夢のような顔ぶれですので、お見逃しなく!

 最後に、毎回のお約束。テーマに即したオススメ本のコーナーです。今回は初めてフィクションを選んでみました。
 三浦しをんさんの『光』、そして薬丸岳さんの『友罪』(ともに集英社文庫)です。

『光』は実写映画が公開中、『友罪』は2018年5月に映画化されるそうです。

 この2作品の共通点は、主人公格のキャラクターが、子供のころに強烈な経験をし、それがその後の人生に強く影を落としていること。彼らの壮絶な過去、そして葛藤を抱えながら生きる今を、余すところなく描いているからこそ、圧倒される作品です。人生の試練に立たされた時、どう進んでいくのか。そのために何が必要なのかを考えさせられる、読み応えのある小説。決して楽しいばかりの話ではありませんが、つらい日々の先に何が見えるのか、それを示してくれます。

 BE・LOVEでも、その先にある幸せを手にするためのプロセスを、丹念に描いていきたいと思っています。もちろん漫画なので、コミカルなタッチ、シリアスなタッチ、いろいろですが、読者の皆さんの心を揺さぶる作品を目指す、そんな2018年にしていきます。これからもどうぞお付き合いください。
 それでは、良いお年をお迎えください!

『BE・LOVE』最新1号は絶賛発売中! 次号2号は12月28日発売!!

BE・LOVE』1号(講談社)

岩間秀和(いわまひでかず)編集長
1993年講談社入社以来、BE・LOVEひと筋。2012年2月より編集長に。
BE・LOVE編集部では、新・想像系コミック誌「ITAN」も編集しています。

▶『BE・LOVE』公式サイトはこちら

▶次回の岩間編集長のコラムは、1月15日頃更新予定です!