<連載⑥>やさしいひかりをありがとう『14ひきのおつきみ』 (童心社)

文芸・カルチャー

公開日:2023/8/8

40周年をむかえた「14ひきのシリーズ」。
刊行された順にシリーズ作品をご紹介している連載企画、第6回です。

今回は1988年に刊行された『14ひきのおつきみ』です。

14ひきのおつきみ

作・絵:いわむら かずお

みどころ

色づいた葉と、どんぐりの実の揺れる太い樫の木を登り、ねずみながらの小技を使ってお月見台作りに奮闘する子供たちの姿が、実に生き生きとしています。その光景を木の上から描写した構成は立体的で、まるで迷路を見ているかのよう。「自分たちも上ってみたい」と、うらやむ小さな読者も、きっといることでしょう。
 夕日が沈み、満月が昇る場面は壮観です。ススキを飾り、月見だんごをお供えするお月見の風習を知ることができますね。
 自然の気高さと、自然と共存する美しさが描かれた、日本の秋がいっぱいの作品です。
――(ブラウンあすか)

おつきみの日、14ひきは手づくりのお月見台を木の上につくっています。
おだんごをおそなえしました。くりのみやどんぐりも。

まっかな夕日がしずんで、夜がやってきました。

山のむこうから、「でた、でた。」まんまるのおつきさん。
自然の恵み、やさしいひかりにありがとう。14ひきのしずかな夜です。

本作の制作にあたって、いわむらさんは「夕方の観察をした」といいます。

それは、外に出て、夕方の時間を体で感じるということ。日が暮れていく様子が描かれていますが、それは「太陽を描かずに太陽を描くこと」でした。絵本の中にもある「夜が広がっていく」ということをいわむらさん自身が強く感じたそうです。

advertisement

14ひきのおつきみ

作・絵:いわむら かずお

ポケットえほん 14ひきのおつきみ

作:いわむら かずお

あわせて読みたい