おじいちゃん、おばあちゃんの絵本(2023年9月 新刊&おすすめ絵本)

文芸・カルチャー

公開日:2023/9/21

おじいちゃん、おばあちゃん。子どもたちにとってその存在は、お父さん、お母さんとも違う、特別なものですよね。

自分が生まれたときから、おじいちゃんはおじいちゃん、おばあちゃんはおばあちゃん。でも、自分が生まれる前は、おじいちゃんはお父さん、おばあちゃんはお母さん……。
おじいちゃんも、おばあちゃんも、子どもであり、孫だったときがある。
そう思うと、なんとも果てしなく不思議な感じがします。

個性的でステキなおじいちゃん、おばあちゃんたちが登場する、たくさんの絵本が集いました。
エネルギッシュで、好奇心旺盛で、おおらかで温かくて、優しくて。
ずっとずっと変わらないようで、おじいちゃん、おばあちゃんも一日一日、子どもたちと同じように歳を重ねていく、変わっていく姿を描いた本もあり、印象的でした。 常に私たちの先を行くその後ろ姿を、しっかりと目に焼きつけておきたい。

子どもたちにとってのおじいちゃん、おばあちゃん、パパ・ママにとってはご自身のお父さん、お母さんを思い浮かべながら、絵本を開いてみてください。

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おじいちゃんのおじいちゃんはどんな人?ユーモアたっぷり、家族のつながりにグッとくる長谷川義史さんデビュー作『おじいちゃんのおじいちゃんの おじいちゃんのおじいちゃん』

おじいちゃんのおじいちゃんの おじいちゃんのおじいちゃん

作・絵:長谷川義史

出版社からの内容紹介

「ねえ、おじいちゃん。おじいちゃんのおじいちゃんはどんなひと?」
5歳の男の子の素朴な質問から、時がどんどんさかのぼる。
おじいちゃんからおじいちゃんへ、そのまたおじいちゃんへ……。
そしてたどり着いたところは、原始時代!
「ぼくのおじいちゃんはおさるさんなの?」
大胆な構図とユーモラスな仕掛けで、読むものを引きつけ、笑いを誘う、長谷川義史の初めての絵本です!

いばりいぬのじんべい『ゆうたのおじいちゃん』の家に!一緒に散歩に出かけると……ロングセラー「ゆうたくんちのいばりいぬ」シリーズ30周年記念に生まれた絵本

ゆうたのおじいちゃん

作:きたやまようこ

出版社からの内容紹介

ゆうたがおじいちゃんの家へあそびにいくときは、もちろん、いばりいぬのじんぺいもいっしょ。おじいちゃんがはりきって散歩にさそうと、じんぺいはしっかりつきあってくれる。その様子に、ほのぼのしたり笑顔になれるおはなし。ロングセラーシリーズとなった「ゆうたくんちのいばりいぬ」が生まれて30周年! いまもかわらず「いばり顔」のじんぺいが愛らしい。「おじいちゃん」の巻「おばあちゃん」の巻の2冊同時刊行の記念出版。

病気になり都会に越してきたおじいさん。元気を失う様子を心配した孫娘は……2人の心のふれあいが沁み入る『おじいさんのハーモニカ』

おじいさんのハーモニカ

作:ヘレン・V・グリフィス 絵:ジェームズ・スティーブンソン 訳:今村葦子

出版社からの内容紹介

都会に越してきたおじいさんが元気のないことを心配する孫娘。ふたりの心のふれあいをあたたかな色調で綴った絵本。

おじいちゃんが大切に育てたブロッコリー。食べごろだけど、孫のリリーちゃんと一緒に収穫する約束をしていて……『ブロッコリーじいちゃん』

ブロッコリーじいちゃん

作・絵:こばやしかおり

出版社からの内容紹介

野菜はみんな、誰かに大事に育てられて、成長します。
とてもありがたいことです。
でも、せっかく大きくなったのに、
採らずにそのままにされた野菜は、どんな気持ちかな?
という想いを元に、制作した絵本です。
家庭菜園が趣味の義理父と、娘をモデルに描きました。

本作で、NPO法人幼年教育・子育て推進機構
創作童話・絵本・デジタル絵本コンテストの創作絵本部門にて、
厚生労働大臣賞を受賞しました。(2023年3月)

完熟の皮を脱いだのは……『じいちゃんバナナばあちゃんバナナ』大変身してパーティーへ! ユーモアたっぷり、スイーツがおいしそうな絵本

じいちゃんバナナばあちゃんバナナ

作・絵:のしさやか

みどころ

バナナくんは5人家族。
おとうさん、おかあさん、バナナくん、それからおじいちゃんとおばあちゃん。

おとうさんとおかあさんは黄色いバナナ。
バナナくんはまだ青い、緑色。
おじいちゃんとおばあちゃんは、ちょっと茶色い模様が浮き出たバナナです。

ある日おむかいのバナエさんが、おばあちゃんに言います。
「あらあら、あなたじゅくしてきたわね」
おばあちゃんは「まあ、それはおたがいさまよ」と笑います。
そう! バナナは熟してくると茶色っぽい模様がでてきて、皮がやわらかくなってくるんですね。
さて、ある日、バナナの皮につるっとすべって転んだバナナくん。
どうやらおじいちゃんが脱いだ皮のようですが……。
おじいちゃんはどこ? あれ、おばあちゃんもいない!?

家のお風呂場や冷凍庫から、変身したおじいちゃんとおばあちゃんが登場する場面にびっくり。
この絵本を読むと、バナナってこんなにたくさんの美味しそうなものに変身できるのね!とわくわくしちゃう。
バナナスイーツのページに、もうくぎづけです。
どのおやつも美味しそう!

年をとっていい色になって、熟してあまーくなって……。
どんな完熟バナナになって変身しようかしら……。
そう考えると熟していく人生もわるくない!
ユーモラスで美味しそうな、子どもたちが大好きなバナナの絵本です。

目の前にカミナリ親子が落ちても、とんでもない展開が待っていても、おじいちゃんは『いいから いいから』おおらかで心ほぐれる人気作

いいから いいから

作:長谷川義史

みどころ

ある日の夕方、雷がゴロゴロ鳴ったかと思ったら、目の前にいたのはなんとかみなりの親子!トンデモナイ状況です。ところがおじいちゃんは言うのです。

「いいから、いいから。
 せっかく来てくださったんじゃ。
 ゆっくりしてください。」

言われるままに、お茶をいただくかみなり親子。おじいちゃんに勧められるまま、申し訳なさそうに夕ご飯も一緒に食べて。そのまま今度はお風呂へどうぞ。さすがに遠慮するかみなり親子。

「いいから、いいから」

かみなり親子は一体いつまで家にいるのでしょう。そもそも彼らの目的は……?この後、さらにトンデモナイ展開が待っているのですが、どうやら振り回されているのはかみなり親子だけでなく、私たち読者も一緒。だけど、どうでしょう。

「いいから、いいから」

満面の笑みでおじいちゃんにそう言われたら、何だかとっても気持ちよくなってきて。本当に全部「いい」気がしてきます。体の力だって抜けてきます。もうみんな。いいからこの絵本を読んで、小さな事で「カリカリ、イライラする」のはやめて笑っちゃいましょう! 長谷川義史さんの大人気シリーズの記念すべき第1作目です。

元気を失い笑わなくなったばあばに、笑顔を取り戻したい!人生の「よろこび」とは何かを伝える温かな物語『ばあばに えがおを とどけてあげる』

ばあばに えがおを とどけてあげる

文:コーリン・アーヴェリス 絵:イザベル・フォラス 訳:まつかわまゆみ

出版社からの内容紹介

ばあばはこのごろ元気がない。ケーキも焼かないし、お部屋もほこりだらけ。そして、笑わなくなった。「じんせいから よろこびが きえちゃったみたい」って、ママはいう。

「よろこびって?」
「ひとの こころを しあわせに して、めを かがやかせる ものよ」
「ばんごはんの あとの ダンスみたい? すべりだいを ワァーイ!って すべるみたい?」
「そうよ! すばらしく すてきな ワァーイよ!」

「ばあばは ワァーイって したいんだ!」。ファーンは、ばあばの人生に「よろこび」を
とりもどしてあげようと、「ワァーイ!」を探しに出かけます。
わたしたちに「よろこび」の意味をやさしく教えてくれる、おばあちゃんと孫娘のあたたかな物語です。

おばあちゃんに会いたい! 孫のよおちゃんに会いたい! 同じタイミングで出かけた2人はすれ違いばかり。でも……!『はやく あいたいな』

はやく あいたいな

作:五味太郎

みどころ

ある日、よおちゃんは急におばあちゃんに会いたくなりました。
丘の上に住んでいるよおちゃんは、バスに乗って出かけます。

その頃、おばあちゃんも急によおちゃんに会いたくなります。
山の上に住んでいるおばあちゃんは、電車で出かけます。

…ということは? 
大変!
よおちゃんとおばあちゃんはすれ違いでお家に着いてしまったので、ふたりとも急いでかえります。おばあちゃんはタクシーで、よおちゃんはトラックで。

…ということは?
ふたりはまたまたすれ違い。
だけどね、ふたりはのんびり待ってなんていられません。
だって、今日おばあちゃんに会いたいのですから。
よおちゃんに会いたくて仕方がないのですから!

なんて素敵な関係なのでしょう。
思い立ったらすぐ行動。願いが叶うまであきらめない。
ふたりは息がぴったりです。
最後にふたりで交わす、ふたりだけの約束が私は大好きです。

親と子とはまた違う、相手を想い合うおばあちゃんと孫との関係がパワフルに伝わってきて、元気になれる一冊です。

おじいちゃん、おばあちゃんが植えたどんぐりが、子リスたちの元へ。いもとようこさんが描く世代を超えてつながる想い『ありがとう』

ありがとう

作:いもとようこ

出版社からの内容紹介

どんくり山へでかける、りすの親子。
大好きなどんぐりをたくさん集めて「いただきまーす! 」
そのどんぐりは、ずっと昔、おじいちゃんやおばあちゃんが子どもの頃みんなのために植えたもの…。
それは、過去から現在そして未来へと、世代を超えてつなげられる遥かな想い。

いもとようこが描く世界は、愛らしく、美しい。
作者の祈りといえる深い想いは、繊細な貼り絵をとおして、確かなぬくもりのある絵本になる。
食べること、生きること、生命(いのち)をつないでいくこと…「ありがとう」の感謝の気持ちがあふれます。

行動はゆっくりゆっくり、でもお皿に残ったごはんつぶを集めるのは『おばあちゃんスプーン』の役目! ごはんの時間が楽しくなる絵本

おばあちゃんスプーン

作:ふくだじゅんこ

みどころ

「みんな、あつまってくださーい」

ごはんの時間になると、テーブルの上ではこんな声。

「おっと、みいちゃんがよんでるね」

最初にゆっくり歩きだすのは、おばあちゃんスプーン。すると、うしろからスプーンくんがびゅんっ!と追い抜き、コップくんとフォークちゃんはとっとことっとこ、おはしちゃんたちもぴょんぴょんとおばあちゃんスプーンを追い越していきます。おさらくんも揃ったところで、みいちゃんは「いただきまーす」。あれあれ?

まだゆっくりゆっくり歩いているのは、おばあちゃんスプーン。でも大丈夫。おばあちゃんスプーンの役割は、これからなのです。

「やれやれ、またせたねえ。さてと」

毎日のご飯の時間を舞台に、テーブルの上で繰り広げられる可愛らしい物語。主役はみいちゃん……と思いきや、食器たち。おばあちゃんスプーンの腰は曲がり、年季も入っているけれど、素敵なワンピースやメガネがとっても似合っているし、小さい向けの食器たちは丸みを帯びて元気でとっても愛らしく。ふくだじゅんこさんの描くキャラクターたちが、テーブルの上で生き生きと動きまわります。

こんな風にみんなに応援されたら、最後のひとくちまで残さず食べられちゃいそうですよね。ごはんの時間をもっと楽しくしてくれる絵本です。

おばあちゃんの誕生日、プレゼントを届けに出かけたかものはしくん。寄り道の度に忘れ物をしちゃって、大丈夫?!『かものはしくんのわすれもの』

かものはしくんのわすれもの

作:かないずみさちこ

みどころ

かものはしくん、今日はとびきりおめかしをして家を出ました。
だって今日は、おばあちゃんの誕生日!
大切なプレゼントをかかえて、おばあちゃんのおうちにむかいます。

おともだちに会ったり、大好きな水場に寄ったり、カフェで休んだり。
あちらこちらへ寄り道しているうちに…。
ちょっと、かものはしくん! わすれものわすれもの!

忘れんぼうのかものはしくんと、忘れものを届けようとそのあとを追いかけるハリネズミくんの追いかけっこ。
どうぶつたちのつぶらな目がかわいいなあ、なんて読みすすめていくと──
あれ? なんだかようすがおかしいぞ…?
物語はじょじょに奇妙なふんいきに。

予測不能の衝撃展開!
いったいだれがこれを予測できるでしょう?
よくよく表紙をながめれば、なるほどたしかにヒントはありますが…。
かものはしくん、わすれんぼうにもほどがあるよ……。

びっくりして「きゃー!」
それとも「きょとん?」
「そんなバカな」でゲラゲラ?

この絵本を読んで、みんなはどんなふうに感じるんだろう?
そんないたずら心をくすぐられ、「この絵本、読んでみて!」と、きっと人にすすめたくなる一冊です。

72歳、一人暮らしの『エマおばあちゃん』お祝いにもらった絵をきっかけに、自分も描いてみようと思い立ち……大人の心にも響く絵本

エマおばあちゃん

作:ウェンディ・ケッセルマン 絵:バーバラ・クーニー 訳:もきかずこ

出版社からの内容紹介

72歳で、ひとりぐらしのエマおばあちゃん。ふだんは、しましまねこと静かにくらしています。お誕生日にあそびに来た子どもや孫たちからお祝いにもらった絵をながめているうちに、おばあちゃんは自分でも絵を描いて見たいと思いたちますが…。素朴で、味わい深い絵本です。

NHK連続テレビ小説「なつぞら」モデルのアニメーターが描いた紙芝居が絵本に!心温まるおはなしとイラスト『おばあさんとあひるたち』

おばあさんとあひるたち

作:ホープ・ニューウェル 絵:奥山玲子 訳:光吉夏弥

出版社からの内容紹介

NHK連続テレビ小説「なつぞら」ヒロインのモデル 奥山玲子が描いた紙芝居を初の絵本化!
訳者は児童書翻訳のレジェンド光吉夏弥。

2019年上半期のNHK朝ドラ「なつぞら」ヒロインのモデルは、アニメーターの奥山玲子と言われているが、その奥山がアニメーターをしながら絵本作家としても活躍していた頃の作品。
1985年に紙芝居として描かれた絵を、絵本として初出版!!
アニメーターとしての経験で培われた奥山の温かな絵の魅力が存分に生かされている。
おはなしの作者は『あたまをつかった小さなおばあさん』で人気が高いホープ・ニューウェル、翻訳は『ちびくろ・さんぼ』や『ひとまねこざる』で有名な光吉夏弥と、豪華な組み合わせ。
「なつぞら」ヒロインも絵本作家になるかも!?
朝ドラを観ていない子どもたちも楽しめる、読み聞かせにもピッタリの一冊!!

▼内容
温かい羽毛布団が欲しくなったおばさんは、羽毛をもらおうとあひるを飼うことにする。
しかし、羽毛をもらったら、あひるたちが寒い思いをするかも… と心配したおばあさんは、自分の古くなった毛布であひるたちにチョッキを作ってあげる。
おばあさんお手製の赤いチョッキを着てご機嫌のあひるたちも、あひるにもらった羽毛で布団を作ったおばあさんも、みんな幸せいっぱい!

※本書は、1985年・教育画劇刊の紙芝居『おばあさんとあひるたち』を再編集した新刊絵本です。

モノクロームで描かれ、限りなくシンプルな言葉で紡がれた一本の桜の木の一生。人生にも重なる物語『一本の木がありました。』

一本の木がありました。

作:くすのきしげのり 企画・原案:くすのきしげのり、ふるやまたく 絵:ふるやまたく

みどころ

山の渓流沿いに立つ、桜の木。花盛りのときは鳥がまわりを飛び、人間に写生される美しい木。やがて嵐で折れ、川に落ちて、流されていきます。滝を下り、下流で老人に拾われた木は、小枝を折り取られ削られて、その夜の糧となる食料を焼く道具となり、加工されて木彫りのペンダントやおもちゃになります。小枝が取られた後の、年輪が見える大きな枝は、海まで流れてまた嵐に遭い……。

モノクロのドローイングでシンプルに描き綴られる「木」の物語。文章は限界まで削ぎ落とされ、「一本の木がありました。There was one tree.」が幾度か節目に登場するだけです。そのかわり、8B鉛筆で描かれたというスケッチのような豊かな黒い線を、読者は目でなぞり、勢いよく川に落ち、海まで流れていく木を追うようにイメージを広げていきます。

折れ、流れ、加工され、姿を変え、大海原を漂い、いつかは流木となっても……。木は、一本の木であることは変わらないこと。木が木であることを確かに描きながら、巡り、巡るものの存在感、普遍性を力強く優しく見せてくれる絵本です。

作家のくすのきしげのりさんと、画家のふるやまたくさんがタッグを組んで、人生への思いを込めた意欲作。大人にも、年配の方への贈り物にもいいかもしれません。もちろん、子どもと絵をじっくり眺めて、「木」と一緒に旅をするのもおすすめです。不器用で静かな情熱が伝わってくる作品です。

【動画】もっと知りたい!好奇心を育む 絵本・児童書22選

文:竹原雅子 編集:木村春子

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