入園おめでとう! おともだちいっぱい絵本(2024年3月 新刊&おすすめ絵本)

文芸・カルチャー

更新日:2024/3/26

入園おめでとうございます。親から離れて初めての集団生活。親にとっても子どもにとっても、一番の心配の種はやはり「友だちできるかな……」ではないでしょうか。

友だちって何? どうやったら友だちになれるの? そんなふうに身構えなくても、絵本の中の動物たちや子どもたちが教えてくれます。たとえば『こぐまのともだちはどこ?』のなかで、「ともだちはどこ?」と一緒になって探す2匹のクマをお手本にしてみてください。(隣にいるのは、もしかして?)他にも、「わっはっはー」と笑い合ったり、みんなでおにぎりを食べたり、喧嘩したって次の日には仲直り。たくさんの友だちのかたちを知れば、「友だちできるかな」という不安も、「友だちを作らなきゃ」という焦りも吹き飛びます。できないことを助け合い、広い世界へ連れ出してくれる姿には、「友だちっていいかも」と思ってもらえるはず。

はじめてだって、きっと大丈夫。たくさんの友だち絵本に勇気をもらって、胸を張ってお子さんを送り出しましょう!

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離れ離れになっても、心は繋がっているよ。大好きな友だちの引っ越し、初めて経験する別れの気持ちを描いた『ぼくとクッキー さよならまたね』

ぼくとクッキー さよならまたね

作・絵:かさい まり

出版社からの内容紹介

ぼくとクッキーは大の仲良し。ところが一大事!突然、クッキーが引っ越してしまうことになって…。初めて経験する別れの気持ちを描いた心にしみるお話。

料理は得意だけど掃除が苦手なドンと、掃除は得意だけど料理は苦手なミミ。凸凹を助け合う友情のかたち『ともだちだもん!』

ともだちだもん!

作:ジュディ・デルトン絵:いもと ようこ

みどころ

人にはそれぞれ得意なこと、不得意なことがあって、誰かが得意なことでも、ほかのだれかは不得意なこともあります。この絵本は、そんなおたがいの“ちがい”が紡ぎあげた友情のお話しです。

うさぎのミミは、おそうじが大好きで大得意。おへやはいつもピカピカです。今日は、くまのドンを招待しています。ドンは、
「ミミの うちは きれいで きもちが いいなあ」
とうれしそう。ですが、ドンはおそうじが好きじゃないので、どろのついた足でミミのおへやを汚しても気にしません。

そして、
「ぼく ちょっと おなかが すいたなあ。なにか たべるもの ある?」
と言います。
実は、ミミはお料理が苦手。食べるものは用意してありません。そこで、ドンは持ってきたおせんべいを、ぱりぱりぱりと食べ始めます。おせんべいのかけらは、ミミのきれいなおへやに飛びちります。
「あらら……」
ミミはこまりがお。

こんどは、ミミがドンのおうちにやってきました。
お料理が得意なドンは、おいしそうなニンジンドーナツをミミに作ってくれていました。ですが、洗い物もおそうじも苦手なドンのおうちは、お皿もフォークも汚れたまま。二人は手でドーナツを食べます。

それから何日か過ぎましたが、ミミはドンのおうちを訪ねることはありませんでした。
「ぼくの うちが ちらかってるから、いやに なったのかなあ」
と思い、ミミのすきなビスケットを作って届けにいきます。

こんなふたりは、友だちになれるのでしょうか……?

得意なこと不得意なことって、それぞれ違いますよね。ミミもドンも、自分の得意なことをいかして、友だちの困っていることを助けてあげようとします。だって、友だちだから。

この絵本は、いもとようこさんの「ともだちってすてき!」シリーズの1冊で、アメリカの子どもの本の作家、ジュディ・デルトンの原作に、いもとさんがほれ込み、「助け合って生きていくってすてきだね」というテーマを描いています。

人はみんな違っていますが、だからこそ「得意なこと、好きなことをいかして助け合っていこう」と、今の時代の子どもたちへメッセージを楽しく伝える、優しい友達関係を描いた絵本です。

「どうしてるかな」「なかなおり、する?」友だち同士で湧き起こる気持ちを、シンプルな言葉と印象的な絵で。『ともだちになろう』

ともだちになろう

作:ミース・ファン・ハウト訳:ほんま ちひろ

みどころ

絵本を開くと、画面いっぱいに色んな表情をしたユーモラスなかいじゅうたちがふたりずつ登場します。
思いっきり笑っていたり、怒っていたり、泣いていたり、取っ組み合いのケンカをしていたり。
なにをしているのかな?・・・そう、彼らは遊んでいるのです。
笑わせていたり、怒らせちゃったり。時には恥ずかしくてお互いモジモジしていたり、知らんぷりしたり。

なんか、こういう子どもたち、よく見るよね。
ふたりでいると、いつも微笑みあってるだけじゃない。
これが「ともだち」なのかな。
じゃあ、ともだちとケンカしちゃった時はどうすればいいのかな。
どうすれば、自分の気持ちを相手に伝えられるのかな。

オランダの絵本作家ミース・ファン・ハウトによる、子どもたちが気持ちを素直に伝えるための“こころ絵本”。
内容はとってもシンプル。気持ちの変化が一言でつづられていくだけ。
だけど、まっくろな背景に色鮮やかで生き生きと踊る様な線で表現されたかいじゅうたちを見ていると、その時々の状況がどんどん頭に浮かんできます。
「このふたりは出会ったばかりかな」「この子がいたずらばかりしているんだろうな」「キライなわけじゃないけど・・・」
そんな風に読み解いていきながら、子どもたちの「ともだちづくり」を応援してくれているのがこの絵本なのかもしれません。ともだちができた時の、子どものドキドキした気持ちにも寄りそってくれます。

それにしても、かいじゅうたちのチャーミングなこと!!大人の私だって、なんだか真似して描いてみたくなっちゃいます。

『こぐまのともだちはどこ?』友だちを探す2匹のくまが出会う微笑ましいおはなし。友だちができるかな、と不安な子におすすめ

こぐまのともだちはどこ?

作・絵:ペトル・ホラチェック訳:椎名 かおる

みどころ

ひとりぼっちのくろくまくん。あまりに寂しいので友だちを探しに行くことにしました。でもどこを探せばいいのかな?
わからないまま進んでいると1匹のちゃくまくんに出会います。どうやらちゃくまくんも友達を探している様子。「そうだ、いっしょにさがそうよ」意気投合したふたりは力を合わせ、友達探しの大冒険に出かけます。

「ともだち、いないなぁ」「まだ見つけたことないもんね」二人は友達を見つけたときのための練習することに。もう友達見つかったんじゃない?と声をかけたくなりますが、交互にかくれんぼしあう二人は真剣そのもの。そのちぐはぐな行動がとてもユーモラスです。

作者はプラハ生まれの作家ペトル・ホラチェック。『あおいろペンギン』(化学同人)や『ちょうちょちょうちょ』(主婦の友社)などの絵本を手がけるほか、グラフィックデザイナーやイラストレーターとしても活躍する作家さんです。コラージュを多用した色鮮やかなイラストには深みがあり、温かなストーリーにぴったりとマッチしています。

「いないとおもったともだちが、ちかくにいた!っていいでしょ」のんびりなふたりらしい、なんとも微笑ましいやりとり。フワッと温かい空気に包まれます。大切な人との出会いと、共に過ごす幸せな時間をぜひ親子で堪能してくださいね。

「チリとチリリ」シリーズの作者どいかやさんが描く『にぎやかもりのツリーハウス』。友だちのよさを認め合う、心温まる絵本

にぎやかもりのツリーハウス

作:新井 悦子絵:どい かや

出版社からの内容紹介

森の動物たちが集まれる家作りを提案したねずみくん。仲間が特技を活かして作っている中、自分が役に立てたのか不安になり…。
幼稚園、保育所で大好評を博した、月刊絵本「キンダーおはなしえほん」2022年度4月号市販化。

人間界に引っ越してきた、シャイなおにたくん。友だち作りのきっかけは、鬼のお父さんが握るおにぎりで……『おにたくんのおにぎり』

おにたくんのおにぎり

作:はしもと えつよ

みどころ

ある日、おにたくん一家が人間の町にやってきました。おにぎり屋さんのお父さんは、おいしくて元気が出るおにぎりをもっとたくさんの人に届けたくて、雲の上からやってきたのです。

「おにの おにぎり にーぎにぎ はっ!
 パワーを こめて にーぎにぎ はっ!」

近所の園に通うことになったおにたくん。緊張してなかなかみんなとお話できません。でも、お父さんが作ってくれたおにぎりのお弁当を見たみんなが、興味津々で集まってきました。そこで、おにたくんはお父さんに、山登りの日にお友達と一緒に食べるおにぎりをたくさん作ってくれるようお願いします。

山登り当日、お父さんは張りきっておにぎりをたくさん作りました。ところが、用意したおにぎりは……。お父さんの勘違いにおにたくんは、がっかり。子どもが喜ぶと思ってがんばった時に限ってなぜかこういうことが起こってしまうので不思議ですよね。

でも、お父さんは落ち込んでなんかいられません!早くおむすびを作らなければ!こうしてお父さんは誰も見たことがないような特別なおにぎりを作って山の頂上へと届けました。それを見た子どもたちは大喜び。

いったいどんなおにぎりだったんでしょう。予想が当たっても当たらなくても、楽しいシーンが待っていますよ。

自然や動物、大人や友だち、みんながわたしの先生。ひとが生きていくのに大切なことが詰まっている『みんながおしえてくれました』

みんながおしえてくれました

作・絵:五味 太郎

出版社からの内容紹介

子どもは、教えてもらうのが上手。
誰から何を習えば一番楽しいかよーく知っているからです。
子どもが身の回りを観察してみたくなる、そんな絵本です。

大好きときどき大嫌い。絶交だ! って言ったあと、雨が上がるみたいにまた仲良くなれるのは親友の証『きみなんかだいきらいさ』

きみなんかだいきらいさ

文:ジャニス・メイ・ユードリー絵:モーリス・センダック訳:こだま ともこ

出版社からの内容紹介

いつも仲良しの友だちと今日は大げんか。
もう口なんかきいてやるもんか、と思ったけれど、やっぱり気になって仕方がない。
劇的な構成で子どもの心理を的確に描いています。ロングセラーです。

あいさつや乗り物の中でのマナー、友だちの家へ遊びに行くときや友だちを呼んだときの礼儀を自然に学べる『あいさつできるよ』

あいさつできるよ

作:リチャード・スキャリー訳:木坂 涼

みどころ

ぞうくんはとってもやさしくて、
みんなぞうくんのことが大好きなのですって。
それは、ぞうくんが、いつでもどこでも、きちんとあいさつができるから。

道でお友だちにばったり会ったとき。
バスを待つとき。
バスの中が混んできたとき。
お友だちの家に遊びに行ったとき。
お友だちが家に来てくれたとき。
家族でごはんを食べるとき。
などなど、子どもたちの生活の中でおなじみの場面ばかりなので、ぞうくんのことがとても身近に感じられるのが、うれしいところ。
「こうしたらダメ」ということはいっさい書かれていなくて、ぞうくんの言葉やふるまいから、「こうしたらいいんだ」と自然に思わせてくれるのも素敵です。

「こんなときはなんて言えばいいかな?」「ぞうくんみたいにできるかな」「こうしてもらうとうれしいね」と、親子で話しながら読むのもいいですね。

礼儀正しくて優しいぞうくんの姿を見ていると、ルールやマナーって、「守らなければならないもの」だから守るものではなく、みんなが気持ちよく毎日を過ごせるためのものなのだなーと、改めて気づかされます。
作者のリチャード・スキャリーさんは、アメリカの児童文学作家。スキャリーさんが描き出すやさしい物語と温かみのある絵は、世代をこえて世界中で愛されています。
この本も1963年に描かれたものなのです。時を経ても色あせることのない素敵な絵本を、ぜひお子さんと一緒に楽しんでみてください。

ひとり立ちして生きていくために奮闘するピスケを応援したくなる。スタジオジブリのアニーメーターが手がける『小さなピスケのはじめての友だち』

小さなピスケのはじめての友だち

著者:二木 真希子

出版社からの内容紹介

名アニメーター・二木真希子が残した唯一のオリジナル絵本「小さなピスケ」シリーズ。
多くのファンからの熱いリクエストを受け、装丁を一新し、新装版として復刊決定!

スタジオジブリが放つ数々の名作群は、私たちの心に残る作品として、子どもから大人まで愛され続けています。
そんな数多あるジブリ作品の中でも、特に記憶に残る思い出のシーンの作画を多く担当された稀代のアニメーター・二木真希子さん。ジブリ映画のクレジットでそのお名前をご覧になった方も多いかも知れません。
以下に二木さんが携わったとされる代表的なジブリ作品の名場面を列記してみます。

◇「風の谷のナウシカ」:砂州で王蟲の仔を止めようとするナウシカ
◇「天空の城ラピュタ」:パズーとシータの屋根の上での出会いと鳩の餌やり/ロボット兵の肩の上を走り回るキツネリスたち
◇「となりのトトロ」:メイが小トトロを追跡/おたまじゃくし発見/トトロのドンドコ踊りと発芽~夜空を覆う大樹の完成
◇「魔女の宅急便」:風になびく草の丘に寝転ぶキキ/雁の群れに遭遇するキキ
◇「おもひでぽろぽろ」:紅花を摘むタエ子
◇「もののけ姫」:巨樹とコダマたち/シシ神の足下で成長しては枯れる草花
◇「崖の上のポニョ」:水魚の上を疾走するポニョ

思わずその場面が脳裏に浮かぶ、素晴らしいシーンの数々を描かれた二木さん。そんな彼女が遺した唯一のオリジナル絵本が、「小さなピスケ」シリーズです。

ひとり立ちをし、
丘の上にある大きな木の根もとでくらしはじめたピスケ。
ある日、家の近くの茂みの下で、巣から落ちたカラスの子が泣いているのを見つけます。
「夜は冷えるわ。わたしの家にいらっしゃい。」
ピスケにできた、はじめての大切なともだち—。
(『小さなピスケのはじめてのともだち』本文より)

2016年に亡くなられた後、一周忌を機に、映像研究家の叶精二さんなどの呼びかけにより、SNSなどを通じて復刊リクエストが高まり、弊社への問合せも日増しに高まっています。
宮崎駿監督や美術監督の男鹿和雄氏からも、自然描写や想像の世界の木々の力強さ・透明感を絶賛されていた二木さん。そんな二木さんが得意とした動植物への描写が満載のこのお話は、主人公・ピスケをめぐるストーリーはもちろん、繊細で温かみのある絵柄が存分に味わえるとして、多くのファンの方からの共感を呼びました。

このたび、二木さんの生前の希望に沿って、漢字や書体などを新たに再編集し、レイアウトもすべて組み直す形をとりました。オリジナルの魅力を活かしながら新装刊を目指す『小さなピスケのはじめての友だち』。その魅力を、この機会にぜひお手にとって直接ご覧ください。

あなたのためなら頑張っちゃう! どんなときでも、そばで応援しているよ。唯一無二の味方がいる安心感を伝える『ぼくたちチーム』

ぼくたちチーム

作:たかやま るみ

みどころ

ぼくたちチーム。もーちゃんの近くにいて、もーちゃんしか知らない。ラッパを持って、たいこを持って、ぷぷぷっぷー、タタタンターン、そーっとそーっと応援するの。

もーちゃんが怖がっていたら、真っ暗な空の上だって、おばけが出そうな暗い廊下だって、なんのその。いつだって、がんばって応援する。本当はちょっとぼくたちも怖いけどね。もーちゃんが眠れないって言ったら、ぼくたちチームは……。

おもちゃ箱から出てきたのは、赤と青のなんだか不思議な姿をした二人、ぼくたちチーム。もーちゃんの見えるところ、見えないところで大活躍。応援に成功すれば得意顔、怖い時はおびえ顔。ちょっとばかり頼りないところも魅力的。こんなチームがそばにいたら、もーちゃんだって安心するよね。巻末にはオリジナルの「おやすみのうた」の楽譜つき。トムズボックス土井章史氏プロデュース作品です。

愛犬“くろ”を追いかけて、少年の世界が広がる『すこしとおくへ』。不安や興奮、心象が現れるような躍動感あふれる作画も見事

すこしとおくへ

作:おおちくにひろ絵:きくち ちき

みどころ

ぼくとくろは、いつも一緒。遊ぶときも、寝るときも。自転車に乗って、少し離れた草原まで行くこともある。でも今日は、くろが急に走りだした。いつもの大きな木をこえて、線路をこえて、道路もこえて。

「わん わん わん」
「まって、まって」

それでも、くろは走りつづける。どこまでいくの? もう帰ろうよ。しばらくすると、あおいにおいがしてきて……。

いつもの道をはずれて、くろが連れていってくれたのは、思わぬ場所。少しこわい思いもしたけれど。母ちゃんにもちょこっと怒られたけど。それはとっても素敵なところ。

少し遠くへ。少年と犬の日常の世界が広がった日のできごとを、躍動感あふれる力強い線と美しい色彩で生き生きと描きだしたこの絵本。繰り広げられるのは、目の前を勢いよく過ぎていく電車や、激しい風にうなる木々、嬉しくてはしゃいだ時間や、まっくろやみを駆け抜けた瞬間など、感情と景色が一体となった印象的な場面の数々。そして、すべてを優しく包み込む母親の体温。

ぼくにとっても、くろにとっても、きっと忘れられない一日になったのでしょうね。

【動画公開中】

文:栗田奈緒子 編集:木村春子