リアルな漫画誌編集長の一日。~BE・LOVEの場合~【編集長コラム第4回】

アニメ・マンガ

2018/1/17

 ダ・ヴィンチニュースは、雑誌読者のことを一番よく知っている各雑誌の「編集長コラム」企画をスタートしました! 今回ご登場いただくのは『BE・LOVE』の岩間編集長です。

 2018 年最初のコラムとなります。今年もどうぞお付き合いください。
 ちょうどこれを書いている前日に、「俺マン2017」という、読者の皆さんがツイッターで投票するランキングの発表イベントを観てきました。投票した読者さんと主催者が同じ空間でランキングを発表し、楽しむという「コト消費」の世界。少し前までは、漫画のイベントといえばサイン会くらいしかなかったですが、漫画の楽しみ方がどんどん年々多様化していくな…と、感じた年頭でした。





      「俺マン2017」にランクインした「BE・LOVE」と「ITAN」の作品。ぜひご一読ください!

 さて過去3回、本コラムを連載してみて、少ないながらも(苦笑)読んでくださった方からいただいたリクエストというのが、「編集長の日常を知りたい」というもの。編集長に限らず、編集者の仕事は同じ会社でも雑誌が違えば、全く異なるようです。よく、ファッション誌とコミック誌では、別会社…なんて言いますからね。その点では、確かによその編集長がどういう日々を過ごしているか、私自身も気になっていました。実はその気持ちが高じて、昨秋都内のライブハウスに、3名の50代コミック誌編集長のトークを聴きに行きました。編集長業務をこなしながら、たくさんの漫画家さんの担当をしている尋常じゃないくらいのパワフルさと漫画愛にあふれる先輩方のお話を伺い、刺激と反省を土産として持ち帰ってきたところでした。

 ですので、これが参考になるかはわかりませんし、僭越ではありますが、「編集長の一日 BE・LOVEの場合」を書き出してみることにします。そこから何か見えてくるものがあればありがたいですし、自分自身にとっても日々を顧みる機会にさせてもらえたらと思います。

このコラムを書いている最中の私のデスク。恒常的に汚いです…。

「一日のタイムテーブル」と一口に言っても、日によってだいぶ違いますが、1月の新刊が発売になった日を例に挙げてみます。

1月某日
朝の通勤電車。車内でツイッターを少し覗き、この日発売になった新刊の評判などを見る。途中から押しつぶされそうな満員状態になり、ツイッターをあきらめる。

9時半に出社。
昨晩、会合があったために返信できなかったメールへの返事を、急いでカタカタと。
そして伝票のチェック。これら、いわば事務作業は午前中にどこまで片付けられるかによって、一日にできることが決まってきますので、私にとっては、この時間帯の仕事のはかどり具合が大事。

編集長の仕事に限らず、私が入社したころに比べて、いや数年前に比べて、漫画編集の仕事は、漫画家さん以外の方との関わりがとても増えている。これも、漫画が様々な分野と関わる機会、コラボレーションの機会が増えたことが原因ではないかと。漫画が広がりを見せている証だと感じる今日この頃。



地域とのコラボ例。「ちはやふる×大津」「ちとせちゃん×京都」など。そして最新のコラボは、「能面女子の花子さん」が本格的な能のイベントとコラボ。2月11日開催。

特に、映画やテレビといった他メディアの方、漫画を使ってイベントを仕掛けて下さる自治体の方々などは、午前中から稼働しているので、午前中のやりとりは以前より圧倒的に増えた。その点からすると、この時間帯は、けっこうキモ。ここを逃すと、やり取りが半日から一日遅れることになり、決定が先延ばしになってしまう。

11時半より、部員と2018年の夏には実現したい新連載の打ち合わせを編集部にて。企画書を最初に読んだ時には「これはすごい作品になるかも!」と思ったが、資料を読み込むにつれ、課題も見えてきた。しかし、本当に読みたいし話題性も帯びそうな企画なので、課題解消のためにどうしたらいいかをお互いの宿題に。

12時半より池袋にて、この日『昭和ファンファーレ』2巻が発売になったリカチ先生の打ち合わせに同席。2巻発売記念のツイッターキャンペーンが早速反響が続々来ていることをご報告しつつ、軽くランチをしながら、物語の今後について担当を交えて打ち合わせ。戦前という時代は、学生時代にゼミで研究をしていた得意分野であったはずが、ほぼ忘れていることにショックを受けつつ、先行きの希望を先生にお伝えし、またリカチ先生からもご意見を伺う。はたして今後の展開がどうなるか、楽しみでならない。

発売したばかりの『昭和ファンファーレ』2巻。1月31日まで、図書カードが当たるTwitterキャンペーン実施中。

15時からは部数決定会議、いわゆる「部決」。漫画・ドラマの『重版出来!』では、大勢のお偉方の前で、編集長と担当がプレゼンをする「まさに会議!」というシーンがあったが、うちの場合はあのようなプレッシャーの中ではなく、販売部との打ち合わせという感じ。これも同じ社内でやり方がマチマチかもしれない。
今や、雑誌冬の時代で、特に紙の雑誌の部数はなかなか厳しい。が、BE・LOVEは年末年始の「ちはやふる10周年記念号」がおかげさまで好評。これを受けて、あれこれ意見を交わし、部数決定。

「部決」により、雑誌や単行本の部数が決まるが、ここには漫画家さんは同席しない。だからこそ重責だと感じる。実は今でも、販売部からの部数案提示には、前日くらいからドキドキしている。もちろん、提示される部数はいくつものデータを勘案した結果のもので、理にかなっている。一度決めたら、その部数でどうやって売っていくのかを、担当と一緒に考えていく。

部決したばかりの「ちはやふる中学生編」。新鋭・遠田おと先生の初単行本、2月13日に『ちはや』37巻と同時発売!

いわゆる少部数の作品も少なくはないが、発売前から対策を立て「発売即重版!」を目指して、編集部と販売部、そして宣伝部が協力して動く。今の時代、事前にどれだけアイディアを出して、動いて、巻き込めるかにかかっている。うちの部員に限って言えば、それぞれの作品の魅力や方向性に即した「仕込み」を丁寧にやっている者が多い。実際にここのところ、発売即重版を叶えている作品も増えている。

昨年12月に発売となり、即重版が決まった話題作、安藤なつみ先生の『私たちはどうかしている』4巻。

その後、雑誌編成の調整などをして、夕方からは部員が始める新しい試みの打ち合わせ。ここではまだ詳細を明かせないが、やりたいことにはどんどん挑戦してほしい、という思いで、進捗状況などを確認する。

夜は、社員食堂で夕食。社食では昼食をとることが多いが、夜の業務が長引きそうだなと思った時には、19時前後に社食で食べてしまうことが多い。せめてこういう時くらいはと、野菜多め&玄米というヘルシーメニューにする。

こちらは、ある日の社食での昼食。小鉢を組み合わせて食べること多し。

ご飯を食べながら、編集部のアカウントからツイートで告知を。会社帰りの皆さんの目に触れますように、と祈る気持ちでつぶやく。私はわりとよくツイートするほうだが、タイムラインの情報を見ることは旬の情報収集になるので、毎日必ずまとめて見る時間を作っている。

その後、午後にやり残した雑誌編成作業の続きをして、帰宅。退社時間はマチマチだが、早く退社できる日には、帰り道にある映画館で映画を観ることが多いので、家に着くのは結局“定時”。

 以上が、1月某日の一日の流れです。編集者としてはおそらくオーソドックスかと思いますが、皆さんの想像通りでしょうか? ついでと言ってはなんですが、この日にはなかった業務などについても、下記に補足します。

●校了について
「BE・LOVE」は月2回刊なので、1か月のうち8日間くらいは、夜、校了作業となります。さらに隔月刊の「ITAN」の校了が奇数月に加わるので、2誌の校了が重なる時には「今日は徹底的に校了するぞ!」と気合を入れて臨みます。

校了は、物語の良し悪しはもちろん、誤字脱字、差別表現や絵柄のチェックなど、神経をとがらせる作業のために体力を消耗します。が、面白い作品を読者の皆さんより一足先に読める瞬間でもあり、アラフィフになった今でも、知らない言葉や知らない漢字の読み方に出会うこともあり、ある意味ドラマチックな業務です。

校了に際しての必需品。赤ペン、鉛筆、付箋。
校了紙(確認用の試し刷り)に赤を入れたり、メモしたり、という時に使用。長年使っている辞書はもうボロボロです。

●編成について
前述の仕事の流れでも触れましたが、編成作成、つまり「BE・LOVE」「ITAN」の先のスケジュール、また毎号毎号のラインナップを決める仕事も、編集長の業務。実は時間はかかるけれど、好きな仕事。全力で描いて下さる作品、つまり作家さんの本気を、読者の皆さんに誌面でどう見せるのかを演出します。少年誌だと「巻末に載る漫画は打ち切りも近い?」なんてことがよく言われますが、「BE・LOVE」に限って言えばそうではありません。雑誌を最終ページまでたっぷりと楽しんでいただくために(読者ページも星占いも予告も目次も読んでほしい!)、巻末には大切な作品を配置することがあります。野球でいうところのクローザーのようなイメージでしょうか。最後に読んだら満足できて、次もまた読んでみよう、と思わせてくれる作品に、最後をお任せする、というイメージです。

そんな編成者の考えも想像しながら読んでいただけると、面白いかもしれません。

発売中の「BE・LOVE」3号の編成表。“台割”
とも呼んでいます。呼び名の由来は、長くなるので、ここでは割愛。

●食事について
編集者は美食家が多く、美味しいお店も沢山知っているというイメージ、今もありますか? もちろん美味しい食事にありつけたらいいですけど、現実はそうもいきません。

私は前述の通り、社食をよく使いますし、気分転換に外に出かけたい、でも遠出はできない、という場合には、会社の前にある吉野家か、ファミレスのロイヤルホストに行きます。
ロイヤルホストはテーブルが広く、書類などを広げて読むのに重宝しています。第二のデスクと言っても過言ではありません。

入社してしばらくは、美味しいお店を求めてあちこち行くこともありましたが、最近は仕事>食事、です。これでいいのかどうかは、自分でもわかりませんが、時間は有限、優先順位がつくのは仕方ないですね…。

 以上、日常を書き連ねただけになってしまいましたが、こうした日々を送りながら、雑誌や単行本を皆さんのもとにお届けしています。少しでも「BE・LOVE」や「ITAN」に興味や愛着を持っていただけたら嬉しいです。

 長くなりましたが、最後に毎回テーマに即した本をご紹介していますので、今回も2冊選んでみました。

 編集長の一日を日記風に書き出してみた今回、ということで、私の好きな「日記」をご紹介します。

 内田百閒『東京焼盡』(中公文庫)と、山田風太郎『戦中派不戦日記』(角川文庫)。いずれも著者の戦中の日常を描いた日記です。「BE・LOVE」で『あとかたの街』を連載し、初めて名古屋の戦時中の日常に触れ、「名古屋どころか、東京の当時も知らない!」と思った時に、一気に読みました。空襲があろうが酒を愉しむ内田百閒、昭和20年を葛藤の連続で過ごした山田風太郎。にじみ出る人柄を楽しめるのが日記の面白いところ。教科書には載っていない戦中のリアルがよくわかりますので、オススメです。


 ということで、「BE・LOVE」3号は戌年ということで、盲導犬漫画「ハッピー!ハッピー♪」の表紙で、絶賛発売中。2月1日には「ちはやふる」が表紙の「BE・LOVE」4号が発売になります。ご期待ください!

「BE・LOVE」最新3号は絶賛発売中! 次号4号は2月1日発売!!

BE・LOVE」3号(講談社)

岩間秀和(いわまひでかず)編集長
1993年講談社入社以来、BE・LOVEひと筋。2012年2月より編集長に。
BE・LOVE編集部では、新・想像系コミック誌「ITAN」も編集しています。

▶『BE・LOVE』公式サイトはこちら

【連載バックナンバー】
第1回:『ちはやふる』に続け! 創刊37年『BE・LOVE』編集部が今求めている女性向けマンガは?
第2回:漫画編集者の仕事は“作品の伴走をする”こと――『BE・LOVE』編集長が語るその裏側
第3回:『たそがれたかこ』『傘寿まり子』…“高年齢ヒロイン”作品が好調のワケ

▶次回の岩間編集長のコラムは、2月15日頃更新予定です!