動くことで切り開いてきた、自分たちの物語。『旅するわたしたち On the Move』【NEXTプラチナブック】

文芸・カルチャー

公開日:2023/10/7

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2023年8月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!

一歩、また一歩、わたしたちは何万年も旅してきた……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『旅するわたしたち On the Move』。ウクライナの作家による、万物の移動を描いたというこの絵本。いったいどんな内容なのでしょう?

NEXTプラチナブックとは…?

絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。

そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。

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動くことで切り開いてきた、自分たちの物語。『旅するわたしたち On the Move』

旅するわたしたち On the Move

作:ロマナ・ロマニーシン アンドリー・レシヴ 訳:広松由希子

みどころ

400万年前、2本足で立ちあがり、歩き出してから、私たちは一歩、また一歩、何万年も旅してきた。

くつをはき、スキーやカヌーが発明され、他の大陸に移動し、気候の変動や災害などを理由に旅に出て、定住しない人たちもあらわれた。陸の上を、水の中を、空をわたって。

その目的もさまざま。知らない場所へ、自分だけの道をもとめて。海の底から世界のてっぺんまで、あるいは地球の果てまで。さらに遠く、未知の宇宙へと旅を続ける。時には迷い、方向を変え、自分を見失いそうになりながら。私たちは旅をする。地図やコンパスもなしに移動する生きものたちもいる。

「人の行くところに 道はできる」

昔からの言いつたえの通り、人は探検、戦争、避難、巡礼、観光……いろんな理由で旅に出る。

蛍光インクによる目にも鮮やかな印刷が特徴のこの絵本。万物の行動原理である「動く」ことをテーマに、「移動」や「旅」「冒険」を、歴史や文化、人類の進化をたどりながら、壮大なスケールの物語を美しいビジュアルで見せてくれます。

作者はウクライナの絵本作家・アーティストである ロマナ・ロマニーシンとアンドリー・レシヴ。新型コロナウィルス感染症が世界中にまん延し、人々の行動が制限された2020年にウクライナで刊行されました。2021年には国際的な絵本賞であるナミコンクールをはじめ、ヨーロッパ・デザイン賞など計5つの賞を受賞し、今回の日本語版のほかにも、世界14言語での翻訳出版が決まっています。

描かれているのは新しい世界への探求心、出会いへの憧れ、今いる場所からの自由。どこに向かっていても、立ちどまっていても、これは一人ひとりが生みだしていく、自分だけの物語でもあるのです。私たちは旅を続けます。いつか懐かしい風景が見えるまで……。

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編集長のおすすめポイントは……

旅の途中なのかもしれない

数年前までは、自分たちの行動や移動を制限されるなんて、想像すらしていなかったはず。けれど、その不自由さに触れて、はじめて自分たちは常に移動している生き物なのだということに気が付かされるのです。自分は何かに動かされているのか、あるいは自分で動こうとしているのか。もしかしたら、この当たり前の毎日だって、どこかに向かっている旅の途中なのかもしれないし、明日になれば、突然向かう方向が変わることだって、あるかもしれない。図鑑のように解説されるこの美しい絵本を読みながら、今いる自分の場所のことを思うのです。

磯崎 園子(いそざき そのこ)

絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。

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