大好きだからこそ、その手を『リジーと雲』【NEXTプラチナブック】

文芸・カルチャー

公開日:2023/7/2

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2023年5月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!

リジーが選んだのは、ふつうのかたちの雲。リジーはミロと名づけ……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『リジーと雲』。ファン・ブラザーズが手がけるささやかで愛らしいファンタジー絵本。どんな内容なのでしょう。

NEXTプラチナブックとは…?

絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。

そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。

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大好きだからこそ、その手を『リジーと雲』

リジーと雲

作:テリー・ファン エリック・ファン訳:増子 久美

みどころ

おかあさんとおとうさんとおさんぽに出かけた公園で、リジーがまっすぐにかけよったのは、雲うりのおじさんのところ。まるくてほわほわだったり、オウムやウサギ、ゾウのかたちをした雲もありましたが、リジーが選んだのは、ふつうのかたちの雲。

雲とのくらしには、決まりが色々あります。リジーは名前をミロとつけ、毎日ていねいに水をかけ、お天気が良い日にはおさんぽに連れていき、いっしょうけんめいお世話をしました。季節はめぐり、もくもく、もくもく、ミロはどんどん大きくなっていきます。そして、とうとうリジーの部屋の天井をすっぽりと覆いつくすまでになり……。

ミロは大きいわけでも、おしゃれなわけでもない、ふつうの雲。

でも、リジーにとっては最高のすてきな雲。その愛情のかけかたを見ていると、なんだかミロがとっても可愛く見えてくるから不思議です。どんな時でも一緒のリジーとミロ。だからこそ、リジーが好きなことも、機嫌が悪い理由もわかるのです。その手を離さなくてはならないタイミングも。

テリー・ファン&エリック・ファン兄弟が、雲をながめる人たちに贈る、ささやかで愛らしいファンタジー絵本。リジーのまわりはいつもほんのり曇っています。部屋の中でも、晴れている空の下でも、海辺に出かけた時だって。けれどその景色はとても魅力的。

空を見上げるリジーの思い、きっと届いているはずですよね。曇りの日が好きになりそうです。

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編集長のおすすめポイントは……

今、ミロはどこにいるのかな

雲と一緒にくらす。それも部屋の中で。考えもつかなかったことだけれど、絵本の中で、リジーとミロは実に仲良くやっているのです。水をかけてあげる時のミロはどんな反応をするのかな、おかえしに植物に水をかけてくれるなんて粋なことをしてくれるな、大きくなってもミロはやっぱり軽いのかな、せまいところにいるミロは……。読んでいるうちに興味がとまらなくなって、最後のシーンはやっぱり少し寂しくなるのです。気がつけば、自然に空を見上げていたりして。この先も時々思い出してしまいそうな一冊です。

磯崎 園子(いそざき そのこ)

絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。

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