研究者だったからこそつくれる、人体の”驚き”と”感動”がつまった図鑑とは クリエイター・インサイド『学研の図鑑LIVE 人体 新版』(Gakken)

文芸・カルチャー

公開日:2023/11/30

 Gakkenが生み出す、数々の個性的で魅力的な商品・サービス。その背景にあるのはクリエイターたちの情熱です。(株)Gakken公式ブログでは、ヒットメーカーたちのモノづくりに挑む姿を、「インサイド・ストーリー」として紹介しています。

 今回は『学研の図鑑LIVE 人体 新版』の編集を手掛けた、松原由幸です。

学研の図鑑LIVE 人体 新版

監修:阿部和厚

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出版社からの内容紹介

▼▼▼図鑑で動画で3DARで3歳からずっと使える「人体図鑑の決定版」登場!▼▼▼

シリーズ累計250万部!「学研の図鑑LIVE 人体 DVDつき」がパワーアップした新版として発売します。
人の体は不思議がたくさん! CGイラストや顕微鏡写真などの本格ビジュアルで、直感的に体のしくみに興味をもつきっかけをつくります。
臓器の解説は、「体のどこにあるか」から始まり、つくり・はたらき・細部までが見開き1ページで分かるように工夫にしています。
3大特典の1つ、完全オリジナルのDVDは、アスリートによる走り方教室や、内臓を覚える歌など年齢問わず楽しめる内容です。
新しくなった「学研の図鑑LIVE 人体 新版」で人体の不思議な世界に飛び込みましょう!

【本誌 進化した10のポイント】
■胃はどこにあるんだろう?臓器の場所から、つくり・はたらき・細部までが見開き1ページで分かるように工夫にしています。
■掲載数No.1! 高精細の電子顕微鏡写真でミクロな本物の世界を実感することで、子どもの好奇心を引き出します。
■楽しく読める!血管のネットワークや腸内細菌の拡大図など、迫力のビジュアルで体の不思議に興味をもつきっかけをつくります。
■分かりやすい図解で、小学4~6年生の理科の教科書の先取り学習や、中学入試対策にもつながります。
■感染症、予防接種や食育など、時代に合わせた新しいテーマを追加し、今の子どもたちに必要な情報を盛り込んでいます。
■総監修は北海道大学の阿部和厚名誉教授。改訂にあたり監修に医師が3名加わり、より詳しくなりました。
■軽くなった紙と本誌の角を丸くカットする加工で、小さなお子さまでも安全にお使い頂けます。
■あらゆる人に見やすく読みやすいユニバーサルデザインフォントを採用しています。
★自分の体にあててみよう!臓器の場所がわかる「本当の大きさ内臓」ポスターがもれなく付いてきます。
★ARアプリで楽しめる!人体骨格が動く3DCGや体内の様子を解説する動画も楽しめます。
 <収録AR一覧(3DCG他)>脳/心臓/骨格/頭蓋骨

【動画 進化した5のポイント】
●「体験!走り方教室」では、アスリートから体のしくみを利用した、かけっこが速くなる方法を教わります。
●指が動かなくなる!?「体を使ったマジック実験」を、おうちで家族と一緒にやってみましょう。
●一度聞いたら頭からはなれない! オリジナルソングで、臓器の名前と特徴が覚えられます。
●学習図鑑史上初!DVDに加えて、スマホやタブレット等でも視聴可能で、いつでもどこでも動画が楽しめます。
●数多くの子ども向け人気番組を手掛ける映像制作会社DIRECTIONS制作の完全オリジナルの動画です。

 かつて大学で生物の骨格の研究をし、大学院で博士課程まで修めた経歴を持つ編集者・松原由幸は言う。

「人の体って本当によくできているんですよ」

 今回、松原が作り上げた新たな図鑑 は『学研の図鑑LIVE 人体 新版』。 目に見えない部分を扱う『人体』の図鑑は、『恐竜』『動物』などの図鑑に比べて、子どもたちにわかりやすく伝えるのが難しいテーマだ。その“難しさ”を、いかに解消するか。松原の努力に迫る。

「これはぜんぶ、きみの物語」

 「まずは読者に、体というものに興味を持ってもらいたい」。そう考えた松原が図鑑の冒頭にかかげたのが〝これはぜんぶ、きみの物語″というメッセージだ。

 さらに読者自身と重ね合わせてイメージしてもらうため、「食べる」「考える」など子どもたちが生活しているシーンの写真を図鑑の各所にちりばめた。

「そもそも人体図鑑に書いてあることって全部、わたしたち自身、読者自身のことなんですよね。子どもたちに、そこをちゃんと伝えたかったんです。その上で主体的に、前のめりに読んでもらえたら一番いいなと思って 」

 どうすれば人体の面白さを読者に届けられるか。制作にあたっては、「人体」をテーマにした他の学習図鑑にも目を通した。情報量を多くして解説する、あるいはインパクトのある写真をたくさん並べるなど、それぞれ読ませる工夫をしていた。

 松原自身、「学研の図鑑LIVE 新版」シリーズの『恐竜』を担当した際には、高精細なイラストをたくさん掲載し、読者を楽しませてきた。しかし『人体』では、同じことをしただけでは足りない気がした。『人体』の図鑑が、“内容を理解してこそ楽しめるもの”だからだ。

 松原は専門書を読み漁り、研究者だったころの知識も総動員しながら熟考を重ね、その結果たどり着いたのが、“人体を階層性とつながりで表現する”という切り口だった。

“階層性とつながり”で、人体を丸ごと表現する

“階層性とつながり“とは何か。松原は解説する。

「人体は、会社の組織構造に例えると分かりやすいです。たとえば出版社なら、編集の部門があって、営業の部門があって、広報の部門があってというように、役割ごとに部門が分かれています。その中で営業ならば、何営業課というように課に分かれ、その課の中に複数のチームがあるわけです。つまり組織は「部→課→チーム」のような“階層”があり、それぞれの階層が“つながって”、成り立っているわけです」

 人体も、大きな役割のちがいによって骨格系、消化器系、神経系などの「器官系」という部門に分かれている。消化器系は、食道、胃、小腸などの「器官」に分かれ、器官は表皮や神経などの「組織」から成り、組織も「細胞」が集まってできている。

「つまり、人体にも会社の組織構造のような“階層”があって、それらがつながって人体を形作っているんです。この“階層”と“つながり”をクリアにイメージできることが、“人体をわかる”ということだと捉えました」

まるで人の体のようなレイアウト

 “階層とつながり”を読者に分かりやすく伝える。その命運を握るのは図鑑のレイアウトだと、松原は考えた。レイアウトイメージをじっくりと練り上げると、特集や写真ページを除いた、100ページに及ぶ本編のラフを、一気に書き上げたという。

「この期間は、ほんとうに集中していましたね。楽しくて仕方がない感じでした。今までになかったものが目の前に現れてくる瞬間の連続でしたから」

 まず本編の冒頭に配したのは、8つの器官系を全部見渡せる、人体イラストの一覧ページである。

▲冒頭の観音開きのページ。「骨格系」「消化器系」「循環器系」などの器官系ごとに全身を見せるイラストが並ぶ。

 

「この一覧ページの人体イラストの一つ一つは、本編で器官系ごとに区切った各章の冒頭にも掲載しています。こうすることで各器官系の位置関係がひと目でわかるようになっています」 

 各章のページの関連づけも意識した。たとえば消化器系は、一本の管の中を食べ物が通過しながら栄養を吸収していくため、器官同士の前後のつながりがとても大事になる。

 そこで、紙面の左側に場所を示すイラストを掲示し、『胃のつづきがこれ、そのつづきがこれ』というように、位置的な関係性を理解しやすくした。さらに、

「見開きのページは視線を左から右へ移動させるだけで“場所、つくり、はたらき、細部”の関連性が見渡せるようになっています」

学研の図鑑LIVE 人体 新版

監修:阿部和厚

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